どこの誰よりも

@mikan_orange1111

 

ある夜、廃工場に中年男性と青年がいた。

男:「桑汰くん、こんなところに来て何するの?」

桑汰:「え〜?分かんねえ?」

男:「…ごめん。分からないな…。」

桑汰:「もう〜!しゃーねえなぁ!教えてやるよ!…あんた、うちの組から大金借りてんじゃん?兄ちゃんからさ〜、返す素振りがねえから殺してこいって言われてんだよね。だからさ!今までありがと!」

男:「え…?桑汰くん…?」

桑汰がジリジリと男に近づいていく。

男:「ま、待ってくれ!金は確かに借りた!でも、すぐ返すから!もう少し待ってくれ!頼む!!」

桑汰の動きが止まる。

男:「(今のうちに…!)」

男が走り出す。

桑汰:「ん〜…。俺さ、兄ちゃんから、あんたが返すって言ってから、もう半年待ってるって聞いたんだよね〜。だからさ、あんたの『すぐ返すから待って』っていうのは信用できないんだよ。ということで!大人しく死んでくんない?」

桑汰が笑顔で走っている男にナイフを投げる。

男:「ゔっ!」

男の後頭部にナイフが刺さる。

桑汰:「お!ラッキー!1発で当たった〜!とりあえず、こいつ持って帰るか!」

桑汰が男を引きずって車へと向かう。

桑汰:「ただいま〜!」

真夜斗:「おかえり。ちゃんと殺せたか?」

桑汰:「おう!ばっちり!」

真夜斗:「よし。帰るぞ。そいつをトランクに積んでこい。」

桑汰:「はーい!」

桑汰が男をトランクに積む。

桑汰:「早く帰ろ!」

真夜斗:「そうだな。おい、車を出せ。」

運転手:「承知いたしました。」


次の日、学校にて…

2年生になった桑汰と真夜斗だが、始業式から2ヶ月ほど登校していなかった。

理由は、敵対していた組を1つ、潰していたからだ。

もちろん、学校には家の用事と言ってある。

そんなわけで、桑汰と真夜斗にとって2年生になり初めての登校となるのだが、新しいクラスに変わり、登校したくない真夜斗は荒れていた。

ちなみに今は5時間目の授業、真っ最中くらいである。

真夜斗:「チッ!鬱陶しい!」

桑汰:「まあまあ、兄ちゃん!俺と同じクラスだと思うからさ!早く行こ?」

真夜斗:「…これでお前と同じクラスではなかったら暴れてやる。」

桑汰:「ちょっと落ち着いてって…。ほら!一緒のクラスじゃん!こっから近いから、新しい教室もう着くよ!ほら、着いた!」

真夜斗:「チッ!」

真夜斗が、勢いそのままに教室の扉を足で開けたため、大きな音がなった。

桑汰:「ちょっ!兄ちゃん〜!やめろって!みんなびっくりしてんじゃん!」

真夜斗:「知るか。」

桑汰:「もう~…。」

1年生だったときも真夜斗と桑汰と同じクラスだった少数のクラスメイトは思った。

クラスメイト:「(真夜斗、今日めっちゃ荒れてんな〜…。)」

桑汰:「先生!遅刻してすんません!俺らの席、どこっすか?」

先生:「あ、ああ…。そこだが…。」

桑汰:「あざっす!ほら!座るよ、兄ちゃん!」

真夜斗:「チッ!クソが…。」


帰り道…

桑汰:「兄ちゃん、今日めっちゃ頑張ってたね!」

真夜斗:「…そう思っているなら早く帰るぞ。」

桑汰:「おう!帰ってゆっくりしなよ、兄ちゃん。」


次の日、真夜斗と桑汰は遅刻せずに登校していた。

真夜斗と桑汰の席は、絶対に前が桑汰、後ろが真夜斗と決まっている。

前と後ろにしないと、学校一の不良と言われる真夜斗に先生であっても脅されるからである。

そして、全校生徒、先生に至るまで噂されているのは『木蔦家の双子はもしかしたら付き合っている』という噂である。

そんな噂からできた暗黙の了解が『木蔦家の双子が話しているときは割って入らない』や『木蔦家の双子を呼ぶときは“木蔦の兄”と“木蔦の弟”と呼ぶこと』、『木蔦家の双子の関係に関わることについて双子には話さない』など他にもたくさんある。

そんな中、ある女子生徒が桑汰と話している真夜斗に話しかけた。

??:「あなたが真夜斗さんですか?」

しかも名前呼びである。

クラスメイトたち:「(ああ…死んだな、あの転校生…。注意したのに…。)」

真夜斗:「あ゛?名前を呼ぶな。不愉快だ。」

桑汰:「ごめん!兄ちゃんは今、俺と話してるからもうちょい待ってくんね?」

??:「私、あなたには話しかけておりませんの。少し黙っててくださる?」

桑汰:「ふーん…?」

真夜斗:「おい…貴様…!今…俺の弟に黙れと言ったか?あ゛?」

??:「し、失言でしたわ…。も、申し訳ありません…。」

桑汰:「まあ、別にそれはいいんだけどさ、あんた誰?んで、なんで兄ちゃんに話しかけてんの?今、俺が兄ちゃんと喋ってるって言ったよね?耳ねえの?」

??:「なっ…!なんて酷いことを…!」

真夜斗:「うるさい。貴様は誰だと聞いている。さっさと答えろ。」

??:「わ、私は莢蒾 桜姫ですわ!私、真夜斗さんに一目惚れしたのです!」

真夜斗:「は?」

桑汰:「へえ~…。」

??:「ちょっと桜姫!私の愛しい方に、なんて失礼な態度を…!妹が申し訳ありません。私は桜姫の姉である莢蒾 椿姫ですわ!桑汰さん!私はあなたに一目惚れしました!放課後、一緒に2人で遊んでくださらない?」

クラスメイトたち:「(姉の方もか…。注意したのに…2人とも死んだな…。)」

桑汰:「は?」

真夜斗:「ほう…。」

桜姫:「ちょっとお姉様!話をしているところに割り込まないでくださる?」

クラスメイトたち:「(割り込んでんのはお前らの方だよ!)」

桑汰:「ねえ、椿姫さん?だっけ。悪いんだけど今日、俺と兄ちゃん予定あるんだよね。だから、他あたってくんない?」

椿姫:「嫌です!私は桑汰さんと遊びたいのです!」

桑汰:「うーん…。でも、今日は無理だからな…。今日っていうか…たぶんずっと無理なんだよね〜。」

椿姫:「どうしてですの!?」

桑汰:「うーん…どうしてって言われてもな…。」

真夜斗:「おい。桑汰を困らせるな。無理と言っているのだから無理だ。理由など関係ない。さっさと去れ。」

椿姫:「なっ…!なんて言い方ですの!?」

桜姫:「…桑汰さんはずいぶん、お兄様の真夜斗さんのことがお好きですのね?お兄様を困らせてはいけませんよ?」

椿姫:「桜姫、それは真夜斗さんもでは?」

桑汰:「…桜姫さん、放課後に俺と2人で遊びに行かない?」

桑汰がニコニコの笑顔で桜姫を誘った。

第三者から見れば、桑汰が桜姫を満面の笑みで遊びに誘っているように見えるが、真夜斗は桑汰の意図に気づいた。

真夜斗:「(ククッ…!バカが…桑汰の逆鱗に触れてしまったなぁ!桑汰は、他人に俺との関係をとやかく言われることをひどく嫌う。故に、この誘いに乗ってしまったら桜姫とやらに待ち受けるのは『死』だな。せっかく桑汰がギリギリのところで我慢してやっていたのに、このバカはことごとく台無しにする!ククッ!だが俺としても、そろそろ面倒だった故、丁度良いタイミングだ。久々に桑汰の返り血まみれの姿も見られるし、良いことづくめだ!)」

桜姫:「どうしてあなたと私が2人で遊ばなければならないのですか?私は真夜斗さんと2人でお出かけしたいのです。」

桑汰:「まあまあ、そう言わないでよ〜!兄ちゃんの小さい頃の写真とか見せてあげるからさ〜!」

桜姫:「…それは本当ですか?本当に見せていただけるんですね?」

桑汰:「おう!もちろん!」

桜姫:「…仕方ありません。行きますわ。」

桑汰:「おっけー!じゃあ放課後、校門前で待ってて!」

桜姫:「分かりました。護衛も一緒ですがよろしくて?」

桑汰:「おう!いいけど…何人くらい?」

桜姫:「2、3人ですわ。どうしてそんなことをお聞きになさるの?」

桑汰:「だって、桜姫さんに何かあったらやべえじゃん!だから、何人くらい護衛の人いんのかな〜って思っただけ!」

桜姫:「そうですか。ご心配には及びません。私の護衛はとても優秀なので、3人でも問題ありません。」

桑汰:「…ふーん。そっか!教えてくれてあんがと!」

桜姫:「どういたしまして。では、放課後。」

桑汰:「おう!」

桜姫が自身の席に戻っていく。

真夜斗:「椿姫と言ったか?俺たちも2人で出かけないか?桑汰の写真も見せてやる。見たいのだろう?」

椿姫:「…分かりました。行きましょう。私たちも放課後に校門前でよろしくて?」

真夜斗:「ああ。お前にも護衛が2、3人ほどいるのか?」

椿姫:「ええ。」

真夜斗:「しっかり護衛してもらえよ。」

椿姫:「あなたに言われなくても大丈夫です。」

真夜斗:「そうか。」


放課後、廃ビルの屋上にて…

桜姫:「不気味ですわね…。」

桑汰:「そう?ちょうどいいと思うけど。」

桜姫:「ちょうどいいとは…?」

桑汰:「こういうこと!」

桑汰が太ももに隠していたナイフを取り出し、桜姫の首を狙った。

護衛:「お嬢様!」

桑汰:「うわ!」

しかし、桑汰のナイフは桜姫には届かず、桜姫の前に出た護衛の首を切った。

桑汰:「邪魔すんなよ〜!」

護衛:「お嬢様を守るぞ!」

護衛:「ああ!」

護衛2人のうち、1人が桑汰に発砲した。

桑汰:「うお!?危ねえ!」

護衛:「なっ!?」

護衛:「避けられた…っ!?どこへ行った!?」

驚いている護衛の前から桑汰の姿が消えた。

桑汰:「あんたらさ…」

護衛2人:「!?」

桑汰:「すっげー遅いよね。」

護衛:「ぐっ…!」

護衛:「かはっ…!」

その直後、背後に現れた桑汰は護衛2人の首を切った。

桑汰:「あんたの護衛、マジで弱えな。」

桜姫:「ヒッ…!」

桑汰:「2度と真夜斗に近づくな。まあ、もう近づけないけど!じゃ、さようなら!」

桜姫:「や、やめ…!」

桑汰が桜姫の心臓にナイフを突き立てた。

桜姫から大量の血が流れ出る。

桑汰:「やっぱ人殺すときは心臓だよな〜!血付いちゃったし、帰ろ!」

一方、真夜斗と椿姫は人のいない路地裏に来ていた。

椿姫:「こんなところで写真を見る必要はあるんですか?」

真夜斗:「ある。」

椿姫:「なぜ?」

真夜斗:「護衛を呼んでこい。呼んできたら桑汰の写真を見せてやる。」

椿姫:「…分かりました。」

椿姫が護衛2人を呼んでくる。

椿姫:「これでいいですか?」

真夜斗:「…ああ。それでいい。」

護衛2人:「!?」

真夜斗が銃を一瞬で取り出し、護衛2人の眉間に弾を撃ち込んだ。

護衛2人は即死だった。

椿姫:「…え?」

真夜斗:「椿姫…と言ったか。貴様は俺たちにとって邪魔な存在だ。故に処分する。俺たちに話しかけたこと、後悔しながら死ね。」

椿姫:「や…やめ…!」

路地裏には大量の血痕が残された。


翌日、椿姫と桜姫の両親が警察に通報した。

紅葉:「娘が…!娘が2人、帰ってこないんです!」

緋衣:「何か事件に巻き込まれているかもしれないんだ!探してくれ!」

警察が2人を捜索していると、通報が2件入った。

1件目は、ある廃ビルを壊そうとビルを確認していた管理人と工事関係者が屋上で1人の少女と2人の男性の遺体を発見したというものだった。

2件目は、酔っ払った人がある路地裏に入り込んだ時、おびただしい量の血痕と1人の少女の遺体と2人の男性の遺体が発見したというものだった。

どちらも、現場の状況と遺体の傷跡から他殺であることが判明したが、凶器に使われたと思われる刃物と銃は見つからなかった。

犯人も不明。

そのことを聞いた紅葉は泣き崩れ、緋衣は『娘が死んでいるはずがない!』と叫んだ。

紅葉:「そういえば昨日…椿姫と桜姫が電話で『真夜斗さんと桑汰さんっていう好きな人ができたから、これから遊びに行ってくる!帰りは遅くなるわ!』って言ってたわね…。」

緋衣:「そうなのか?」

紅葉:「ええ…。」

緋衣:「じゃあ、そいつらが怪しいな…。」

紅葉:「家に行って話したいわね…。」

両親は真夜斗と桑汰の家に向かいたかったが場所を知らず、警察に伝えて探してもらおうと考えたが、警察は家に向かわせてはくれないだろうと考え、探偵を雇い、すぐに2人の家を探してもらった。


1週間後、探偵は2人の家を突き止め、両親に報告した。

両親はすぐに真夜斗と桑汰の家に向かった。

真夜斗と桑汰の家は大きな日本家屋で、庭には大量の蔓日日草が咲いていた。

紅葉:「ごめんください。どなたかおられませんか?」

那白:「…どちら様でしょうか?」

家の中から凛とした声が聞こえ、男性か女性か分からない綺麗な顔立ちの人が扉を開けた。

緋衣:「私は莢蒾 緋衣、こちらは私の妻である莢蒾 紅葉です。真夜斗さんと桑汰さんにお会いしたい。」

那白:「…分かりました。私は惑楽 那白と申します。真夜斗様と桑汰様に尋ねてきますので、少しこちらでお待ちいただけますか?」

緋衣:「はい、問題ないです。(真夜斗“様”と言ったか…?)」

那白:「感謝いたします。では、すぐ戻りますので。」

緋衣:「はい。よろしくお願いいたします。」

那白によって、扉が閉められる。

緋衣:「紅葉。」

紅葉:「はい?何かあった?」

緋衣:「さっきの惑楽とかいうやつ、『真夜斗“様”』『桑汰“様”』って言ってたよな?」

紅葉:「言われてみればそうね…。どういう関係なのかしら…?」

緋衣:「…ここの表札に“木蔦”と書いていた。少し聞いたことがあるんだが、木蔦組という犯罪組織があるらしい。もしかすると、真夜斗と桑汰というのは木蔦組のトップなんじゃないか…?」

紅葉:「…もし、それが本当だとしたら私たちはここから生きて帰れないんじゃない…?」

緋衣:「分からない…。だが、私たちの椿姫と桜姫のためだ。死んでも真相にたどり着く。紅葉もそのつもりだろう?」

紅葉:「当たり前じゃない。」

緋衣:「それなら、なんとしても真夜斗と桑汰というやつから娘たちのことを聞き出さなければいけないな。」

紅葉:「そうね。」

那白:「失礼いたします。」

緋衣:「!!」

紅葉:「!?」

那白:「中に入れてもいいと、真夜斗様と桑汰様から許可を頂きましたのでお入りください。」

那白が扉を開けて、中に入る。

緋衣:「失礼します。」

紅葉:「失礼します…。」

那白と緋衣、紅葉の3人は庭に面している廊下を歩いていた。

緋衣:「(広い家だな…。)」

紅葉:「(まだ着かないのかしら…。)」

那白がある部屋の前で立ち止まり、正座になる。

那白:「こちらのお部屋に真夜斗様、桑汰様がいらっしゃいます。何かございましたらお呼びください。…惑楽でございます。客人をお連れしました。」

真夜斗:「入れ。」

那白:「失礼いたします。」

那白が障子を開ける。

そこには、紺色の着物を着た真夜斗と、橙色の着物を着て真夜斗の膝に頭をのせて眠っている桑汰がいた。

部屋の中央にある机の上には、蔓日日草が花瓶に生けられて飾られていた。

緋衣と紅葉がどう動こうか迷っていると、真夜斗が無言で顎を動かし、2人に『座れ』と指示した。

緋衣:「(なんて無礼なやつなんだ!!)」

紅葉:「(こいつ、何様のつもりよ!?)」

緋衣と紅葉は額に青筋が浮かび、真夜斗を睨んでいたが、真夜斗は気にした様子もなく、桑汰を起こそうとしていた。

真夜斗:「おい、桑汰。あいつらの親が来ている。こいつらのためにお前を起こすのは非常に癪に障るが、早く起きろ。」

紅葉:「(こいつら!?)」

緋衣:「(癪に障るだと…!?)」

桑汰:「んぅ…?兄ちゃ…?」

真夜斗:「ああ。お前の兄だ。ほら、早く起きろ。」

真夜斗が桑汰の体を起こし、座らせた。

桑汰:「あぁ…まだ寝てたかったのに…。」

真夜斗:「後でまた眠れるだろう。」

桑汰:「兄ちゃんと一緒に寝たいんだよ!」

真夜斗:「ああ、分かった分かった。後で一緒に寝てやるから、今はこいつらと話をするぞ。」

桑汰:「え?こいつらって?」

真夜斗:「目の前にいるだろう。俺たちが話しているにも関わらず、俺たちの会話を遮って話しかけてきた、クソ女どもの親だ。」

桑汰:「…ああ〜!こいつらか!…ねえ、兄ちゃん。こいつら今すぐ…」

紅葉:「ちょっと!さっきから私たちの娘をクソ女なんて呼んで!失礼じゃないの!!私たちが部屋に入ってきたときも、顎を使って無言で指示するなんて!失礼にも程があるわよ!!」

緋衣:「紅葉!少し落ち着け!」

紅葉:「落ち着けるわけないでしょう!高校生の分際で、私たちに指示するなんて!それだけで腹が立つのに!!」

緋衣:「紅葉!私たちは家に入れていただいた側なんだ!失礼なのは、今の紅葉の態度…」

桑汰:「…子どもが親に似るっていうの、ほんとだったんだ。ね、兄ちゃん?」

真夜斗:「…そうだな。桑汰、落ち着けよ?」

桑汰:「…ごめん、兄ちゃん。無理かも。」

桑汰はどこかへ歩いて行くと、日本刀を持って戻ってきた。

真夜斗:「お、おい桑汰…。いくらなんでもそれは…。」

桑汰:「え?兄ちゃんと喋ってるの、また邪魔されたんだよ?殺すに決まってるでしょ。」

真夜斗:「はぁ〜…。もう止められないな…。」

桑汰が日本刀を持って緋衣と紅葉に近づく。

緋衣:「ま、待ってくれ!すまなかった!謝るから許してくれ!」

桑汰:「あなたはあのクズ女を止めようとしてくれたから、痛くないように殺してあげる。」

緋衣:「ま、待ってく…うわぁぁぁぁぁああ!!!」

桑汰が緋衣の心臓に日本刀を突き刺した。

桑汰:「はは…!良い声じゃん!…次、お前な。」

紅葉:「ひっ!」

桑汰:「あんたは楽に逝かせてあげないから。」

数十分後、紅葉は限界だった。

紅葉:「も、もう…もうやめてください!」

桑汰は紅葉の四肢を切り落として、顔や体など、スレスレを何度もナイフで刺していた。

桑汰:「うーん…。もう飽きたなぁ…。」

紅葉:「(やっと終わる…!?解放される…!?)」

桑汰:「もういらないや。バイバイ。2度と生まれてこないでね。」

紅葉:「っ!や、やめ…!」

桑汰:「あ。頸動脈切っちゃった。もっと苦しんで死んでほしかったのにな〜。失敗しちゃった…。」

真夜斗:「…桑汰。こいつら、埋めに行くぞ。」

桑汰:「おっけー!あ。ごめんな、兄ちゃん。」

真夜斗:「…何が?」

桑汰:「こいつらの汚い血で部屋を汚しちゃったこと。ほんと、ごめん。」

真夜斗:「…また貼り直せばいい。気にするな。」

桑汰:「いつもありがと!大好きだよ!」

真夜斗:「ああ。俺もだ。」

桑汰:「じゃあ行こっか!」

真夜斗:「…ああ。(喧嘩では俺の方が強いが…イカれ具合は桑汰の方が圧倒的だな…。)」


数日後、あるニュースが報道された。

アナウンサー:「今日未明、〇〇県の山奥で男女2人の遺体が発見されました。鑑定の結果、他殺であることが判明しました。なお、被害者の顔が原型をとどめていなかったため、身元は不明とのことです。警察はこれから、殺人と死体遺棄の疑いで捜査を進めると発表しました。また、少しでも手がかりになりそうなものなどがあれば、捜査に協力してほしいと…」

真夜斗:「…桑汰。」

桑汰:「ん〜?何〜?」

真夜斗:「警察が俺たちを追ってくるかもしれない。もし、捕まりそうになったら…桑汰はどうしたい?」

桑汰:「え〜?決まってんじゃん!…─────。」

真夜斗:「…ふはっ!そうだなぁ?そうしよう。俺もそうしたい。」

桑汰:「じゃ、決まりな!」


さらに翌日、ある探偵から警察に通報が入った。

その内容は、『真夜斗と桑汰の家を特定してほしいと緋衣と紅葉に依頼されていたが、2人と連絡がつかなくなった』というものだった。

警察は真夜斗と桑汰を容疑者として、捜査を再開した。

一方その頃、真夜斗と桑汰は学校で授業を受けていた。

昼休みになり、真夜斗と桑汰は昼食を食べようとしていたが、スーツを着た大人2人がやって来た。

菊真:「真夜斗さんと桑汰さんはこのクラスにいますか?」

クラスメイト:「え。いや…えーっと…。」

正龍:「確か、髪の毛の色が珊瑚色だったと…あの2人じゃないですか?」

菊真:「聞いてみるか。…すみません。」

真夜斗:「…なんだ。」

菊真:「…君たちが真夜斗さんと桑汰さんですか?」

真夜斗:「俺たちに聞く前にお前らが名乗れ。勝手に教室に乗り込んできて、顔も知らない初対面の相手に名乗ると思っているのか?おめでたい頭だな。」

クラスメイト:「(うわ…。大人相手にもあの態度…。)」

クラスメイト:「(怖え…。)」

正龍:「貴様…!」

菊真:「待て、正龍。」

正龍:「っ!しかし…!」

菊真:「確かに、知らない相手にそう簡単に名乗るものではないな。こちらの配慮が足らなかった。私たちは刑事だ。私が松笠 菊真。」

正龍:「…俺が竜胆 正龍だ。」

2人が警察手帳を見せる。

クラスメイト:「(え!?警察!?)」

クラスメイト:「(とうとう木蔦兄弟が何かやらかしたのか…?)」

真夜斗:「はぁ…。お前らの言うとおり、俺が木蔦 真夜斗。こっちが俺の双子の弟、木蔦 桑汰だ。」

正龍:「っ!」

菊真:「やはり…。」

真夜斗:「それで?刑事2人が俺たちに何の用だ。」

菊真:「すみません。その質問には必ず答えるので、先に答えていただきたい。」

真夜斗:「…何だ。言ってみろ。」

菊真:「桑汰さんとも話してみたいのですが…難しそうですか?」

真夜斗:「…桑汰。」

桑汰:「…何。」

真夜斗:「お前の良い性格が台無しになっているぞ。喋ってやらないのか?」

桑汰:「…だってこいつら、警察なんでしょ?なんで警察なんかと喋らなきゃいけないの。」

真夜斗:「…だそうだ。諦めろ。」

クラスメイト:「(あのいつも明るい桑汰が…?)」

クラスメイト:「(桑汰のあんな様子、見たことねえ…。)」

正龍:「…菊真さん…。」

菊真:「………。(警察を嫌っているのか…?なぜ…?)」

真夜斗:「それよりも、刑事2人が俺たちに何の用だ。さっさと質問に答えろ。」

正龍:「(この圧倒的なプレッシャー…。本当に高校生か…?)」

菊真:「すまなかった。単刀直入に言わせてもらう。…君たち、人を殺していないか?」

クラスメイト:「(え…?)」

クラスメイト:「(今…なんて…?)」

クラスメイト:「(2人が人を…?)」

クラスメイト:「(殺したって…?)」

正龍:「菊真さん!それはさすがに直球すぎますよ!」

真夜斗:「…俺たちが人を殺したと?どうだろうなぁ?…桑汰。」

桑汰:「…おっけー。」

真夜斗と桑汰が窓に向かって走っていく。

正龍:「お、おい!!」

菊真:「君たち!!」

菊真と正龍が焦って声をかけるも、2人は4階の教室の窓から飛び降りてしまった。

クラスメイト:「きゃー!!」

菊真と正龍が窓の下を確認するも、2人の姿は既になかった。

正龍:「あいつらの体…どうなってんだ…。」

菊真:「正龍!応援を呼んでくれ!追うぞ!」

正龍:「っ!はい!」

その頃、真夜斗と桑汰は家に戻って来ていた。

しかし、緋衣と紅葉が雇った探偵から真夜斗たちの住所が警察に提供されていたため、真夜斗たちの家の前にはパトカー6台と白バイ5台の合計29名の警察官が来ていた。

真夜斗:「桑汰。警察官たちが家の前まで来てる。」

桑汰:「うん。全員殺す?」

真夜斗:「ああ。いけるな?」

桑汰:「当たり前。」

真夜斗と桑汰が家の前に現れる。

警察官:「っ!いたぞ!取り押さえろ!」

警察官:「はい!」

警察官29名が真夜斗と桑汰に向かっていった。

真夜斗:「遅い。」

桑汰:「もう〜…期待外れだな〜…。兄ちゃん、警察官ってこんなに弱いの?」

真夜斗:「そうなんじゃないか?」

桑汰:「まあ…俺たち、たかが高校生2人に全員殺られてるんだもんね!」

真夜斗:「…そうだな。」

警察官29名はたった2人の高校生によって、全員殺されてしまった。

警察官が2人と戦っている間、刑事2人が真夜斗たちについて調べていた。

正龍:「っ!これは!」

菊真:「何か分かったのか?」

正龍:「はい!この資料を見てください!」

菊真:「なっ!?」

正龍:「…あの子たち…相当な人生送ってますよ…。」

菊真:「…そうだな…。両親は生まれて間もない頃に死亡…。」

正龍:「3歳頃まで2人だけで過ごし、4歳になって木蔦組の組長に拾われる…。」

菊真:「しかし、10歳頃まで2人ともひどい虐待を受けており、10歳になった後、木蔦組が金を借りていた真夜斗と桑汰の両親を殺したことが判明…。」

正龍:「10歳の真夜斗が組長を拳銃で撃ち殺して、木蔦組の組長になり、実弟である桑汰を若頭にした…。酷いですね…。」

菊真:「その時、真夜斗は少年院送りにはならなかったのか?」

正龍:「虐待への正当防衛で処理されたみたいです。殺人で正当防衛って…相当な虐待を受けてたんですね…。」

菊真:「…だから桑汰は警察が嫌いなのか…!」

正龍:「助けを求められる人がいなくて…警察は役に立たないと感じていたから…?なんか…かわいそうですね…。」

菊真:「そうだな…。私はあの子たちを助けたい。正龍、手伝ってくれるか?」

正龍:「憧れの先輩の頼みとあらば、俺はついて行きますよ。」

菊真:「そうか…。助かるよ。ありがとう。」

正龍:「いえ。気にしないでください。」

菊真:「…とりあえず、あの2人の居場所を突き止めなければ。」

正龍:「そうですね。」

警察官:「失礼します!」

正龍:「どうした?」

警察官:「先ほど、容疑者の家に向かわせた警察官29名が全員殺されたと…!」

正龍:「なっ!?」

菊真:「…正龍。これ以上、あの子たちに罪を重ねさせてはいけない。」

正龍:「そうですね…なんだ?」

電話が鳴り始める。

菊真:「私が出よう。…もしもし?」

真夜斗:「木蔦真夜斗だ。」

菊真:「っ!」

真夜斗:「今日の23時に〇〇市にある廃工場に来い。時間厳守だぞ?では、また23時に。」

電話が切られる。

正龍:「相手、誰だったんですか!?」

菊真:「…真夜斗だった。今日の23時に〇〇市にある廃工場に来いと…。」

正龍:「…行くしかないですね。」

菊真:「ああ。」


そして、約束の23時になった。

警察は警察官を増員し、廃工場を包囲させ、代表で菊真と正龍が真夜斗と桑汰を探しに行くことになった。

正龍:「いないですね…。」

菊真:「こっちに行ってみよう。」


数十分後、正龍と菊真は、向かい合って立っている真夜斗と桑汰を発見した。

正龍:「いましたね!」

菊真:「ああ。ゆっくり近づくぞ。」

真夜斗:「…ククッ!来たぞ、桑汰。」

桑汰:「…ほんとだ。」

菊真:「君たち!今ならまだやり直せる!こっちに来なさい!」

正龍:「お前たちのことは調べさせてもらった!お前たちが大変だったとき、力になれなかった!本当に申し訳ない!」

桑汰:「ははっ!今更そんなこと、どうでもいい。謝る必要なんてない。だけど…やり直せる?笑わせんなよ。やり直したいなんて、これっぽっちも思ってない。俺は兄ちゃんと…真夜斗と一緒に過ごせたら…いれたら良かった!なのに…それなのに!あのクソ女たちは邪魔してきた!!だから殺した!文句ある?邪魔するんだから殺す。当たり前のことだろ!」

菊真:「それは違う。」

桑汰:「何も違わない!お前らみたいに幸せに生きてきた人間に、俺たちの気持ちを分かってもらおうなんて思わない。それに、お前らについていったら俺たちは離れ離れになる。そんなの…耐えられるわけないだろ!!」

桑汰が、胸元にある指輪がついたネックレスを握りしめる。

真夜斗:「もういい、桑汰。ほら、やるんだろ?」

桑汰:「…うん。」

真夜斗:「じゃあ、一緒に。」

桑汰:「うん。」

真夜斗と桑汰がお互いの目を見つめ、頷く。

正龍:「!」

菊真:「っ!やめなさい!!」

正龍:「やめろ!!」

真夜斗:「ずっと一緒だぞ?良いんだな?」

桑汰:「良いに決まってんじゃん!これからもよろしくね!兄ちゃん!!」

真夜斗:「ふっ!ああ。」

真夜斗は桑汰の心臓を銃で撃って、桑汰は真夜斗の頸動脈を掻っ切った。

菊真:「っ!」

正龍:「そ…んな…。」

刑事2人はショックで立ち尽くしてしまった。

そんな2人にまだ息がある真夜斗が話しかける。

真夜斗:「惨めだなぁ?いくら殺人鬼とはいえ、高校生2人が死んでいくのを止められないとは!お前らが俺たちを助けようとしていたこと、知っていたぞ?」

菊真:「っ!」

正龍:「…どうして…助けさせてくれなかった…。」

真夜斗:「…桑汰に聞いていた。もし、警察に捕まりそうになったらどうするか、と…。桑汰は言った。『決まってんじゃん!兄ちゃんと、真夜斗と一緒に死ぬ!』とな…。だから…兄として…その望みを叶えてやったまで…。そろそろ…お別れだな…。…兄として言う…。俺たちを…弟を助けようとしてくれて…ありがとう…。」

その言葉を最後に、真夜斗は息を引き取った。

正龍:「くっそ…!結局はただの…どこにでもいる…弟想いの兄貴だったってことかよ…!」

菊真:「…こんな…理不尽な事件が…2度と発生しないように…これからは…今まで以上に頑張りましょう…。」

正龍:「…はい…!」

真夜斗と桑汰の手はしっかりと繋がれ、それぞれのもう片方の手には、蔓日日草が握られていた。




蔓日日草の花言葉:共依存

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