第28話:閑話・アボガドマヨネーズ・料理番視点

「克也様、今度の豆乳マヨネーズはお口に合いました?」


「うん、美味しかったよ」


「卵を使った好みのマヨネーズと比べてどうでしょうか?」


「それは……卵を使ったマヨネーズの方が美味しかったと思う」


「そうですか、同じ味にできなくて申し訳ありません」


「いいよ、いいよ、君たちが悪い訳じゃないよ。

 僕が卵を食べられなくなったのが悪いんだよ。

 それに、真剣に思い出そうとすると胸が痛くなって吐き気がするんだ。

 だから元のマヨネーズの味が分からなくなっているんだ」


「そうなのですか、早く同じ味が出せなかったからですね、申し訳ありません」


「だから僕が悪いんだって、君たちが悪いんじゃないよ、気にしないでよ」


 克也様はそう言ってくださいますが、気にします。

 元の世界、日本にいる神使に聞いて、克也様が好きだったマヨネーズの材料と配合を聞いたのですが、企業秘密で正確には分かりませんでした。


 神使の力を使えば知ることができるのですが、そこまではやってくれません。

 強く頼めばやってくれるでしょうが、そこまでやっても意味ないのです。

 だって、知っても卵が使えないのですから。


大豆油    :90ミリリットル

菜種油    :90ミリリットル

卵      :40g

リンゴ酢   :20ミリリットル

穀物酢    :10ミリリットル

からし粉小さじ:1/4

塩      :5g


 だいたいの材料と配合が分かったので、卵を豆乳に代えて作りました。

 少しずつ材料の配合を変えて作ってみました。

 でも、克也様に満足してはいただけませんでした。


「なあ、やっぱり、豆乳では同じ味は作れないんじゃないか?」


「そうかもしれない」


 料理番の猿系神使が集まって、どうすれば良いのか相談しました。


「日本にいる元同僚に聞いてみたんだが、アボガドを使うマヨネーズがある。

 それを作ってみてみないか?」


「そうだな、アボガドは森のバターとも言うんだったな。

 そう言われるだけの濃厚な油なら、卵に代わる旨味があるかもしれない」


アボカド   :1個

はちみつ   :小さじ1~3杯

米酢     :大さじ1/2

レモン汁   :小さじ1

塩      :小さじ1/2


 料理番総出でアボガドマヨネーズを試作しました。

 日本の神使に教えてもらった基本から、色々アレンジして作りました。

 熊野十二権現様と岩長姫命にも試食してもらいました。


 克也様に食べていただく料理は、全て毒見されています。

 私たち神使同士で毒見するのは当然ですが、更に神様から2柱が毒見されます。

 最後の最後に、常に克也様の側に居られる岩長姫命が毒見されます。


「うん、美味しい、もの凄く美味しいよ。

 これまで食べた豆乳マヨネーズよりもずっと美味しい」


「それは良かったです、大好きだった卵のマヨネーズと比べてどうでしょうか?」


「う~ん、もう卵マヨネーズの味が分からなくなったよ。

 比べられないけど、このマヨネーズは美味しいよ。

 アボガドを使ってくれたんだって、色々考えてくれてありがとう」


 克也様は気を使ってくださっていますが、美味しくないのです。

 少なくとも卵を使ったマヨネーズよりは美味しくないのです。

 だって、試食以外では野菜サラダを食べてくれません。


「克也様、今日もチーズ入りのシチューを食べられるのですか?」


「うん、表面のチーズを焼いたシチューなら野菜が美味しく食べられるよ。

 野菜は嫌いだったけど、シチューで煮た野菜は大好き。

 カレーの野菜も食べられたけれど、美味しいとは思えなかった。

 だけどホワイトシチューの野菜は美味しいと思ったよ。

 特にチーズをかけて焼いたシチューは美味しかったよ」


 言い訳をするなら、克也様がサラダを食べないようになったのは、岩長姫命が無理にサラダを食べさせなったのは、サラダ以外の野菜料理を好きになられたからです。


 これまでは食べてもらうのに苦労していた野菜だが、ホワイトシチューでならよろこんで食べてくださるようになった。


 毎日3食よろこんで食べてくださるようになった。

 だからその分、これまで以上に野菜サラダを食べてくださらなくなった。

 そう言い訳する事はできるが、料理番としては、言い訳したくない。


 チーズ入りホワイトシチューよりも美味しく野菜を食べていただきたい。

 この世界の野菜は、生で食べるのは危険だから、1度茹でた温野菜サラダだが、サラダを美味しく食べてくださるドレッシングを作りたい。


 何度も試作して、料理番で試食して、美味しいアボガドマヨネーズを考えました。

 克也様が美味しく温野菜を食べてくださるアボガドマヨネーズを考えました。


「よくがんばっているお前たちに教えておく。

 ドレッシング、アボガドマヨネーズだけが美味しくてもダメだぞ。

 嫌いな野菜だと、どんな美味しいマヨネーズでも美味しく食べられないぞ。

 克也の好きな野菜を選んで温野菜にしないと、絶対に気に入ってもらえないぞ」


 私たちの努力を見てくださっていたスサノオノミコトが助言してくださいました。

 克也様の好きな野菜を教えてくださいました。


 生野菜の時は克也様の好きな野菜でしたが、温野菜にすると美味しくなくなるモノを教えてくださったので、使う野菜を変えました。


「温野菜のサラダ」

グリーンアスパラガス:適量

ブロッコリー    :適量

トマト       :適量

コーン       :適量

パプリカ      :適量

ジャガイモ     :適量

ズッキーニ     :適量


アボカド   :1個

くちなし蜂蜜 :小さじ2杯

ワインビネガー:小さじ1杯

リンゴ酢   :小さじ1杯

すだち酢   :小さじ1杯

塩      :小さじ1/2


「克也様、温野菜のアボガドマヨネーズが完成しました。

 申し訳ありませんが、試食していただけますか?」


「ありがとう、いただきます」

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