実在するオリキャラソングの歌詞置き場

翠雪

縹 -「地獄現世支部」シリーズ/猫間・乾

記憶の始まり 揺れた制服

仕舞い掠れた出会いは 貴方の掌で思い出した

綴じたページの折り目を 覆う指先が冷たい


水面の飛沫 触れた温もり

褪せたはずの記憶は 射抜く眼差しで蘇る

伏せた瞼の宛先は かつて夢見た空想


夕に伸びる影の長さへ身が竦むなら

桜綻ぶまで微睡んで

尽くすこの身の熱はどうか測らずに


血を這う有象無象を超えて

辿り着いた此の世にさよならを

御別れの門前で贖えと

招かれざる使者が降り立つ


柔い前髪が 不意に靡いた

混ざり得ない空の顔 別れて一人残る部屋で

蟠る灰の残り香 花弁の輪郭を焦がす


音の始まり たったふた文字

臆病に咲いて絡まる花を 貴女は信じ 笑うだろうか

閉じた心根の欠片 憂い隠して捧ごう


胸へ灯る想いの遣り場に惑うのなら

隣寄り添い覗かせて

近く並んだ肩はきっとこのために


行き交う狂騒 ノイズを消して

二人きり寂しさを紛らわせ

嘘吐きな唇を赦しては

頬伝う雫を拭って


白積む柊のひととせ越えた春よ

瑠璃の海 東に生まれて紅へ眠る陽よ

蘭の影 尾を休める稲荷の社よ

巡る時の砂を散らせた過ぎし日よ


地を這う有象無象を越えて

孕んだ矛盾に願う引導を

歪に廻る歯車 撚り糸

組み込まれし君に幸いを


瞬きの点と手繋いで

施された彼の世にさよならを

すげない御別れ 解れた縁

気紛れに使者は降り立つ


鬼灯が弾けるまでは傍へ

足跡の果てが視界から消えるほど

遠く 遠く

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