駄菓子研究部!

千尋

第1話 日常

2050年巨大隕石の落下により人口のおよそ半分が死滅。そこからおよそ500年、科学の進歩はありながらも21世紀と変わらない日常が続いていた。

 変わったといえば能力者の誕生である。

 隕石と同時に謎の宇宙エネルギーが地球に広がり、生まれながらにして、様々な能力を使えるものが誕生した。

  彼もまたその1人、、


 2512年 能力者が日常に溶け込み、能力者のためのルールが作られた。彼が通う学校もまたその一つ。

"能力者は国が決めた専門の学校に通わなければならない"


「キーンコーンカーンコーン」

 春休みが終わり今日からまた学校の生活が始まる

「えーみなさん春休みは、、」

 校長先生が語り出す。永遠とも感じる苦痛と時間が流れる。前日いくら寝ていようが、関係なく睡魔が襲ってくる魔の時間。目を瞑り妄想の旅に出る。

 校長の話は長いので割愛する。

 俺の名前は''高村光太郎''、17の年つまり今日から2年生だ。生まれながらにして能力を持つものが、この学校に通う、つまり全員が能力者だ。

 体育館には今日から学校に通う一年生もいる。空を飛んでいるもの、口から火を出しているもの、手足がビリビリしているもの、髪の毛を自由自在に動かしているもの、色んな人がいる。彼らはアピールしているのだ。今日でこの学校のカーストが決まると意気込んでいる。あながち間違ってはいないのだが、特に目新しい光景ではないので2、3年生は無視している。

 全校集会が終わり教室に戻る。この半分髪で目が隠れているインキャは、まごうことなき友達の龍人だ。

「わー光ちゃん同じクラスだね。一緒に部活行けるねー」

「龍人がいて助かったよ」

 龍人はとてもいい奴だ。同じ人好きになってたとしても、気兼ねなく譲れるほどにいい奴だ。

「今日、学校午前だけだし、この後部活行こうよ」

「部長にも挨拶したいし行くか。」

 俺たちが入っている部活は駄菓子研究部、僕たちのような人が集まる憩いの場だ。

 龍人と共に部室に向かう。場所は4階の隅っこにある。普通の生徒なら一度も入らず卒業しているだろう。

「ガラン」

 扉を開けるとすでに部長が待っていた。

「おはようー」

 このメガネをかけている、いかにもって感じの人が、この部活の部長、厳密には今年から部長になる"林駿"だ。

「部長おはようございます!」

「部長おはようございます!」

 俺たちも挨拶をする。本人に向かって部長と呼ぶのは初めてだ。

 「なんか照れるな」

 そういうと、部長はニヤリと笑った。満更でもなさそうだ。

「満更でもなさそうじゃないですか笑」

 龍人は思ったことをすぐに言ってしまうとこがある。

「えへバレたか。そうそう今日は部活初日ということで、じゃん!」

 ポテドフライを自慢げに出す。しかも元祖チキン味。これは確かにレアだ。

「今日はこれは食べながらだべろう」

 袋が既に空いていた。俺たちを待っている間に食べたのだろう。

「やったー!僕、この味初めて食べます」

 龍人は嬉しそうに尻尾を振る

「俺も初めてです」

 嬉しいはずなのに、周りに自分以上にリアクションしている人がいると一歩引いてしまう。

「今日のために取っといたんだ」

 そういうと、机に向かってぶちまけた。雑然と駄菓子が広がっている。

「おいしいー!」

 龍人は屈託のない笑顔を見せる。

「めちゃくちゃうまい!」

 確かに美味しい

「そうかそうか」

 嬉しそうにこちらを見ている部長、大きなリアクションをしたが、普通のチキン味の方が美味かった。それをいうのは野暮なので言わない。

 6畳の部屋に、大きい机が一つ、駄菓子を広げながら会話を楽しむ。このなんでもない時間が俺に取っての青春だ。

「部長、今年はどんな事するんですか?」

「今年っていうか去年も別に何もしてないじゃん」

 サッカーや野球の部もあれば、能力者ならではの部活もある。しかし駄菓子研究部は、誰が作ったのか、なんのために作られたのか全く不明である。

「確かにそうですね」

「でも部長、先輩卒業しちゃったから俺たち3人だけですよ。」

「そこなんだよなあー」

 この学校は、最低5人の部員がいなければ廃部になる。去年は5人丁度だったが、2人卒業して今年から3人になってしまった。そう、憩いの場が無くなってしまうのだ。

「I年生が2人くらい入ってくるんじゃない?」

「女の子がいいっすね」

 正直言って、女の子がいてくれたら最高だ。

「光ちゃん女の子大好きだもんね」

「男よりはいいだろ」

 とにかく女の子と、青春というやつをしたい。

「確かにそうだな笑」

 部長はくだらない話をしているときずっとメガネを触っていた。

「おいまた事件だ」

「最近多いすね」

 そうだ。部長はこの春休みで、AR内蔵型のメガネに変えたのだ。おそらくそれについて触れてほしかったんだろうな。こういう時は意地でも触れたくないのは何故だろう。

「またってなんのこと?」

 龍人もメガネに触れずに会話に入ってきた。思わず笑いそうになる。多分なにも考えてない。

「おい龍人ちゃんとニュース見ろよ。最近、能力者同士が集まって大規模な犯罪を繰り返してるんだ」

 龍人に説明している時、チラリと部長の顔を見たがとても悲しい顔をしていた……

「へー怖いねー、でもあの人たちなんだっけ」

「対能力者対策課か?」

 どうやら諦めたらしい。

「そうそう!それです!その人たちがなんとかしてくれますよー」

「それが主犯格が全然捕まらないらしい」

「そんなに強いんですか?てか部長メガネ変えたんですね」

「さあな……変えちゃいましたー!」

 こんなに嬉しそうな部長を見たのはいつ以来だろう?うまい!棒再現味を食べた時以来か?いや、廊下で見かけた時、たまたま美人の女子生徒とぶつかって一緒に教科書を拾ってる時の顔も、なかなかだったな。

「このメガネすごいんだぞ。まずな……」

 ニュースの話などどうでも良かったかのように、目をギラギラと輝かせながらこちらを見つめている。

「帰ります」

 そういうと龍人はおもむろに立ち上がった。正解だ。

「そうか……お、おつかれ……」

「部長、俺も帰りますね……」

「おう、おつかれ……」

 部屋いっぱいに広がっていたポテドフライの匂いが、なんとも言えない空気によって匂いを失ってしまった。

 

 何か起こる訳でもなく、2年生最初のI日が終わった。

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