38 命令
アドミニストレータによる第7艦隊への指令が出た。
命令という言葉を使ってアドミニストレータが俺たち艦隊へ指令を出すことは異例で、それを受け取ったアルセウスもクルーたちにどれだけ凄いのかを女の子と男の娘の違いで説明したが俺には理解できない次元の話だった。
今日は久しぶりにウルフェンのオリジナルマテリアルボディーに入っている俺は地上を浮遊探索中だ。探索中といってもただただ空を自由に飛びたいなと思っただけで、この惑星でなら空を飛んでいても普通は鳥だと思ってもらえる、はず。
ただ、こんな速度で空を飛ぶ鳥などいるはずがないので少し考えればあれは鳥だったのか何なのかと夜寝る前に悩む人もいるかもしれないと思うと少しだけ面白いかも。
張り切って最速でも目指してみようと考えていると、メルテアン聖法国方面の上空で姫騎士が複数の聖法騎士に囲まれている状況に出会う。
姫騎士に関してのデータはアルセウスによって既に詳細なデータがあるけど、正直俺としてはデータとしてではなく頼りがいのあるお姉さんとして出会いたいと思っていた。でもどうやらこのままでは出会う前に死んでしまうかもしれない。
「姫騎士!貴様の命運もここまでだな!」
「っく!負けない!負けられない!私が!負けるわけにはいかない!」
俺は彼らの会話なんて興味もないけど、とりあえず間に入ることにはした。
フワリと降りることもできたけど、まずは派手さが大事だろうと地面を
ズゥゥウウン!という轟音とともに土が舞い上がって姫騎士と対面していた騎士たちへ大量の土が飛び散る。
「ぐわ!」
「な!なんだ!これは!」
これこそ言うなら派手な登場だろう、やつらも多少怯えるのではないだろうか。
「貴様!どこの誰だ!」
ん?あまり驚いていないようだな。反応が
「名を名乗れ!」
「……いや、やめておくよ、キミらあんまり面白味もないし」
「何を!」
三人いや奥からもきているな、なら合わせで七人か。
「刻め――」
俺ぐらいになると体の印を発動させて何も持たない状態で剣を作り出すことができる。これは聖法気の応用も兼ねたものだから誰でもというわけではない。
「こ、こいつ騎士か!」
「見たこともない
姫騎士は静観中、足と腕をケガしているようだから仕方がない。
「逃げるなら追わないけど、まっ逃げないよな!」
俺の神の導でできた剣を普通の剣で受け止めようとする騎士たち、それは悪手でしかないし、いくら剣に
「な、剣ごと――」
「受け止めるな!避けろ!」
いや無駄だ、なにせそれは俺の剣速より速く動くことを意味している。それだけは無理な話でしかない。
俺の体捌きは剣豪のそれだ。
「ぐあ!」
「こ、こいつやるぞ!」
まったく困った奴らだ。
「やる?そんな認識だからきみらは自らの命すら守ることができない」
二閃、三閃、もう二閃。
俺は剣を右手から消し去ると転がる死体へ視線を向ける。
特に何の感傷もないがこれをこのままにしても平気だろうか。
『問題ないと思われます、遺体は数か月で白骨化して数十年を経て地に帰るでしょう、鎧や剣はそのうち誰かに拾われるかすると思われます』
さすがサポート担当インテスだな。
視線を感じて振り向くと俺の好みである凛々しい姫騎士が熱い視線で俺を見つめていた。
どうやら好印象を得られたようだな、凛々しい姫騎士に年上お姉さんのその優しい腕で癒されたい。
「あなたは神か!」
「……はい?」
神とは?そうだった今俺はウルフェンの姿だ、年下の弟どころか神という位置づけなんて。
「空から舞い降りし神よわが身を捧げます!だから我が祖国を助けてください!神よ!」
あぁこうなってはもう無理だ、せっかくの姫騎士なのにただのウルフェン信者になってしまった。
「……姫騎士よ」
「はい!神よ!」
「我の名前はウルフェン――我が命に従え」
「はい!ウルフェン様!何なりと!」
「人生諦めも肝心だ、国の再建は諦めろ」
「……え?」
まぁきみの陣営は腐敗騎士たちだから再建なんてされたら国民も周囲の国も困るだろう。そして先ほどきみを襲っていたのも腐敗騎士たちの仲間だし、きみは本当ならメルテアン聖法国に囚われて処刑される時にクルーにするはずだったんだけどもういいよね。
『インテス、彼女を転送しておいてあとはアルテミアに任せられるかな』
『もちろんですボス、いや、艦長』
急にどうしたのインテス、でもボスでもいいんだよ、なんかマフィアのマルガなんとかの影響かな。
我が艦内は現在マフィアブームが旋風を巻き起こし葉巻や薬が流行りに流行っている。AI同士で薬と称して何かをやり取りしているところを目にしたことがあるけど、マテリアルボディーの嗜好品だと言われたらそれ以上俺は問い詰めることもない。
俺の前から消え去った姫騎士は数日後には考えを改めてて今度は艦長として俺と再会するだろう。
その時は命令して弟くんとでも呼んでもらおうじゃないか。
跳びあがった俺は再び飛行して移動し始める。ただ俺は知らなかった、いや知るはずもないけどマルガゲートの基地襲撃で保護したケモ耳尻尾娘とアルセウスたちが艦内で睨み合っていることを。
――――――
「まったく、こんな数のスパイを作って何をしたかったのかしらあなたは」
マテリアルボディーを操作するアルセウスは足を組んで右足をプラプラとさせる。黒タイツと短いスカートのスリットが動かすたびに開くのが彼女としては艦長へのアプローチである。
クルーの新しい制服を着てみている彼女は自身のワイシャツの胸元へ視線を下ろすと言う。
「もう一つボタンを開けるべきかしら」
「もういい加減にしてくれませんか?私たちのどこがスパイなんですか?!」
目の前のトラ柄尻尾にトラ耳娘は保護した一人であり、事前に手にしていたマルガゲートの構成員のDNAと一致した者の一人だ。
「まったく、私たちの文明レベルを勘違いしてるんじゃないのかしら、あなたたちがいくら被害者を装うとこちらは見抜いてしまうのよ?」
「私は被害者よ!だからあなたたちも治療したんでしょ!」
透明の箱の中の彼女は叫ぶがアルセウスには適度な音量にしか聞こえていない。
「分かりませんか、あなたは今から記憶の大半を削除してこの艦のペットとして飼われるんですよ」
「そ、そんな!話が違うわ!私は治療を受けた後この船のクルーとして過ごせるって!永遠の命と美貌を得て!楽しく過ごせるって聞いたから!」
「あ~あ、あなたは彼女に騙されてしまったのね」
「……騙された?」
アルセウスはある人物の画像をボックスの内側へ表示させると言う。
「彼女、テスタロッサ・ハート、この動物の因子を人へ植え付ける医学的権威、彼女もあなたと同じようにこの艦に乗っているのよね」
「じゃあ私たちは彼女の隠れ
「それはまだ分からないけど、今彼女はテセウスが丁寧に尋問しているから今頃従順な女の子になっているはずよ」
「……私たちは記憶を消してペットとしてどう生きるの?」
「う~ん艦長に気に入られればナノマシンを使ってこの艦でずっと過ごすんじゃないかしら、そうじゃなければ宇宙統合機構がサンプルとして解剖するわ、痛みなく私たちに有益に利用される」
「き、記憶を消した時艦長さんに甘えるように言いつけてもらえたりは――」
「それはテセウス次第かしらね、あの子はあなたに慈悲を与えるとは思わないけど」
「そ、そんな……」
そう言ってトラのケモ耳尻尾を持つ女は白いボックスの中で力なく伏した。
アルセウスが女を尋問している間にすでに捕らえていたテスタロッサに対して尋問を始めていたテセウスはその耳と尻尾を撫でまわしていた。
テセウスの前でベットにベルトで拘束されるテスタロッサの容姿は髪の毛もケモ耳尻尾も黒で、豹の因子が入っていることが見た目だけで分かる。
「私はあなたを尊敬してますよテスタロッサ・ハート」
「……どうして~私が~テスタロッサハートだと分かったのか~聞いてもいいかしら~?」
全裸の彼女の胸に触れたテセウスは言う。
「ナノマシンには認識番号のようなものがあるのをご存じですか?ま、知ってたらこんなミスはしないでしょうね」
「認識番号~?知らないわね~」
「我が艦隊には我が艦隊の認識番号、他の艦隊にはそれぞれの認識番号があるのですよ、そしてあなたの体内にある認識番号は存在しない番号です、たとえあなたの生体認識がクロエ・ダラミンだと言えど、存在しない認識番号のナノマシンを体内に有する時点で誰なのかは察しがつきます。それもこんな可愛らしい格好をしていたらなおさらね」
ケモ耳に触れるテセウスはそのまま彼女の首元を触る。
「動物の因子を人間の体へ組み込むことは宇宙統合機構基準法では禁止されているので私としてはあなたのようなその道のプロを手中に収めることができて大変好ましく思います」
「ふふ、そんなに褒められるのは照れちゃうわね~」
「だからあなたの体もこれからあなたの技術でとても気持ちよくなれる体に変えようと思います」
「私の技術で~って尻尾を性器と同じ感度に変えるってことかしら~」
「いいえ、調教が済んだポ・ル・チと同等の感度が味わえる器官に変えるつもりですよ」
「でも私~処女だから~ポルチとか全然なんだけど~」
「そのようですね、お尻の方をお使いのようでしたね、しっかりと開発されてイクこともできる状況と診断しました」
余裕の表情のテスタロッサだが、テセウスが一つのチップを手に持ち彼女の首へと押し当てると表情が一変する。
「な!う、嘘!絶対嘘!ありえない!あるわけない!そんな!」
ほんの一瞬首に当てられただけだった、それだけで彼女がこうも態度が豹変した理由をテセウスは説明する。
「このチップには既に調教が完了した体のデータが入っていまして、これのデータをナノマシンが読み取って情報を体験したのです」
「あれが、あの感覚が調教された人の感覚なの!?あんなの壊れてしまうでしょ!だってずっとだったわ!触れられただけで!ずっと!」
「そう、12時間の体験でしたが、その間ずっと最上級の絶頂をし続ける、それがポルチの開発された人の世界ですよ」
ニコリと笑ったテセウスにテスタロッサは拘束されている体を必死に動かして抵抗する。
「ムリムリムリムリ!尻尾であれを感じるなんて!自分で歩くこともできなくなる!」
「そうならないための感覚抑制がナノマシンについているのですよ、あなたはこれから私の命令に逆らうとその抑制を解除して調教します、もちろんあなたが悪いことをしていなくても私の気分次第で解除はするんですが――」
「く、狂ってる――」
「大丈夫、怖いのは最初だけなのですよ~、あなたはテスタロッサ・ハートのまま狂うことないまま艦長と私のペットに堕ちてもらいますよ~」
そう言いながらテセウスは細長い棒状の物体を手に持つ。それの先が振動したり複数の短い毛が生えたり、ゆっくりと回転しながら次第にそれが加速する様子を見て笑みを浮かべる。
「怖いのは~最初だけそれは艦長も体験していますから。覚えてはいないですけど――」
「ふっふっふっひぐっ」
そうしてテスタロッサハートはテセウスのおもちゃになった。
数日に及ぶ調教と身体の改造を終えたテスタロッサはテセウス様と2人きりの時は呼び、それ以外の時はにゃ~と甘える声で鳴けるペットになった。
そしてそんなテスタロッサが艦長タジンの部屋で尻尾を撫でられて、後にテセウスに抑制を解除されイキ狂いしてしまうのはしばらく後の話。
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