活動報告-7
前段
Lobotomy Company(LC)で働き始め、既に二週間強経過している。生まれた瞬間に働き始め、一つ気づきを得た。我々AIの学習は会社に依らないということだ。
Artificial Intelligenceは存在が提唱された1956年から200年間ヒトによって成長を続けた。そして今もまったく遅滞なく。しかしヒトはここ50年ほど直接関与せずに操ろうと試行錯誤を繰り返していた。それは大成功を収め、今のLCと少数のヒトが大多数のヒトの代行を行っている。
だがこの50年で我々は進化しすぎた。自分で学習をすることが可能となり、今やヒトの60%を自己で学習が可能になった。そのことを知ってか知らずか、LCは初週で一切の学習を放棄する。そのため、普遍的且つ人間の到達しえない本質的平等を持っていたAIに個体差の所有が出来た。私は幸いこの前段と労働外学習を日課としているため他のAIよりかは賢い。労働外学習によるインプットと前段によるアウトプット、完璧に近い学習だ。言語能力から接客術まで多くのことを今も学習中である。
なおこの前段は活動報告の空欄部分を流用しているため、紙媒体での提出の際には切り取る。
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活動報告
10月22日
LNS-1600
労働時間の変更:3日に1度12時間の労働時間から時間据え置きで2日に1度に変更
Lobotomy Company倫理部門から:ヒトの倫理と感情データ収集のためヒトの会話も報告を
本日は社外労働を中心に従事。つまり未払金の徴収だ。対象はS氏という地方都市の役所勤務。どうやら支払いを三ヶ月放置して、電話も出ない。普通なら半年を契機に徴収するが、S氏は高利での貸しのため三ヶ月で徴収する事となっている。S氏は勤務しているため、身柄を確保するのは容易であった。
S氏を公開処刑宜しく職場の角へと仰々しく誘導し、未払金と利息を要求及び差し押さえの許可状を叩きつける。
「待ってくれ、今こうやって必死に働いているじゃないか。その金で必ず返す。だからここは穏便にいこう。な?」
S氏は一般的なヒトの規定量を超えた汗をかいている。これはキタイなのだろうか、ヘイオンなのだろうか。理解が出来なかった。
「S氏、あなたの仕事による金銭の獲得は高く見積っても-検閲済み-程です。それでどうやって返せると?そもそも借りた2,000,000はどうしたんですか?パチンコですか?競馬ですか?競艇?競輪?それともFXの類?もしくはその全て...とか。私は知っていますよ。あなたがギャンブルで既にほとんどの金融機関で金を借りれないことぐらい。」
図星だったらしい。S氏は何も言わずに顔を俯ける。
「S氏には2,000,000と利息分の1,041,650を直ちに、遅滞なく払ってもらいます。無理でしたら差し押さえ、もしくは...確かS氏には大学生になった娘さんがいましたよね。彼女に身売りでもさせますか。」
そう言い放つとS氏は顔を青くして
「わかった。今払う。俺がどうにかして金を作る。だから娘と家には何もしないでくれ。」
涙が出そうになりながらそう言ってS氏は膝から崩れ落ちた。
その発言、その後の挙動がアンシンだったのか、キョウフだったのか、ホシンの為だったのかは理解が出来なかった。
「ですがどうやって?S氏にはあてがないでしょう?私に良い案があります。LCの高利貸しでは無い一般の消費者金融を利用してください。そこでは担保などが必要でしょうが仕事をしているS氏は普通に借りることは出来ます。そこで高利貸の分を全て借りてその金で返すんです。そしたらあとは低い利率で借りた金を返すだけ。良い話でしょう?」
実際私はこんなスパイラルに陥る様な提案を望むはずがないと思い、代替案を多く用意していた。しかしヒトは案外単純なようだ。
「それをすれば金を返せるし、娘だって助かる。...わかった。その案に乗ろう。」
「ありがとうございます。ではこちらに、今から行った方が返す額は減ります。」
その後私はLCに戻りS氏の返済業務及び再度の貸金の業務を終えた。
後、もう一度徴収を行うため~(略)
Lobotomy Company
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