第19話:晴耕雨読・佐藤克也視点
「克也様、少し休まれませんか?」
イワナガヒメが声をかけてくれる。
「あれ、もうそんな時間なの?」
「はい、集中されるのはすばらしい事ですが、少しは休まれませんと、熱中症になってしまわれます」
「13人ものお供と僕が身体強化の魔術を重ね掛けしているのに、それでも熱中症になってしまうの?」
「普通はなりませんが、その身体強化した身体を5時間も全力で使われたら、さすがい負担が多過ぎます、せめて水を飲みながらにしてください」
「そっか、そうだね、あまりにもおもしろくて、つい時間を忘れちゃった。
木を剣で斬り倒すのも、切り株を地面から引き抜くのもとてもおもしろかった。
でも、お供のみんなを心配させてはいけないね、休むよ」
「そうしてくださいませ、スポーツドリンクを用意しております、飲んでください」
「ここは異世界だよね、スポーツドリンクなんてどうやって用意したの?」
「異世界ですが、材料さえあればスポーツドリンクくらい作れますよ」
「どうやって作ったの、僕も覚えたい」
「分かりました、作り方を教えしましょう。
最初に魔術できれいな水を出すか、井戸や小川のきれいな水を熱して消毒します」
「そっか、この世界には魔術があるから、自分できれいな水をだせるのか!」
「魔術の種類とレベルによっては、飲めない汚い水の場合があります。
克也様も必要におうじて使う魔術を変えてください」
「うん、分かった、また後で教えて」
「はい、後で教えさせていただきます、まずはスポーツドリンクの作り方です。
水を用意したら砂糖と塩も用意します。
水1リットルに砂糖40グラムと塩3グラムを加えます。
ミネラルも一緒に取り入れるのでしたら、海水塩や黒砂糖を使われるか、果物の果汁を加えられると良いですよ」
「分かった、覚えておくよ。
イワナガヒメが作ってくれたのには、レモンが入っているの?」
「はい、克也様がレモンをお好きなので入れてみました。
多過ぎてすっぱくないですか?」
「美味しいよ、すっぱくなくて美味しいよ」
「スポーツドリンクを飲まれたら1度城に帰られますか?」
「え、帰るの、もっと荒地を開拓したいよ!」
「では回復魔術を受けてください」
「うん、分かった」
「身体強化魔術も14回重ね掛けしていただきます」
「お供全員と僕まで身体強化魔術をかけるの、そんなに必要なの?」
「はい、必要です、いつ何があるわ分かりませんので、油断大敵です」
「お供がみんなそろっているから、だいじょうぶだと思うんだけど?」
「克也様は魔獣を殺さずに改心させたいのですよね?
そのためには圧倒的な力の差を見せつける方が良いのです。
魔獣はあまり頭がよくないので、間違って勝てると思う事があります。
そうすると、痛い思いをさせる事になります。
克也様、魔獣に痛い思いをさせたくはないでしょう?」
「うん、させたくない、魔獣に痛い思いはさせたくない。
ありがとう、良く分かったよ、イワナガヒメのお陰で良く分かったよ。
魔獣に痛い思いをさせないように、できるだけ自分を強く見せるよ」
「はい、私たちもできる限りお手伝いさせていただきます」
お供たちのお陰で大好きな事に熱中できた。
僕がしなければいけなかった魔獣退治は、お供のお供がしてくれる。
イワナガヒメたち13人のお供は、ずっと僕の側にいてくれる。
以前はお城の残ってくれていたワクムスビも、今ではずっと側にいてくれる。
その代わり、ワクムスビのお供が城に残ってくれている。
ワクムスビのお供だけでなく、イワナガヒメ、アマテラス、イザナミノミコト、イザナギ、ミヅハノメなどのお供も城に残ってくれている。
城に残るだけでなく、みんなで魔獣を改心させてくれている。
僕のお願いを聞いて、できるだけ殺さないようにしてくれている。
ただ、どうしても改心してくれない魔獣もいて……
「克也様、急いで大きくしますか?」
「急いで大きくした方が良いの? お城の人たちの食べる物がないの?」
「そんな心配はいりません、だいじょうぶでございます。
先日克也様が収穫された小麦と大麦がありますので、この国も民が収穫するまで十分持ちます、安心されてください」
「だったら無理に大きくしなくて良いよ。
急いで大きくしたら、お供のみんなが疲れるのでしょう?
たくさんの魔力を使うから、疲れてしまうんでしょう?
お腹が空いて辛いのでなければ、みんなが疲れないようにして」
「心配していただき、ありがとうございます。
ですが、そのような心配は必要ありません。
克也様がやりたい事をされたらいいのです。
私たちお供は、それを手伝うためにいるのです」
「ありがとう、して欲しい事があったらお願いするよ。
でも今はだいじょうぶ、みんなを疲れさせてまでしたい事はないよ。
このまま荒地を開拓して、次の収穫に間に合うように種をまくよ」
「分かりました、では種蒔きを手伝わせていただきます。
ただ、明日は雨になりますので、今日中に種蒔きを終わらせた方が良いですよ。
開墾はそれくらいにされて、休憩の後は種蒔きにいたしましょう」
「え、明日雨なの……お城で勉強しないといけないの?」
「はい、地球に戻った時のために、しっかりと勉強していただきます」
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