43 シャユランとフェイランとハミャン
旗艦アルセウスの案内、のはずだったけどいつの間にかフェイランとハミャンが瞬間体験を繰り返す時間に変わってしまいました。
私は新しい衣装の設計図を脳内で作って暇をつぶせるからいいけど、フェイランは男の娘データの虜になりハミャンはウルフェン様の虜のようです。
私としては執事服のウルフェンもいいですけど、和服の気だるいウルフェンもいいですし、軍服をきっちりと身に付けるウルフェンもよきです。
男の娘、タジリンならメイド服から着崩し和服、チャイナ服からあえて手ブラ短パンも悪くないですね。ハクラならきっと犬耳と首輪と犬尻尾でもろだしがベストっていうかもしれないですけど。
「はぁはぁ、これお姉ちゃんの主観かも――」
「……うそ、嘘、ウソ!ダメダメダメ!見ちゃダメ!」
「もう見た後だよ、でもまさかあんな恥ずかしい格好でしたなんて――」
「っく!別に巫女服と神主服なんて普通です、普通!」
稀に紛れている私たち妻とタジン様の初体験やもろもろ、アルセウスさんも何度か完全な除去へ尽力してくれたけど、結局こういう風にどこかしらに紛れている。
「数年後あなただって経験することですよフェイラン」
「た、たしかに、まだ私本当にはしてないんだった」
フェイランの言いたいことは分かる、なぜならあのデータでの瞬間体験は本当に自身が体験していると錯覚するほどだから。
「シャ、シャユランさん、これヤバイです、これウルフェン様に前も後ろも滅茶苦茶にされて――」
「ハミャン!それクルーが見ちゃダメなやつです!AIしか見ちゃいけないのもあるって言ってたでしょ?!」
AIの体験するデータはハードだとあのヒヒラですら顔を真っ赤にして見るのを止めたくらい、まだ幼いハミャンが見るなんてだめです。
「でも、もう一回見ちゃう――」
「こら!も~ダメ~!」
落ち着きがないまだまだ子ども、なのにAIたちの精神性と張り合うのはテセウスさんが無謀だと言ってたのに。
「二人とも~壊れちゃうよ~」
この後すぐシリウスさんがやってきて
『シャユラン、あまり子どもにAI用のフラッシュを見せないようにできませんか?幼い精神性に異常が出る可能性もありますから』
「違うんです~あの子たちが勝手に見てただけで~」
『……なるほど、ならこちらが
「あ……あまり痛いのは――」
『大丈夫です、この鞭は傷が付かない仕様です、痛みもやがて快楽に変わる』
シリウスさんはAIの中でもかなり危ない人だとタジン様もみんなも言っていたけど、いろんな意味で危ない人だと再確認してしまった。
そうして私とフェイランとハミャンは次に私たちがこの艦の中で過ごす居住区へと移動した。
「本当にリンさんみたいに死んだ人がこっちに何人もいるんですね、かなり若返ってる人が多いですけど」
「そうよハミャン、この艦に乗ると決めたらナノマシンを体に投入して不老になれるし、顔を変えたり胸の大きさとか身長とかも変化させることができるのよ」
「お姉ちゃん、あの人この前死んだリリルアさんですよね?」
フェイランの指さす人は盾の家紋の家長バタラタさんの奥さんだった人だ。つい最近病で亡くなったそして今はこの艦のクルーだ。
「そうよ、村にいた最後の一週間くらいはマテリアルボディーで、そのマテリアルボディーが死んだらこちらでの生活を始めていたの、今はこの艦からミミックの擬態旗艦アルセウスへの引っ越し中よ」
「そっか、妻以外はついてこないんだっけ?」
「ま~リリルアさんたちも艦長であるタジン様の妻に等しいけど、今のところタジン様が直接本体でしているのは私たち妻だけだし」
「不老だから別に急がなくてもってことだね……だからあんなフラッシュ?が流行ってたんだね」
「流行ってるんじゃなくてあれはAIたちが流行らせているの、最初の頃は普通に私やハクラやタジン様のコスプレ姿の瞬間体験の方が主流だったのに、いつの間にか性思考へAIたちが突出していったのよ」
AIたちは言えば無尽蔵の性知識欲があるらしい、体験が人と同じはずでも自分たちは人ではないと根幹でそう感じているからこそだとアルセウスさんは言っていたけど、それこそ人にしか感じられない感覚だと思うけど。
「そうだ、二人ともこれからコスプレしてみない?」
「コスプレしてエッチなことするんですか?」
「ちょっと、コスプレ=エッチってのは止めてよ!コスプレって色んな自分を体験できる素晴らしい行為なの!カッコイイ自分にもカワイイ自分にもなれる!それを誰かにも見てもらって共感してもらえたらうれしいの!」
「お姉ちゃん私やってみたい!剣士風とか格闘家とかカッコいいのがいい!」
「じゃあ私自慢の衣装部屋へ行こうよ!いっぱい色んな衣装があるんだから!」
そうして三人でコスプレを楽しんだ私はとても満足して忘れていたんです。タジン様の本体が今どこにいて誰がそばにいるのかを。
私が自室へ戻ると隣のハクラの部屋が誰かが入っていると外から分かる。この艦の個室は誰かしらクル―がいる部屋は緑のランプが点灯する、だからいないはずのハクラの部屋に誰かが……。
「そうでした、タジン様本人です」
昨日ハクラの部屋で過ごしていたはず、ちょっと様子を見ようかなと思い部屋の扉を開いた。
タジン様の本体は妻の部屋から旗艦アルセウスのコアを通してマテリアルボディーへ繋がっている。だからこうしてハクラの部屋で寝ている事も稀にある。
「タジン様……ふふ、寝顔も可愛いですね、それにしても寝間着が可愛くない」
彼が着ているのは艦内できるクルーの服だ、でも私的にはできれば少年が着ている寝間着か子ども用の浴衣なんかカワイイ気がする。あ!でもでも小学生の制服とかもいいかも。
「……ちょっと部屋から着替えを持ってこよっと」
隣の部屋から急いで戻った私はクルーの服を脱がせてすぐに小学生の制服を着せてみた。
「うん、いい」
少年さの解放感のある半ズボンに足首まであるソックスの絶妙なライン。上着とワイシャツの白と紺のコントラストがとても少年感を膨らませている。
「蝶ネクタイ?タイ無し?タイ有り?う~んあえてリボンとか?」
またハクラの思想が私の好みを汚染している。こうなればもうどんどん男の娘へ一直線に進んでしまう。
「……坊主にすれば少年感が増すのにな~」
おでこをそっと覗かせると私のフェチが発動する。
「あらま~綺麗なおでこね」
キス、とりあえずちゅっちゅする。
「こんなに可愛いのに坊主なんてもったいない」
だめだ~男の娘も捨てがたい。
「シャユランさん――」
「は?!リリリカ!」
とんでもないところを見られてしまった。
「シャユランさんがタジン様の寝こみを――襲っています!」
駆け出したリリリカを私は追いかけた。でも彼女の足は速くて追いつけないままとうとう彼女はメアルのところへとたどり着いた。
「メアルさん!シャユランさんがタジン様を襲っていました!」
「……そうなんだ~私も今度混ぜてね」
「え?」
「混ぜてね?」
「……え?」
告げ口したのがメアルでよかった。もしもリンとかだったらもう正座でお説教間違いなしだったから。
ホッとした私はリリリカを捕まえて自分の部屋でコスプレを思う存分楽しんだ。キリッとしている彼女の表情にはやはり魔法少女でも戦う女の子でも青い衣装が良く映えた。
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