第22話 失敗に次ぐ失敗
Side:コラプ
ウルフ系モンスターの大群は、ラージアントに引き続き今回も毒が使われたようだ。
土壌汚染が気にならないのか。
だが、現場の草木は枯れてない。
ウルフ系モンスターだけに効く毒が使われたのかも知れない。
犬とかは人間の食べ物で毒の物がいくつかある。
恐らくそういう物を使われたのだろう。
討論会は惨敗だった。
邪神様が浄化の神だって。
くそっ、邪神様を貶めやがって。
邪神様は死と破壊の神に決まっている。
なぜにネジル教徒に邪気が宿るのだ。
「未来予知を」
予言スキル持ちに俺は尋ねた。
「【予言】。まだ指を消費する時期ではありません。モンスターに武器を与え。毒浄化装備を与えるのが良いでしょう。成功確率はやはり10%です」
「オークとゴブリンだな。奴らに武器を与えるのは問題ないが、毒浄化装備をどうやって使わせるか?」
「毒浄化装備はアクセサリー型が良いと思われます。ゴブリンとオークが好みそうなデザインを描いてみましょう」
「頼むぞ」
武器に毒浄化装備があればきっと負けないはずだ。
邪神信者に武器を集めさせた。
毒浄化装備のアクセサリーの魔道具も信者に作らせる。
ゴブリンの首飾りは骨製で、オークのアクセサリーは牙を加工した物だ。
二つの材料と魔石はウルフ系モンスターが討伐されたので、最安値と言って良い。
ブタキムを儲けさせるような気がして、癪に障るが仕方ない。
それをゴブリンの巣穴とオークの集落の近くにばら撒いた。
喜んで身に着けるゴブリンとオーク。
それと大量の食べ物も何度か置いた。
やつら食い物があれば際限なく増えるからな。
しばらく経って、十分な数になった。
もう、武器と毒浄化装備の魔道具を作る金がない。
あとは、街まで行軍させるだけだ。
これは誘引剤で良いだろう。
ゴブリンのボスはゴブリンキング、Sランクモンスター。
オークのボスはオークエンペラー、SSSランクモンスターだ。
ボスを倒すのも容易ではないはずだ。
さて、次の計画のためにも金を集めないといけない。
今回の計画でほとんど金はない。
効果のないお札を作ってみた。
邪神教信者に売らせよう。
本当は盗賊行為で儲けたいが、ウルフ系モンスター討伐の好景気で、冒険者は装備が良くなった。
とうぜん商人の護衛の質も上がった。
今まで通りの襲撃では返り討ちになる恐れがある。
しばらくは偽のお札で我慢しておこう。
Side:リード
討論会で失敗してしまった。
コプラさんは何も言わない。
怒った表情もないし、落胆したという素振りもない。
「討論会、すみませんでした」
「いや。正義を成すのは難しい。悪はしぶといのだ。汚れみたいにね。だがブタキムの知力は侮れない」
「そうですか。言い訳と嘘が上手いだけだと思います」
「いや、能力を高目に予想してことに当たる方が良い。相手の能力が低かったら問題ない」
「いえ、馬鹿は突拍子もないことをするから、綿密に作戦を練って返って失敗するかも知れません」
「そうかな。敵ながら彼の行動は理性的だ。馬鹿とはとても思えない」
「そうですかね。コプラさんが言うならそうなのでしょう」
仲間と、ネジル神殿の前で声を上げる。
「セックス教団は消え失せろ!」
「風紀を乱す奴らを許すな!」
「奴らを追い出せ!」
声を上げるが立ち止まって聞く人もいない。
何が駄目なんだ。
ブタキムが作ったインチキエロ宗教なんかすぐに潰れそうなんだが。
なぜに潰れない。
ははは、こうなったら、正義を成すのだ。
僕はひとりネジル教徒を待ち構えた。
来た。
すれ違い様に斬りつける。
手ごたえあり。
「何をするんです! 【供与1%】、肉」
傷口が塞がる。
そして、大声を聞きつけて人が集まってきた。
くそっ、失敗か。
こんな簡単なこともできないなんて、僕はなんて無力なんだ。
全速力で逃げた。
考えたら、ゴミをひとつ拾って片付けたと言っても、ゴミは大量にある。
全部とは言わないが大量に処分できなければ意味はない。
指名手配されたら色んな活動もできない。
短慮だった。
コプラさんにそのことを言うと。
「リード君、武力で解決するなら、もっと大規模にことを成さないと」
「何か考えがあるんですか」
「うむ、ネジル教の料理を作っている場所に人員を送り込んだ。彼が毒殺してくれるに違いない」
なるほど、スマートだ。
これなら一般の人には迷惑を掛けない。
頼みの信者が皆殺しになったら、ブタキムはきっと悔しがるに違いない。
その時が楽しみだ。
だが、コプラさんから報告を聞いてその言葉を疑った。
「潜入させた者は全員がネジル教に洗脳された」
「ジャスティスの工作員が何で?」
「黒気と呼んでいる物を授けられると、洗脳されてしまうらしい」
「まるで疫病ですね」
供与スキルで何かインチキの力を供与しているのだろう。
供与するときに洗脳するのかな。
手ごわい相手だ。
ブタキムを舐めていたわけじゃないが、意外とやる。
強奪スキルさえなければと思ったが、そうではないようだ。
おのれブタキム。
いつか首を取ってやる。
ストレス解消に悪人を殺して、豚肉料理を食べる。
すこしすっきりした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます