第29話 最後の準備

 ヴィオラがならすゴソゴソという物音を目覚ましに少し早い朝を迎えた。


「起こしちゃった?」


 ヴィオラはベッドから離れ自分の荷物のところにいた。


「手に持っているのは薬か?」

「……」


 ヴィオラは手に白い粒の薬を持っている。

それを指摘するとヴィオラは少し気まずそうな表情で目をそらした。


「……説明してくれるか?」

「……うん」


 パーティのリーダーとしてメンバーの健康状態を把握しておくのは重要だ。ここでなんとか聞き出しておきたいところだが。


「実は私、ちょっとした持病があるの」

「なんでこれまで隠してたんだ」


「皆に心配かけたくないから。それに持病って言っても薬ちゃんと飲んでれば問題ないし」


「そこまで深刻なものではないんだな?」

「うん。深刻だったら流石に相談してた」



 作戦決行は夜なのでそれまでにやるべきことを済ませておかなければならない。


 主に作戦プランの最終確認、拠点がある付近の地形の確認などだ。



 作戦プランは他人に聞かれることがないように宿で4人集まって確認する。


「今回はアルテナさんのパーティが主軸となって作戦は展開される。俺たちは基本的にアルテナさんたちが取り逃した構成員の確保を担当する」


「アルテナさんたちの取り逃しって少なそうだし私たちの仕事も少なそうだね」


「だが油断はできない。相手が持つエーテルマギアによっては厄介な事態に発展する可能性もある」

「面倒なことにならないことを祈るばかりね」



 今度は拠点近くの地形の確認へ向かう。

構成員に気づかれないように細心の注意を払って確認していく。


「この辺りは森だから遮蔽物が多いね」

「最悪の場合は放火するのもありかも」

「ヴィオラの倫理観はどこへ行ったのかしら……」


 洋館は都市から離れた森の中にある。

隠れてなにかをするには最適の場所だからオブリビオン側はここを選んだのだろう。



 もう1つやっておくべき大事なことを忘れていた。


 それは食べることだ。

体の燃費が悪い人間にとって食事はとても大切なものだ。

200年以上魔族として生き続けていた俺はその認識が抜けやすい。



「う~ん、美味しい~」

「流石高級レストラン」

「こんな料理が毎日食べたいわね」


 思いきって3人を近くの高級レストランに連れてきた。

良い食事はモチベーションの向上につながる。


 これだけ準備しておけば今回の作戦で良い結果を残せるだろう。


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