第二十一幕:戦場に響く決断

鮮卑の脅威がすぐそこまで迫り、公孫瓚と劉虞は一時的な同盟を余儀なくされていた。しかし、両者の間には未だ不和がくすぶっており、互いに牽制し合い、積極的な動きが取れないでいた。


「我々が争っている間に、奴らはさらに力を増しているぞ。今は内輪もめをしている場合ではない。」


劉虞は、冷静な口調で言いながらも、その内心には焦りが見え隠れしていた。彼の心の中では、鮮卑の脅威が日に日に増していることへの恐怖が渦巻いていた。


公孫瓚はその言葉に鼻で笑い、「お前はいつもそうだな。見かけは賢そうに見せてるが、裏では俺の手柄を狙ってるんだろ?」と皮肉を込めて言った。


二人の将軍が互いに睨み合い、張り詰めた空気がその場を支配していた。互いに牽制し合う彼らの隙を突き、鮮卑軍が巧妙な戦術を展開しようとしていた。


一方、鮮卑の陣営では、檀石槐こと武田信玄が忍びの集団「黒風影(こくふうえい)」を使い、その動向を密かに探っていた。「黒風影」は、信玄が戦国大名だった頃の知識に基づいて編成した忍者軍団である。彼らは、山中に潜み、敵の動きを探る密偵の技術や、暗殺、撹乱戦術に長けた者たちであった。


「戦国の乱世で培った戦術が、ここでも役立つとはな…」


信玄は心の中で微笑むと、その密偵集団を巧みに操り、漢軍を内部から崩そうと目論んでいた。黒風影のリーダー「疾風(しっぷう)」は、影の如く忍び、敵の陣営に潜入する技術を持っていた。彼は、信玄の命を受け、漢軍の内情を探るために動き出した。


「劉虞と公孫瓚は互いに睨み合い、動きが鈍っています。この状況を利用すれば、背後から攻める機会を得られるでしょう。」


信玄は疾風の言葉を聞き、冷静に頷いた。


「良い報告だ。では、啄木鳥の戦法を仕掛ける時が来たようだな。」


信玄は指示を下した。まずは小規模な先遣隊を送り込み、漢軍を挑発する。これにより彼らの注意を引きつけた後、背後から本隊が襲いかかるという作戦であった。


「疾風、疾風。黒風影の者たちを使い、敵の不和を煽りつつ、時機を見て背後から本隊で攻め込む。まずは先遣隊を送り込み、敵の反応を探れ。そして、背後から本隊を叩き込む機会を作れ。」


信玄は疾風に厳しく命じた。


「承知しました、檀石槐様。」


疾風は低く頭を下げ、音もなくその場から姿を消した。

その後、黒風影は、まるで風のように戦場を駆け、漢軍の目を欺いて内部を混乱させるべく行動を開始した。彼らは、鮮卑軍の精鋭として、信玄が編み出した戦国の技術をこの世界に再現し、その圧倒的な優位性を示していた。


一方、漢軍の陣営では、互いを睨み合っていた劉虞と公孫瓚が、鮮卑軍の動きを前にしてもなお動けずにいた。


その時、劉備が前線に立って声を上げた。


「これ以上待ってはいられん!俺が先に行く。お前らが動かないなら、俺が漢を守る!」


劉備に続き、関羽と張飛もまた前に進み出た。


「正義のために戦わぬ者など、戦士ではない。」


関羽は低く呟きながら、静かに剣を抜いた。


「俺たちが動けば、全てが変わる。鮮卑を叩き潰すのは今しかない!」


張飛は豪快に槍を握りしめ、戦場に向かって進み出た。


三兄弟は、そのまま鮮卑軍へと突撃していった。彼らの決意に触発された漢軍の兵士たちも次々に前進を始め、戦場は一気に動き出した。


一方、信玄は冷静に戦場の様子を見守りながら、黒風影の働きに期待を寄せていた。


「奴らが動き出したか…。だが、まだだ。今は待つ時だ。啄木鳥の罠が完成するまで…」


信玄は静かに呟き、「疾如風徐如林侵掠如火不動如山」と書かれた「風林火山」の旗を高々と掲げた。その旗が風に揺れるたび、戦場に不気味な静寂が広がり、次の瞬間に何が起こるのか誰もが息を呑んで見守っていた。


「疾(はや)きこと風の如(ごと)く、徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し。我々の勝利は目前に迫っている。」


信玄は決して焦ることなく、静かにその時を待ち続けていた。


戦場では、劉備三兄弟が漢軍を率い、砂埃が舞う中、鮮卑軍に果敢に立ち向かっていった。彼らの剣と槍が陽光を反射し、戦場に閃光が走る。彼らの奮闘により、戦局は一進一退の攻防を繰り広げていく。


だが、信玄の罠は、まだその全貌を現していなかった。彼は戦場全体を見渡し、次なる一手を考えていた。

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