唯お姉様は女子風呂で勃起してしまうような素晴らしいお姉様です
「……はっ! そ、そうだよ! 何で私以外の女で気持ちよくなってるの唯! 私の方が気持ちいいでしょ⁉ 毎日毎日! 百合園女学園に入る前から一方的に身体で教えてきたよね⁉ 何を勝手に浮気してるの⁉」
いきなり何を言っているのかと言及したくなってしまうような、そんな意味の分からない言の葉を述べてみせたのと同時に、自分の雇用主にしてご主人様である百合園茉奈は凄い勢いで私の腕を掴んでは自身の胸の間……谷間の方にへと押し寄せてきた。
おかげ様で私の腕は……いや、両腕は大岡裁きを思わせるように双方の女子2人から引っ張られてしまう始末であり、絶対に隠さないといけない男性器のガードは入浴剤によって灰色に濁ったお湯だけという危機的状況に陥ってしまっていたのであった。
「ちょっ⁉ ごごご、ご主人様⁉ いきなり何を……⁉ って⁉ ひゃぁん⁉」
「フ。処女ならではの良い悲鳴。欲情してしまう。浴場だけに」
端正な顔を真っ赤にしながら意味の分からない行為に及んでみせた自分の雇用主に文句と抗議をぶつけようとしたその瞬間、意識を向けていた真反対側――下冷泉霧香が以前から捉え、両胸で捕らえていた自分の両腕を更に深く沈めてきたが為に、色々とありすぎて過敏になっていた自分の神経が更にヤバい事にさせられたのである。
これ、すごい。
うん、すっごい。
何ならこのまま――いやいやいや! そうじゃないだろう、私!
「し、下冷泉先輩⁉ どうしてさっきよりも私の腕を胸の谷間に押し寄せてっ……⁉」
「フ。愚問。私と茉奈さんが同じ条件で戦うのであれば差別化は必要不可欠。故にこそ私は茉奈さんよりも豊満なこのエロエロボディを利用するまで……論理的で禁欲的でしょう?」
「禁欲とは正反対が過ぎるぐらいに色欲的過ぎだというご自覚がないのですかっ⁉ は、恥じらいぐらいは持ってくださいよぉ……⁉」
自分の両側面にいる頭がイカれた美少女たち。
漫画だとかアニメだとかでよく見かけるような構図……両手に花と言わんばかりのこのシチュエーションを現在進行形で遺憾なく味わってしまっている私なのだけれども、これ本当にヤバい。
何がヤバいって、男性器が本当にヤバい。
温かいお湯に隠された自分の男性器は心身を疲れをリラックスさせるお風呂に入った事もあって血の巡りというものがとてつもなく健康的になっており、それに加えて美少女2人が横にいるというにわかには信じがたいショッキングな出来事。
私は女装をしているとはいえ――まぁ、こうしてお風呂に入っている時点で女装かどうかの定義すらも怪しくなるのだが――実は健康的な男の子なのである。
勃起障害だとか性の不一致だとか、そういう事もない男の子なのである。
詰まる所、本当にヤバい。
ヤバいのだ。
余りのヤバさに私は左や右の方にへ視点を向ける訳もなく、色々と目から背けたいが為に水中に隠された自分の男性器の方にへと視線を向ける他ないぐらいヤバいのだ。
あぁ、なんかもう余りにもヤバすぎて語彙力が本当にヤバい……!
「むぅ……! ちょっと唯……! よそ見しないでよっ……!」
「ご、ご主人様⁉ ちょ、やっ、待って⁉」
「何? 本当に業腹だけど私もあの変態先輩と同じ事をしてるだけなんだけど? それとも何? 唯は胸が大きい人じゃないと満足出来ないような性欲に忠実な人だったりするの?」
「そ、そんな訳ないでしょう⁉」
「……どーせ興奮してる癖に」
「っ、ぁ……そ、それは……」
「はい即答できないね。唯は本当に救いようがないぐらいに変態だね」
怒りながら嬉しがっているという器用な事をしているお嬢様はまるで私を自分の所有物であると誇示するように腕に込める力を更に強くするけれども、反対側にいる美人……下冷泉霧香がそれを許す筈もなく。
「ちょっと変態先輩。さっさと私の唯から腕を離してくれない?」
「フ。あらかわいい嫉妬ね。やっぱり唯お姉様はかわいい女の子に嫉妬をさせるのが得意な素敵な女の子ね」
「ち、違いますからっ……!」
「フ。とはいえ、唯お姉様の処女膜を破って愛液でグチョグチョになる予定の指を咥えて見守る私じゃない」
「お願いですからこれ以上は本当に止めてくださいっ! 本当に! 本当の本当に! これ以上は不味いんですからっ!」
「フ! あらあらあらあら! 何が不味いのかしら! 欲情したのね! 欲情したんでしょう! ねぇ欲情したのよね! でも安心して? 私も茉奈さんもすっかり欲情してるから」
「は? 私は先輩と違って欲情とかしてないんだけど? 私は自分の所有物である唯に『自分が誰の物なのか』って再教育しているだけなんだけど? 義務感、そう義務感。先輩のような性欲とか全然無いから。そういう訳で性欲しかない変態先輩はさっさと手を離して風呂から出て。唯は私とお風呂に入るの」
なんて素晴らしい言葉なのだろう。
とても歴史と伝統溢れる都内屈指のお嬢様学校である百合園女学園の理事長代理が発言したとは思えない。
さてはこのご主人様、この令和の時代には人権という素晴らしいものがある事をご存知ないのだろうか?
一応言っておきますけど、女装をして周囲を騙しているような悪人であるこんな私にも人権はあるんですよね。
「フ。そういう茉奈さんはいつもの男性口調はどうしたのかしら?」
「へ? ――あ」
「フ。今更気がついて猫を被るのも結構だけど、おかげ様で唯お姉様を優しくエッチに抱き寄せる力が弱まったわね! さぁ! こっちに来て唯お姉様!」
「せ、せせせ、先輩……⁉」
「ね、ね、ね、猫なんか被ってないが⁉ というか、僕には猫を被る必要性なんて一切ないんだが⁉ それはそれとしてさっさと唯を離せこの変態先輩! これは理事長代理として警告だからな⁉ 唯はさっさと僕の元へ戻ってこい!」
「ご、ごごご、ご主人様……⁉」
「なぁ唯? 君は一体全体誰のモノかな? ん? 言えるな? 言えるに決まっているな? そうだな? さぁ言え? 君は一体全体誰のモノなのかどうかすらすらと誠意を込めて言えるな?」
「フ。無理矢理な女の子は嫌われるわよ?」
「どの口がそれを言うのやら。これ以上僕の機嫌を損ねたら女子寮を管轄する理事長代理としての権限を用いて先輩をお追い出してやるのもやぶさかではないんだが?」
「フ。あら怖い。でもお考えになられて理事長代理? 退学覚悟で愛を主張する女と、そんな素敵な人を退学させる人。世間一般から見て、唯お姉様から見て、一体どちらがドバドバ好感度が上がるかしらね?」
「相変わらず口だけは良く回るなこの変態」
「フ。茉奈さんには負けるわ」
私の両腕を挟みながら2人はいつもの様子であーだこーだと口喧嘩の応酬をして見せる訳なのだけど、2人がそんな事をしていやがる所為で私はこのお風呂から出れない。
というのも、考えて見ても欲しい。
私は男の子なので、男性器が生えていらっしゃる。
それもとんでもなく固くなってしまった状態で生えていらっしゃる。
何なら2人がばしゃばしゃとお湯を揺らすものだから、その衝撃がお湯から伝ってきて男性器に届き、少しの衝撃だけでも私の身体はびくん、と凄い勢いで背筋を伸ばしてしまいそうな危機的状況に陥ってしまっている。
当然ながら、両腕を封じられているこの状態で立ってしまえば――男性器はもう既に立ってしまっている訳なのだが――あられもない男性器を、しかもかなりショッキングな状態にへとトランスフォームした男性器の姿を、年頃の少女たちに曝け出してしまう。
そんなのは駄目だ。
私のバレてはいけない秘密である『女装』という嘘がバレてしまうのは、どうやっても回避したい。
というか、まだ恋人だとかそういう関係性にもなっていない女性たちにそれを見せるのは色々と駄目が過ぎる。
……まぁ、ご主人様には何度も見られた訳だけど!
それはあくまで見られた訳であって、自分から見せた訳じゃない。
うん、まだ見せてない。
私には! まだ! 自分が男の子なんだっていう尊厳が一応は生き残っているのだから!
(……って、そういう問題でもないでしょ……⁉ うぅ……! 本当に頭が回らない……! 本当に自分の頭が馬鹿になってる……! 考えれば考えるほど、両腕の感覚が鮮明になって気持ち良くなっちゃう……!)
本当に、何という事でしょう。
助けに来てくれたのだと思った私のご主人様は、何をとち狂ったのか、現在進行形でセクハラをしてきやがる下冷泉霧香に対して対抗心を燃やし、私のご主人様であるという証明を行うという『それ今する必要性ある?』という問題に酷くご執心で、色々と興奮しているのであろう彼女から発せられる鼻息が肌に刺さって、それはそれで興奮させられてしまう。
対する下冷泉霧香は今の状況が何だかんだで楽しくなってきたのか、先ほどまでは浮かべていなかった筈の不敵な笑顔の状態で私の片腕を豊胸に寄せ付けては上下にいやらしく動かしては刺激を与えてくるので、これ以上は変化する事はないだろうと高を括っていた自分の男性器が更にヤバい事にさせられてしまっている状況。
(待って。待って待って待って待って……⁉ 本当に、待って……! これ以上は、ちょっと、不味いって……⁉)
だって、そうだろう?
(――1ヶ月ぐらいしてないから、これ、本当、不味っ……!)
これから話すのは言い訳ではなく、単なるれっきとした事実であり、生理現象と言ってもいいだろう。
私は男の子だ。
それも年頃の、何処にでもいるような、ちょっと歩けば女子と勘違いされて、電車に乗れば痴漢に襲われて、飛び入りで参加したミスコンで何故か優勝して、所属していた中学校で男子生徒全員から告白されたけれども、普通の男の子だ。
……当然ながら、スマホでかわいい女の子を見て……色々……することだって、ある。うん。一応。
いや、これは男性なら普通だから。
本当の、本当に、普通だから。
まだ生きていた頃の姉から生暖かい目で見られてしまったぐらいには普通だから。
だけども、最近の私には色々とありすぎた。
本当に色々とありすぎて、こうして女装をして女学園に編入するだなんていう真似をしてしまっている訳なので、自分の身を守ろうと……いや、正確に言うのであれば、百合園女学園に所属する女子生徒たちに対して性的な視線を向けないようにと、色々と自制を、それはもう鋼の意思で自制をしてきた。
具体的に言うのであれば、百合園女学園に編入してから、いやご主人様に拾われてから1ヶ月の間ずっと!
私は
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