心の音

かな

 まだ執筆途中の作品です。 ぼちぼち更新しますので、お待ちください。 X(旧Twitter)にて随時お知らせします。

 こころってなんだろう、それはみえないもの、それとも胸打つような感極まるもの? みんな、よく口にするけれど、わたしにはわからない。いや、わかるけれど、みえないせいで実体がまるで掴めないような気がする。なんだろう、ふわふわしたものに感じる。それでいうと、わたしは一つだけ答えに近しいような感覚を知っている。もう二度と戻らない、還らない、あのときあの瞬間の色合いに染まったものが、こころなのではないか、と。

 たとえば、わたしが小学生のころ、はじめてのクラス替えに胸を躍らせながら、どの子と一緒になるか考えたこと。そのとき、同級生をみつめていたけれど、それは春だった。暑くも寒くもない季節。

 わたしが中学生のころ。すこし肌寒いなか、学校へ行くまでに自転車をまたがり、からっとした澄んだ空気を吸い込んだ。あのときの、胸に沁み込んだ侘しさをなんというのか知らない。そんな秋。

 今まで挙げてきたのは、春と秋、つまり暑さ寒さの狭間にあるものたち。でも、なぜそれが唐突に思い出されるのか。きっと、命短い、たったわずかの貴重な温度だから。

 そういう大切な欠片にあるのが、それでようやく表れてくるのが、一瞬一瞬のわたしというレンズを通して写し出されるのがこころではないのか。

 こんなこと、初めて思いを巡らせたけれど、だって、急に蘇ったから。すべてが、色鮮やかなすべては、長いあいだ閉ざしていた記憶とともに花開く。

 わたしのなかにあるものって、こんなに綺麗な、ビー玉みたいに磨かれたものだったの。それは瞬いて、断片的で、わたしの影を追いやるくらい強いひかり。

 これが、わたしという人間の寄せ合わせなんですね。


おと

 わたしは本音をよく隠した。なんというか、自分のうちに秘めているものは、他人と同じ価値観とは限らないのだから、それでぶつかり合うのが嫌だった。でも、そんなことをして、押し込んだ本音を溜めているうち、いつしかなにも本当のことを口にできなくなった。怖くなった。

 だから、言われた。

「さくら、なにか隠してない?」

「え、なにが」

 わたしの名前は、さくら。

 自分では、素敵な名だと思っているけれど、それだって他人がどう感じるかはまた別のはなし。わたしの桜という、お花からいただいた名も、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

心の音 かな @tounoki_kana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る