36話 初めての配信

今の閲覧数は600人ちょっと。予告無しに始めたにしては多いし、現在もどんどん人数が増えていっている。あ、700人超えた。このままいけば、余裕で1000人はいきそう。配信終わる頃には1万超えるか?


コメント欄はすごい勢いで流れていて、目で追えない。この勢いで流れるコメントを読んで返答するんだから、配信者の人たちってすごいよな。


かろうじて読めたコメントが[タヒね]とか[ダンジョンマスター辞めろ]とかの暴言や、配信に関係ないアスキーアートとかだった。あとは本当にダンジョンマスターなんですか?とか、本当に政府の人来たんですか?みたいな質問もあったけど、やっぱり荒らしコメントの方が目につくし記憶に残る。アスキーアートはシンプルに目立つから目に入る。


コメント欄が荒れるのは予想していたことなので全部スルーして決めていたことを話す。



「コメントでは偶然ドロップ内容変わっただけとか、ドロップ内容変わってるのを知った後に動画を撮ったんだろとか、俺が本当にダンジョンマスターなのかを疑う声が多かったですね。こればかりは本当ですとしか言いようがありません」



[いいから戻して]

[嘘乙]

[配信始めるとか話題作りに必死だな笑]

[ドロップ内容変わったくらいで信じられるわけなくね?]

[いえーい!このコメント見ってるー?]

[そこらへんどうでも良いから次いってよ]

[ダンマスになってどんな気持ち?]

[お前何がしたいん]

[∧,,∧

( 'ω' )つ お前は

(m9 \  帰ってよし!

  \  \

    ) ) \

  // \ \

  (_)   (_) ]

[他に証拠だせよ]

[さっさと捕まれー]

[町田のダンジョンマスターさんチースッ!]

[お願いだからドロップ率戻してください]

[なんで質問に答えてくれないの?]



いやドロップ率はあと2日戻さないです。

あとやっぱりアスキーアート目立つな。ズルい。絶対掲示板の人間だろ。



「信じてと言って信じてくれるわけがないのはわかってます。だから今から最初の部屋に看板を設置しますね。内容は今から流れるコメントの中からランダムで5つほど言葉を選んだやつにします。ダンジョンで看板に自分の言葉を載っけたい方はぜひコメントしてください」



さっきよりもすごい勢いでコメントが流れ始めた。速い速い。ちょっと予想外だ。そんなに自分の言葉を載せてほしいのか?


ここから選ぶのか……どうしようかな。ちゃんと読めたやつから選ぼう。



「それでは、夏みかん8さんの"うちの子かわいい"、ガチャ爆死したさんの"みゆき愛してる"、Unknownさんの"あいうえお"、てぇちゃん♈️💙さんの"担当しね"、ただのファンさんの"ドロップ率戻せ"にします。今から設置するので少々お待ちください。」



選んだコメント忘れないうちにさっさとしよう。

本当はアスキーアートとかにすればインパクト強いんだろうけどあれを手打ちは流石に無理。


ショップの画面から使い慣れた看板をサクッと出して、1番最初に"今日配信でもらったコメントです"と書いて、その次にさっき読み上げたコメントをつらつらと書いていく。設定が終わったら、アンケート看板の隣に設置した。


配信見てる人からしたら空中を操作する人になるんだろうか。あの女ダンジョン運営してないからこの辺の操作方法は言ってないんだよな。


コメントをチラッと見たら、何してるの?って感じのコメで埋まっていた。


まぁ無視でいいか。



「はい。設置終わりました。町田ダンジョンの近くにいる方はぜひ覗いてみてください。じゃあ次の話題に行きます。俺が本当にダンジョンマスターか疑ってたコメント以外では、不思議とドロップ率を戻してほしいっていうコメントが多かったです」



[カメラ要らない]

[確信犯だろ]

[いつになったらあそこスキップできる?]

[もう100%は望まないから元に戻してほしい]

[こうやってダンマスの証明できるならドロップ内容変える必要なかっただろ]

[カメラで喜べない。先に進ませて]

[タヒね]

[チュートリアルスキップさせろ]



「あ、ドロップアイテム今のままでいいってコメ見つけちゃいました。そう思ってる人いるなら俺は今後ずっと今の割合のままでもいいですよ」



[待って]

[やめて]

[やめて]

[ふざけんな]

[辞めろ]

[まてまて]

[おちつけ]

[少数派に流されるな]

[絶対許さない]

[どう見ても戻してほしいって人の意見の方が多いやろ]



なんていうか……本当に嫌なんだな。

やめてほしいって意見で荒らしコメが目立たなくなった。


別にヘイトを買いたいわけじゃないからもう戻すか。前のドロップ率でも俺は問題ないし。


画面いじって確率を戻す。

4階層分ってのが面倒だな。


うーん、喋りながらの操作は難しいから自然と無言になってしまう。BGMとか用意しとくべきだっただろうか。



「今ドロップ率変えました。よかったですね」



[え]

[は?]

[おいまて]

[何もよくない]

[まさかカメラのドロップ率あげてないよな?]

[お願いだから元に戻したって言ってくれ]

[外道め]

[本当に絶対許さない]



「ドロップ内容元に戻したんですけど、もしかしてカメラがドロップしたままの方が良かったですか?」



[ちがう]

[まって]

[そのままでいて]

[もうカメラはいらん]

[カメラがドロップしたままの方がいいわけねーだろ]

[カメラしばらく見たくない]



全部冗談なのにな。

でもおかげでコメント欄の空気は軽くなった感じする。


閲覧数はとうに1000人超えていて、もうすぐ2000人行きそう。


ここら辺でちょっと重い話題に触れようかな。



「ですよね。鍵は前みたいに95%ドロップのままですので安心してください。今後ももう変えることはないと思います。コメント欄の要望に応えたところで、次は気になった奴に答えていきますね。まずは"ダンジョン内で人が死んでることについてどう思うか"という質問に対してですが、可哀想だとは思いますよ」



本当は可哀想なんて思ってないけど、流石にそれくらいは取り繕う。


でもそれだけだと、ダンジョンマスターは悪という流れに持っていかれるから、自分の擁護をしないといけない。



「でも、同時に仕方がないことだと思ってます。探索者って命を落とす危険性がある場所に自分から行ってるわけですからね。俺は探索者ライセンスを持っているのですが、講習場でダンジョン内での出来事は全て自己責任。怪我をしても自分でなんとかしなきゃいけないし、もし死んでも誰も責める事ができないと教わりました。例えばスカイダイビングなんかやって死んだとして、いや、やる前から危ないってわかってたじゃんってなりません?それと同じ感覚です」



こっちはダンジョンに入ることを強制したわけじゃないからな。

勝手にダンジョンに入ってきて勝手に死んでるんだから責任を求められても困る。



「死にたくないって少しでも思うなら、探索者になるのは辞めましょう。自分が死んだら悲しむ人が1人でも居るなら、探索者になるのは辞めましょう。初心者向けの俺のダンジョンでさえ死者が出てるんだから、どんな探索者もうっかり死んでしまう可能性ありますからね」



[なるほど]

[死んだ人たちに謝れ]

[言い訳するな]

[ダンジョンに入ることを選んだのは本人だからな]

[確かに死ぬ可能性あるって事前に知ってるはず]

[死んだ人の気持ち考えろよ]

[ダンジョンで死んでダンマスを責めるのは違う]

[そんなに死にたくないならダンジョンに入らなきゃいい話]

[さっさと死んで詫びろ]

[死んで誰かを責めるなら探索者になるな]

[探索者が稼げるのはその危険性込みなんだよなあ]

[死んでいった人たちとその家族全員に直接謝罪していけよ]



コメントの反応は半々かな。思ってたより荒れてないくらいだ。


まあ、ダンジョンで稼げてる人と死んだ人だと稼げてる人のほうが多いしなぁ。ダンジョンで死んだ人の身内の方が少数か。



「仲の良い人や家族がダンジョンで死んでそこのダンジョンマスターを恨みたく気持ちはわかりますけどね」



とりあえずこの話題で言いたいことは言えた。



「この話はこの辺で終わりにして、次の質問に行きます。"本当に防衛省の人が来たんですか?"とのことですが、はい。来ました。1回目は友人がダンジョンマスターかもしれないから何か心当たりはないかって聞いてきて、2回目はその友人と接触したようだが思い出すことはあったかって感じでしたね」



これも疑うコメントがあるのは予想できてた。


そこで使うのがスマホで録ってた録音だ。



「これは俺のスマホなんですけど、デフォルトで入ってる録音アプリありますよね?それ使って2回目に政府の人が来た時の会話を録ってたんです。それを作っただろと言われればそれまでですが、とりあえず今から流すので聞いてください」



カメラにスマホの画面を向けたまま、アプリを開いて録音を流した。

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