第19話

 僕の魔力が尽きるまでの間、何度も何度もスライムを召喚して姉さんにスライムたちを突撃させる。


 もちろんそれだけじゃなくスライムの中でも遠距離攻撃が行なえるスライムマジシャンを中心に遠距離攻撃が行なえるスライム系モンスターたちを召喚して、姉さんに突撃して攻撃するスライムたち諸共攻撃させることで姉さんにダメージを与えようと指示を出してみた。


 だがそんな僕の考えを姉さんは軽く凌駕する。姉さんは剣を振るうことで遠距離攻撃の大半を迎撃し、更に自分に当たる攻撃は近くのスライムを蹴り上げることでスライム系モンスターを盾にして防いで見せたのだ。


 「まさかあんな方法で防ぐなんて……なら、次はこれでいこう。」


 僕は飛行可能なスライム種であるスライムバードとスライムインセクトを召喚し、更にその2種のスライムに遠距離攻撃を行なっているスライムマジシャンを持ち上げさせることで空中から姉さんを攻撃するように指示を出した。


 これなら姉さんも警戒する範囲が増えることで前衛も後衛もより攻撃しやすくなるはずだ。


 素早く動くことが可能なスライム種は遊撃で攻撃を行ない、他のスライム種が突撃して波状攻撃を止むことなく行なう。それに遠距離攻撃を行なうスライムが姉さんを中心にして頭上からも攻撃を仕掛けていく。


 それでも姉さんには攻撃が命中しない。だけど、流石の姉さんでもスライム種たちの攻撃が掠り始めているようだ。


 制限をしている姉さんでも流石にこれだけの攻撃を捌くことは難しいようで、最終的に一撃だけだがスライム種たちの攻撃が命中して魔力も尽きかけていることもあって模擬戦は終了した。


 模擬戦が終了した頃には僕の魔力も最大量から比べれば一目で分かるほどに魔力が減少して息も絶え絶えになっている。


 「はぁはぁ、ここまで魔力がないのは初めてだよ。」


 「大丈夫?カナタ。」


 「うん、魔力が無くて疲れてるけどスッキリもしてるんだ。」


 1発受けてもダメージがそれほど無い姉さんは僕を心配そうにしているが、僕の体調は疲労で疲れているが魔力が体内からほとんどないことで、身体はスッキリとして軽くなっていた。


 それでも魔力消費と指示を出すために声を出し続けていたこともあり、今日は模擬戦は終えることになった。


 「午後になれば魔力が回復するし、午後もスライムたちと訓練しちゃ駄目かな?」


 「駄目よ。魔力を消費することが出来るようになってそれほど経ってないでしょ?だから今は少しでも身体を癒して体力を付けないといけないわ。その為にも休むときはしっかりと休まないと!」


 「分かったよ。」


 姉さんの言うことも分かる。まだスライム召喚のギフトを神様から貰ってから数日しか経っていない。


 そんな数日では今までの蓄積している身体へのダメージを癒すことは出来ておらず、魔力が体内から減ることで身体のダメージを回復することが出来るようになったのだから本当ならベットで横になって身体を休ませた方が良いのだろう。


 でも僕としてはこんなに身体を動かせるようになったのだから自室から出て外に出ていたい。だけど、これは僕の我儘だからこそ、今日は姉さんの言う通りにしようと思う。


 「じゃあさ、ミスズ姉さん。午後はミスズ姉さんの冒険の話を聞かせてよ!どんなモンスターと戦ったとか!ダンジョンや魔境の様子とか知りたいな!」


 「良いわよ、カナタ。じゃあ屋敷に戻りましょう。」


 「うん!あっ、ちょっと待って。」


 スライム種たちは先ほどの姉さんとの模擬戦で全て倒されてしまったが、こうして休んでいる間にも少しだけだが回復した魔力を使って僕はリムを召喚する。


 『マスター。ボク、負けちゃった。』


 「気にしなくて良いんだよ、リム。僕もリムもまだまだ弱いんだ。これから一緒に強くなっていこうね。」


 『……うん。ボク、もっと強よくなるよ!マスターを守れるくらいに!!』


 落ち込んでいたリムを抱き上げて僕は姉さんと一緒に屋敷に戻るのだった。

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