5話 1月1日午前9時、日本 (3人称)
イギリス時間では1月1日午前0時。日本時間では1月1日の午前9時。
その日、全人類は声を聞いた。
『
それはすべての言語で、全人類にわかるように。その時間何をしていても、例え寝ていてもその声は届いた。
この日、確かに人類の歴史は変わってしまったのだ。
日本では初詣や初売りセールのために神社やモールに人が多く集まっており、声が流れた瞬間あたりは騒然となった。
ある者は声の発生源を探すために空を見上げて、ある者は声の指示通りにステータスと唱えた。ある者は持っているスマホでSNSに声について書き込む。
何よりも世間を騒がせたのは、渋谷駅に謎の建造物が出現したことだ。
それは線路を巻き込んでおり、都心の電車はほとんど止まった。
お正月の特番はすぐさま緊急ニュースに切り替わり、声についてや全国各地、特に渋谷駅に現れた建造物について取り扱った。
声の発生から1時間もすれば、警察によって規制線が張られ、出現した建造物には近づかないようになっていた。
その間、バズるために嘘か本当かもわからないような情報がSNSに次々と投稿され、実際にいくつもの投稿がバズってしまい、さらに真偽不明の噂話が投稿され、とネット上は混沌としていた。
さらにその5時間後。陸上自衛隊が渋谷駅に出現した建造物に突入。数名の死者を出し、おおよそ1時間で撤退した。
これもニュースとなったが、混乱を避けるために建造物の中にはモンスターがいたこと、建造物の中では電子機器や銃器が一才使えなかったことは秘匿された。
《声の発生から8時間が経過しました。渋谷駅に出現した建造物に陸上自衛隊が派遣されましたが、数名の犠牲者を出し現在は一時撤退をしています。また、政府は今回の事象に対して調査中であるとの声明をだしていて、国民には外出を控えるよう呼びかけています。なにが起こるかわかりません。情報が集まるまで、決して出現した建造物に近づいたり、ステータスと唱えたりしないようにしてください。なお、当番組では声や全国各地で突如出現した建造物についての情報提供をお待ちしております。なにか少しでもお心当たりのある方は下記の電話番号までご連絡ください。》
どこの番組も、アナウンサーが似たようなことを言っている。
事態が動いたのは3日後の1月4日だ。
警察が都内に住む30代男性を今回の事件の重要参考人として連行。
詳しい情報は伏せられていたが、ネット上では、群馬県にも建造物が出現していたことから《ダンジョンマスターになったけど何か質問ある?wwwwwww》というスレッドを建てた人物が連行されたのではないかと噂になった。
その1週間後、1月11日。
政府は記者会見で人智では理解できない超常現象が起こり、世界中にダンジョンと呼ばれる建造物が出現したという声明を発表。
ダンジョン内にはモンスターと呼ばれる化物がおり、銃器では対応できず、自身のステータスを強化して戦うしかないということを、事細かに話した。
そして、準備が整い次第ダンジョンに入場し、市民に被害が及ぶことのないようダンジョンの攻略を行うことを宣言した。
のちにダンジョン防衛宣言と呼ばれる会見である。
半年後、自衛隊の特殊部隊により犠牲者を出すことなく渋谷駅のダンジョンの攻略が完了。出現していた建造物が消滅。
その1ヶ月後、群馬に出現していた建造物の消滅が確認。
さらにその2ヶ月後、有志に集まった人々により、大阪の都心に出現したダンジョンの攻略が行われる。
数十名の犠牲者を出しながらも、完全攻略とはならず、3階層までの情報が世間に公表された。
犠牲者が出たことを重く見た政府は許可なくダンジョン内に入った者には厳しい罰則を与えるという法案を提出。
可決するかに思われたが、この頃にはダンジョンでモンスターを倒すと得られる魔核には未知のエネルギーを秘めているという噂があり、それを政府が独占したいのではないかと国民から批判を受けた。
また、大阪ダンジョンの生存者から宝箱から金が出たという話が出回り、気づけばダンジョン完全攻略反対派の団体も複数立ち上がっていた。
ダンジョン出現からちょうど1年。北海道、千葉県、奈良県、長崎県、福岡県の5箇所のダンジョンからモンスターが出てくる事例が発生。警察と自衛隊が合同で事態の鎮圧に動いた。
ダンジョンを無視していた事が原因ではないかと言われ、結果として、声とダンジョンの発生からおおよそ1年と少し。政府からダンジョンの探索者ライセンスが発行される。
このライセンスは講習を行い、厳しい試験に合格し、身元が保証されている者のみに与えられた。
一部ダンジョンを除いて、一般市民もライセンスさえ所持していれば自由にダンジョンに入れるようになったのだ。
そして、政府は企業向けにダンジョンで得られた物を取り扱えるようになる特殊素材取扱ライセンスを発行した。
特殊素材取扱ライセンスをとった企業がダンジョン素材の研究を次々と始め、ライセンス発行から3ヶ月後には一企業が魔核を電気エネルギーとして変換することに成功。
資源の減少により危ぶまれていた電力業界に光が差した。
ダンジョンの発生から2年経つ頃にはダンジョンの存在は世間に受け入れられ、探索者は命の危険はあるものの一攫千金を狙える夢のある職業となっていた。
探索者時代の幕開けである。
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