私の願い事
@Hanako77
第1話 祖父
私はおじいちゃん子だ。祖父は私が小学一年生のとき天国へ行った。それまではずっと一緒にいた。
両親は共働きで、私が幼稚園生だったころ同居している祖父母と長い時間を共に過ごした。私はいつも居間の端にある白い椅子に、ちゃんと座らず左のひじ掛けに頭を右のひじ掛けに足をのせて横になっていた。祖父は白い座椅子に座って二人でテレビを見ていた。
私は祖父の事が大好きで、隣にいるのが心地よかった。正直、何を話していたかはよく覚えていない。どんな声だったかも覚えていない。なんせ祖父が天国に行ってから十年以上もたっているからだ。けれど祖父のにおいはなぜか覚えている。ミントガムのようなすきっりとしたにおい。後から知ったことだが、祖父が使っていた整髪料のにおいだったらしい。私は今でもそのにおいが好きだ。
祖父は免許を持っていたので、よく祖母のペン習字へ習いに行くとき教会まで一緒に車に乗り送迎していた。祖母を教会で降ろして家への帰路で前方に白バイが走っていた。祖父はいたずらにその白バイを追いかけた。そのとき私は謎にワクワクしていた。またある日、祖父母が住む一階の居間のこたつで母と横になっていると、祖父が熱湯が注いである湯呑を持ってきた。祖父は私にその熱いお湯を飲むように言った。私は熱いと知らなかったのでそのまま飲んだ。案の定、私は舌をやけどした。私は腹の底から怒りが湧いてきてその時だけ祖父をとても恨んだ。しかし、大人になったいま振り返ると舌をやけどすることは祖父の件以降何度もあったので、祖父は私に初めてを経験させてくれたのかなときれいごとに収めようと思った。
祖父は金魚とドジョウを飼っていた。ある日私はその金魚の小さい粒の餌を食べてしまった。理由はたぶん味を知りたかったからだと思う。それを祖父母に伝えると確か笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます