ハート・ボイルド②
崔 梨遙(再)
1話完結:1000字
黒沢影夫は、私立探偵。車で依頼人立花の妻の椿の車を尾行していた。どうやら、怪しまれてはいないようだった。椿は、スーパーの駐車場に車を停めた。
“なんだ、ただの買い物だったのか?”
と思ったら、椿は自分の車を置いたまま、見知らぬ男の乗る車に乗り込んだ。その、椿が車に乗り込む瞬間を写真におさめた。そして車は走り出す。黒沢は、その見知らぬ車を追いかけた。
バッチリだった! 椿と男の乗る車がホテルに入るところもカメラにおさめた。次に、椿の浮気相手の男について調査する。意外と時間はかからなかった。男は毒島為五郎。椿が結婚する前に勤めていた会社の椿の元上司だった。なんと、結婚前から椿は為五郎と交際をしていたというのだ。
“え? 結婚前から付き合ってたのか?”
とは思うが、長く探偵をやっていると、そういうケースも珍しくはない。“え!”というケースにも慣れている。黒沢は淡々と報告書をまとめた。
黒沢は、依頼主の立花に報告書を提出した。立花の顔から血の気が引いた。
「正直、ショックです。でも、これが現実なら受け止めます」
「では、料金を期日までにお振り込みください」
やれやれ、なんとか1件、解決出来たようだ。
そして、黒沢は夜になるとBARに入り、カウンターで1人で飲むOL風の女性に声をかける。微笑む美女。フィーリングがあったのか、美女を自室に持ち帰るのに時間はかからなかった。
1度燃えてから、ベッドで美女と並んで寝る。
「また会える?」
「そうやなぁ、わからへんわ」
「意地悪ね!」
「あなたが僕を想ってくれるなら、本気で愛してもええで」
「うん、これから私、あなたのことばかり考えてしまいそう」
「それでええねん。あなたは僕のことだけ考えていたら……」
と、いう夢を黒沢は見た。
黒沢は、立花の家の斜め前に車を停めた。椿が車で出るなら来るまで追うし、徒歩で出歩いたら車から降りるつもりだった。
すると、椿は自転車で家を出た。黒沢は走った。黒沢は持久走には自信があった。だが、そういう問題ではない。自転車を全力疾走で追いかける黒ずくめの男、目立って仕方が無い。皆からは、かなり怪しい奴だと思われているだろう。
そして、黒沢はついていけなくなって諦めた。黒沢は日報に、“本日も異常なし”と書いた。
これが黒沢の現実だった。だが、黒沢はくじけない。
ハート・ボイルド② 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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