第9話 東京中央ダンジョン5

 「《さあ始めよう。満足いく試練を》」


 その言葉を戦いの開始の合図としてお互いに後ろに飛びのいた。


 《まずは俺からやらせてもらうぜ!『ボルカニックバレット』!》


 精霊の背後にいくつもの魔法陣が現れその中からいくつもの溶岩の球が弾幕のように張られる。

 いつものように避けていけるような隙間はなく突っ込んだら絶対に当たるとわかるほどの物量だった。

 

 「ちょっ!ずるくない!?詠唱なしでそんなに放てるの!」

 

 《しらねぇ!そもそも火に関することは俺の領分なんだ!無詠唱で放てなかったらその領分を管理してるとは言えねえだろ!》

 

 「確かにそうだね!じゃあこっちはそれ以上の物量で押し切ろうかな!永遠に凍てつく氷の牢獄よこの地に深淵の寒冷をもたらさん!『絶対零度領域アブソリュート・ゼロ・ワールド』!」


 床に魔法陣が広がりその範囲に猛吹雪が吹き精霊が放った魔法とぶつかりドッゴーンっ!という爆発音とともにお互いの魔法が相殺される。


 《やるじゃねえか!じゃもっといくぞ!『ファイアランスガトリング』!》


 精霊の手に魔法陣が展開されキュイーンッ!という高音とともに回転し始めてそこから数えるのもおっくうなほどのファイアランスが放たれる。

 

 「それはさすがにやっばい!ちょっと早いけど解放しようか!『ダブルエンチャントスペル・始絶』『エンハンス』『エンハンスフィールド』起きて『紅月』!」


 私は自分自身に強化をかけ、紅月の力も開放する。

 そうして名の通りガトリングガンのごとく飛んでくるファイアランスをすべて薙ぎ払った。


 「今度はこっちから行くよ!」


 力いっぱい踏み込みその踏み込みの勢いを使って音速に到達しそうな勢いで相手の懐まで潜り込み大鎌を振り抜く。


 《ちょっ!お前速すぎだろ!ほんとに人間かよ!『マナシールド』!》


 はいったと思ったが魔法陣を盾にされて防がれその間に精霊は後ろに下がった。


 「いいね...いいね!初めてだよ!私にここまでついてこれる人は!もっと私を楽しませて!」


 《それは俺からも言えるな!俺にここまで食らいついてきた奴は他の世界を含めても初めてだよ!これなら全力を出してもいいだろ!楽しませてやるよ!『マルチマジック『ボルカニックガトリング』『メガファイアランス』『フレイムカノン』』!》


 魔法陣がいくつも展開されそこから視界いっぱいに魔法が広がる。


 「ふふふふ...アッハハハハハ!!そうそう私はこういう戦いを望んでたんだよ!『マルチエンチャント・深淵絶界』!詠唱破棄『マルチマジック『フロストゾーン』『アクセラレート』『オーバーリミット』『レゾナンス』』!行くよ!」


 私は領域魔法フロストゾーンで床を滑りやすくしてアクセラレートでさらに加速、オーバーリミットで身体能力を限界突破させレゾナンスで付与した属性と私を共鳴させる。

 人間を超越した身体能力で踏み込みソニックブームを起こしながら精霊のいる方向へ突っ込む。


 《お前まじかよ!ソニックブームで魔法消しながら突っ込んでくるのかよ!『幻灯分身』!》


 精霊の姿が揺らめきその場から消える。魔法の名前からして火による幻影系の分身...しかも本人は透明化するやつだろう。


 「考えたね!けど範囲攻撃したら解決する話だよね!大鎌術奥義『月影』!」


 自分を中心に半径二十メートルをすべてを切り裂く黒い風が襲う。幻影はすべて切り裂かれ揺らめきながら消え本体が現れる。


 《ちょっ!うっそだろお前!ちょっとかすったんだが!攻撃範囲頭おかしいって!『超新星爆発』!》


 「さすがにそれはやばいっ!詠唱破棄マルチアンフォールド『絶対零度ノ暗黒盾』!」


 私は急いで10枚の闇と氷の複合属性の盾を張った。


 が、しかし抑えきれなかったようで次々にバリンッ!バリンッ!という音を立てて割れていく。

 そのまますべての盾を割られ威力はある程度落ちているが爆発に巻き込まれて吹き飛ばされる。


 「いったぁい!『ダークリカバリー』!よかったぁ闇属性の回復魔法覚えといて」


 《お前人間だろ!?なんで闇系の回復魔法が効くんだよ!》


 「知らないけど死神の技能のせいだと思うよ!それに死神の魂が私の中にあるんでしょ!それも関係してると思う!すべてを閉ざし極寒の牢獄とかせ!『闇ト氷ノ閉ザサレタ牢獄』!」


 《あ!しまった!チッ!氷は溶かせるが闇の方が解除できねえな!仕方ねぇこの形態は出すつもりなかったがこの状態だと出すしかないか!形態変化『獄炎化』!》


 そう叫ぶと精霊の体が火に包まれた。あたりを強く照らし、一気に高温にしたため牢獄の魔法が強制解除される。

 そうして火に包まれた精霊が火の中から出てきた。

 その姿は大きく変わっており髪は揺らめいていた程度だったのが燃え上がっており高温になったのか纏っている火がすべて青色になっていた。


 《はっはっは!この姿になったのはほんとに久しぶりだ!ここからは全力全開でいくぜ!『ブルーフレイムフラワー』!》


 床に青色の魔法陣が広がり青い炎に包まれた大きい花が召喚されその周辺には火でできた蝶が舞い踊る。


 「さすがにこれに対抗できる魔法は...一応いくつかある。地底の奥深くに住む氷魔の獣よすべてを食らいつくせ!『氷魔ノ獣ノ晩餐』!」


 地獄の門のような自然的な恐怖を与える門が召喚されその中から全身を冷気に包んだ獣が姿を現した。

 その獣の周りはすべてが凍り、精霊の魔法も例外なく凍らされた。

 そのまま獣は駆け出し精霊に食らいつこうとする。


 《さすがにそれはやばいな!『超温融解』!》


 氷の獣は超高温によって溶かされ跡形もなく消え去る。


 「むぅ。一応奥義的な魔法だけど効かなかったか。まあそっちの方が楽しいからいいけどね!それよりも次は本気の一撃を放つよ!これで倒せなかったらあきらめる!」


 《ほう、確かに実力は拮抗しているようだしなこのまま戦っていたらどれだけ時間がかかるかわからん。いいだろう次の一撃でお前を沈めてやろう》


 こんなに強いやつはなかなかいなかったからもうちょっと戦っていたかったがさすがに何年も戦う趣味はないからお互いの最高火力をぶつけて勝者を決めることにした。


 「『ハイエンハンス』『ハイレゾナンス』『マルチエンチャント・至極深淵始絶』『ハイアクセラレート』」


 《すべてを燃やし尽くす地獄の門よ面前にその姿を現せ!》


「『短距離転移』大鎌術奥義『死ヲ導ク死神ノ鎌』!」

《『地獄ノ業火』!》


 精霊が超広範囲領域魔法を放ち床に百メートル級の魔法陣が展開され地獄の業火の名にふさわしい炎が巻き上がる。


 私はそれを気にもせず火に突っ込んだ。


 熱い、熱い、熱い、だが我慢はできる。


 私は勢いを落とさずに精霊のもとにたどり着き正面左右背後の四方向に死神を召喚し同時に鎌を薙いだ。


 その鎌の勢いはすべてを切り裂き炎はおろか空気すら切り裂きすべてを亜空間に捨て去った。




 「よっしゃー!勝ったぞー!」

 『おめでとー!』

 『精霊もしろちゃんもやばすぎ!』

 『おめでとー!!』

 『鳥肌立った!!』


 《おめでとう!まさか俺の魔法を真っ正面から叩き潰すとは恐れ入った!死神の名にふさわしいだろう!》

 「ふふ、ありがとう。これで試練は合格かな?」

 《ええ、おわりですよ。よく一番難しい試練を突破できましたね》


 目の前の火の管理精霊以外の声が聞こえた。

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