第55話 幼女、継戦能力を上げる

「さてさて、着込みますかねーと」


 ウチは、完成したバイオジャケットを着込む。


 バイオジャケットの見た目は、シュッとした宇宙服みたいな感じである。


「おお、ええやん。かわいいかわいい」


 キュートなケツのラインが隠れてしまうのが気になっていたが、これはこれでおしゃれだ。キグルミ感も、そこまで出ていない。幼女とキグルミは、別のベクトルが働くキュートさだ。


 さっそく外に出て、試し撃ち。


「邪神ショット! 邪神ショット!」


 長大な【ビーム】から、小刻みに撃てる【ショット】タイプに、武装を変えている。

 木や岩を溶かす程度にまで、火力が落ちていた。

 相手の急所に当てるなら、これくらいの威力でちょうどいい。

 

「武装は申し分なし、と」


「アトキン、邪神ビームは分割したんですね」


「せやねん」


 ウチは、邪神ビームの砲身を二つにして、大小で使い分けることにした。一発の出力を、抑えるためだ。

 こうしないと、常に邪神ビームを撃つとき、常に全力を出すことになる。継戦能力を高めるためには、スキがない方がいい。弱点を突いて攻撃するのだから、必要以上の火力も不要だ。


「でも、火力自体は抑えられないんですよね? どうするんです?」


「こうするんや」


 ウチは邪神ビームの魔力を、バイオジャケットを通してブーツの底に流し込んだ。ジャケットと一体化しているブーツは、ビームの力を推力に変えた。


 横にスライド移動しながら、邪神ショットを何度も撃つ。


「OK。移動攻撃はこれでよし、と」

 

「跳躍に、ビームのパワーを使うんですね?」

 

 邪神ビームの余剰すぎるエネルギーは、推力に回す。つまり、高速移動に使うのである。


「火力や推力をお化けみたいにアップさせない辺り、アトキンのこだわりを感じます」


「ウチがハイエンドになる必要性は、ないさかい」


 たしかに、ハイエンドな肉体は魅力的に思える。しかし、そのためには膨大な維持費がかかるのだ。高すぎる戦力はタダのコストであり、リスクにしかならない。コストを考えなくていいのは、ラノベやマンガの世界である。



 企業にせよ、魔物にせよ、巨大化はその維持にエネルギーを費やす。凶悪な戦力を持っていれば、なおさらだ。

 恐竜的な進化を遂げたダゴンと同じ思考である。急激な巨大化には、急激な退化・劣化が待つ。

 

 ウチは、そうはならない。ウチ自身はダウンサイズを図り、よりコンパクトで低燃費を目指すのだ。

 大切なのは、取り回し。必要なときに、必要な力を出せるか、にある。


「さて、部屋に戻って茶をしばこうやないか。って、これはアカン」

 

 だが、またココでも失敗をした。手がモコモコ過ぎてコップの取っ手を掴めない。

 

「手袋は、いらんかな」


 腕はジャケットの素材で覆うとして、手全体はアームカバーでいい。


『大変です、アトキン先生!』


 カニエが、ウチのアジトにあるモニターから声をかけてきた。彼女には、昆虫型ドローンによる偵察を頼んでいたはずだが。


『高山エリアに飛ばしていたドローンが、何者かに撃ち落とされました!』


「なんやて!?」


『しかも相手は、ドローンとわかって攻撃してきたみたいなんです!』


 マジか。

 つまり、思考をちゃんと持ったやつが相手ってわけだ。


「アトキン、少しいいですか?」


「どないしたん?」


「あなた、ニヤニヤしてますよ?」


「わかってまうかー」


 気分がワクワクして止まらないのが、クゥハにはバレていた。

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