【短編】異世界から来た貧弱系魔法少女は、それでも恩を返したい!

misaka

第1話 『#■$★▲△%』

(※)→音の説明 「」→セリフ 空行→間





(※蝉の声)


(※目覚ましの音)


(※主人公がベッドから起き上がる)


(※トイレ各種、朝支度の音がしばらく)




(※転移の魔法が発動する音。空気が収縮するような異音)




(※重いものが落ちる音)




「あぅ……。★▲%◆□? ◇△★#$▲■?」




(※沈黙。蝉の声)




「▲★▽□■$△#%▲?」




(※沈黙。トースターが出来上がる音)




「はぁ……。%★△★$▲□▼。『#■$★▲△%』」


(※翻訳魔法の発動。耳鳴りのような甲高い音)


「ふぅ、疲れた……。私の言葉、通じてる?」


「ふふ、良かった。まずは、迷惑をかけてごめんなさい。私はアステア王国の宮廷魔導士『リエステ』。あなたは?」




「……? 私には難しい発音。恐らく15歳の私の方が年下。ひとまず、意味が通じるだろう『お兄さん』と呼ばせてもらう。……良い?」


「ん、じゃあ、お兄さん。改めて、迷惑をかけてごめんなさい。王国で転移魔法の実験をしていたら、ここに来てしまった。包み隠さずに言うなら、失敗。……ふふ、これだから魔法は面白い」


「壊れた物があったら、言って欲しい。王国の方で、弁償させてもらう」


「……ん、どうかした? アクェスがギデパンを食らったみたいな顔してる」




「魔法が、分からない……? それに、アステア王国も、鳥のアクェスも、基本風魔法のギデパンも知らない……? そんなはずは……」


「会話は、出来てる。だから、翻訳魔法は上手く機能してるはず。でも、私の言った単語が分からない……」


「ということは、マルド大陸とは別の文化圏と考えるのが妥当……?」


「……お兄さんにちょっと聞きたい。ここはどこ? なんていう国? あるいは村、町?」




「ニホン? 聞いたことが無い……。ニホンはなんていう大陸にある?」




「ユーラシア……? それも、聞いたこと無い。国はともかく、コノヨンに5つしかない大陸を私が忘れるわけない」


「……ひょっとして」


「お兄さん。確認すると、この星の名前はコノヨンで合ってる?」


「チキュウ……。ふふ、やっぱり違った」


「聞いたことの無い国。聞いたことが無い言葉。聞いたことも、見たことも無い文化。何より、大気中に魔力を全く感じない……」


「まるで大衆向けの物語のような話。でも、そう考えるのが最も合理的」


「……ということで、お兄さん。落ち着いて聞いて欲しい」




「私、リエステは、こことは別の世界から来たかも知れない」




「ん、そう。私が居たのはコノヨンという星の、アステア王国。でも、お兄さんには全く聞き馴染みが無い。……合ってる?」


「つまり私は、転移魔法の実験に失敗して、別の星に来てしまったみたい」


「ふふ、私も信じられない。でも、事実」


「それと、もう1つ残念なお知らせがある」


「私、初対面の人とこれだけ人と話したのは何年かぶり。だから、もう……」


(※リエステが床に倒れる音)


「体力の、限界……」


「ふふん。私の体力は、人間の中でも最底辺。舐めないでほしい」


「くわぁ~……はふぅ。それに、転移魔法で一気に魔力を使った反動が、来たみたい。すごく、眠い……」


「私、みたいな、不審者を……。家に置いておくのは、危険……」


「見ての通り、私は持ち運びに適した体重をしてる。大人のお兄さんからすれば、重くない、はず……」


「だから、家の前にでも、捨てておいて」


「それじゃあ、おやすみ、なさい。……くぅ」




(※沈黙。蝉の声&鳥の鳴き声)




(※主人公の足音)




(※玄関ドアを閉める音)

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