第104話 異世界の三種の神器
狂乱の宴―――ではなく。
六ツ星ランクの魔物三体を斃し終えたみんなは、それらの落したアイテムを見ながら首を傾げていた。
「どいつもこいつもドロップ品を落としたぞ」
「他のエリアと違って、ドロップ率が違うのかしら?」
「お肉じゃないの?」
「全部アイテムっすね」
「確率100%……なのか?」
「どうだろうね?」
『これも初回特典ですね』
そうなんだ。頑張ってレヴィアタンを斃したからかな?
でも災害級のレヴィアタンを斃した直後に、落ち着く間もなく三体同時に襲ってくるイベントを発生させるのは、殺意が高すぎると思うのだが。
「シードラゴンからは懐剣、シーサーペントからは鏡、ザラタンのは水晶かしら?」
「懐剣は武器であることは判るが、鏡と水晶玉は、何の効果があるんだ?」
「でもこの剣、鞘から抜けねぇっすよ?」
「ほんとだー。抜けなかったら、使えないよね?」
「伝説の剣みたいな奴だな。抜くことが出来たら勇者ってか?」
みんなで懐剣を抜こうと回し合う。しかし誰も抜くことが出来なくて、ディエゴが最後に俺に手渡してきた。
「リオン、これも鑑定できるか?」
「――――ふむ?」
俺は三つのアイテムを手渡され、それをSiryiと一緒に鑑定することにした。
みんなちょっと待っててね。
奇麗な護身用の懐剣と、銅鏡のような形をした鏡、それと占い師の使う水晶玉か。
なんだか神話の三種の神器みたいなラインナップだね。
日本での三種の神器と言えば、テレビ・冷蔵庫・洗濯機だったような?
最近ではそこに色々加えられて、自動車だのクーラーだのがある。
平成からは、スマホ・ドラム式洗濯機・ロボット掃除機だったっけ。
俺はどれも持っているけど、この世界でスマホは使えそうもないし、使える気がしないから出す気もないけどね。
いや、これは電化製品ではなく、マジックアイテムだった。
『鑑定の結果が出ました。どうやらこれらは、魔動船のオプションですね』
「おぷしょん……?」
と言えば、カーナビとかETCとかスマートキーみたいなものかな?
俺の何気なく思い浮かべた、電化製品三種の神器と似たようなモノだと?
『大体合っています。マスターの世界の車に後付できるオプションと似たような性能がありますね』
「なんでまた……」
『魔動船ではなくとも、人間にも使えるようですが』
そっちを鑑定してよ。魔動船のオプションという説明をされても、必要のない人の方が多い世界だぞ? 今後のことを考えれば、ドロップ品に価値がないと意味がないんだから。
『了解しました。ではまず鏡は、「
「ほほう?」
それは便利だね。でも一回限りなんでしょ?
『その通りです。しかし命は一つしかありませんから、全滅するぐらいならば安い物でしょう』
「たしかに」
ダンジョン限定なら、冒険者以外にはあまり必要のないものかな?
と言えば、ダンジョン外でも使えるそうだ。
危機的状況からの脱出に、一度だけ使用できるモノらしい。危機的状況でなくとも使えるけど、使用回数は一回なので、おいそれとは使えないってことだ。
所謂ワープとか、そういう使い方の出来るアイテムなんだって。
ただし脱出場所を登録できるのは一つだけで、移転する際は人数分鏡に映さなきゃならないらしい。便利だけどなんか面倒。
移転なので、A地点からB地点までしか移動しないってことだ。
『懐剣の方ですが、こちらは「
達人に導くって、ソードマスターみたいになれるってこと?
『剣に限らず、あらゆる形態の武器に変化するようですね。ただし自動制御になりますので、使用後は普段使わない筋組織がかなり傷みます。日頃からある程度体を鍛える必要はありますね』
「…………」
深窓の令嬢や高貴なご婦人向きじゃないじゃん!
そういう人たちってのは、優雅におほほほしてるだけで、身体を鍛えるような生活はしていない。よって使用後は筋肉痛でのたうち回ることになるだろう。
これは護衛騎士とか、身体をそこそこ鍛えている侍従とかが持つべきでは?
んじゃ最後のこの水晶は?
俺は占いに使うサイズのような水晶玉をSiryiに見せた。
『
「いちばんすごいっ!」
だから魔動船のオプションなのか。
他の二つもおそらく、懐剣が『自動運転』、鏡が『ワープ移動』のオプションになって、水晶玉が『格納庫』となるって訳だね。
『その通りです。魔動船のオプションとして付け加えれば、魔動船を失わない限りは機能しますので、一度限りの使用では終わりません。ですが、単体というか、人間が使用する場合は一度限りのアイテムになります。
「なるほどねー」
水晶は取扱注意の壊れ物で、その他は魔動船に使用しなければ、一回限りのアイテムってことか。ふむ。これは……どう説明すべきかな?
魔動船のオプションであることは秘匿するべき?
『その方が宜しいかと。あくまでもシークレットオプションですので、他の鑑定眼鏡ではブラインドになって詳細は見えないかと思われます』
Siryiの鑑定だから判明することであって、他では隠されているってことか。
なんでだろうとは思うけど、人間が使用するにはかなり難しいアイテムであるってことなんだろうね。
全て貴重なアイテムであることには変わりがないけれど。
とりあえずは、苦労して手に入れたアイテムなので、査定によっては一攫千金になる可能性は高い。ドロップ率は相変わらずしょっぱいかもしれないけれど。
『六ツ星ランクの魔物肉でも、十分な価値はあるかと思われます』
「だよね」
『こちらのアイテム類は初回特典ですが、今後はマスターの知識にあるSSRのような確率になるかと思われます』
「ガチャだねー」
どうやらジェリーさんの作ったタリスマンの効果は、五ツ星ランクまでが限界であるらしい。これは人間が作れる限界のランクってことなのかな?
おみくじタリスマンの六ツ星ランクでの効果が皆無と考えれば、何度もアタックしなければこれらドロップ品は手に入らないと考えてよさそうだ。
それでもお肉が手に入ればかなり稼げるってことだよね。
ランクの高い魔物の肉は美味しくて人気なので、海域エリアの魔物は斃すことが出来ればそれらが確実に手に入るんだって。なのでドロップ率は100%である。
でも三種の神器的なアイテムとなるとSSRのような確率なので、滅多に手に入らないだろう。
まぁ、日帰りダンジョンだから、無理だと思えば撤退も可能であるし。再アタックするなら、ダンジョン産のお肉を食べて体を鍛えればいいのだ。
それにレヴィアタンは、もう二度と出現しないのだから―――。
「かんていけっかでたよー」
俺はみんなにこれらのアイテムの効果を説明した。
丁度いい具合にディエゴが魔動船を購入したのもあるし、この水晶があれば維持費もかからなくて良いよ~ってアピールもしといた。
高価な買い物をしたのはいいいけど、魔動船の維持費がかかり過ぎることが大問題だったしね。
これさえあれば壊れても自動修復できるし、格納庫として役立つので俺が一々リュックに仕舞わなくてもいいのだ。やったね!
ところで。
レヴィアタンがドロップしたヒトデ型ダンジョンコアの鑑定結果なのだが。
持っているとダンジョンマスターになれるとか、そういうモノではなかった。
Siryiの鑑定によると。
『新たなダンジョンを創るアイテムです』
マスターではなく、創造者になれるアイテムってことだった。
広義的な意味であれば、マスターみたいなもんだろうが、創り出した者として縛られる訳でもなく、ただ創り出すことができるだけのようだ。
持ってても一番意味のないアイテムだってことだね。
だからこれはなかったことにしよう。面倒臭い気配がするし。
それに三種の神器アイテムの方が余程便利だからね!
因みにこのヒトデ型ダンジョンコアなのだけど、通常ヒトデは腕が五本である。
しかしこのヒトデ型ダンジョンコアは、腕が八本あった。
イトマキヒトデみたいに、腕が四本~九本あるヒトデみたいなもんだね。
だからこれらから考えて。俺とSiryiの予想というか推測では、レヴィアタンのランクが八ツ星だったんだろうということで落ち着いた。
そして、他のダンジョンのコアを手に入れることができたとしたら、きっとそのコアのヒトデの腕は、三本~五本なのかもしれない。
初級と中級、そして高難易度のダンジョンの魔物のランクから推察しただけだが。
現状、この世界の最高ランクの魔物は、アースドラゴン等の七ツ星らしい。
それよりも高いランクのレヴィアタンだが、ダンジョンだからこそ創り出せたようなものだ。確かに自然災害レベルの魔法を駆使する魔物が、現実世界にも存在すると考えると恐ろしいどころの話じゃないし。
もしかしたら、アントネスト以外にも八ツ星相当の魔物が潜んでいるダンジョンがあるのかもしれないけれど。
七つの大罪の悪魔のレヴィアタンが、ただの偶然で創られたとは考えにくいし。
この世界には宗教的な神や悪魔はいないとしても、創り出した側にはその知識があるってことだからね。
これがただの妖精の悪戯であるとは―――いや、考えるだけ無駄か。
なんにしてもレヴィアタンは居なくなった。それでいいじゃないか。
他のダンジョンの初回特典で、ダンジョンコアって手に入っているのだろうか? という謎は残っているけれど、そんなこたぁどうでもいいのだ。
どうせSiryi以外じゃ鑑定不可能なのだから―――て、言ってたよ。
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