兄(2)
父親が離れの戸を開けた。
そこに居たのは……妹だった。
本当の妹でない事は……今知ったばかりだった。
祖父も父も叔父達も、妹を見て驚愕していた。
何が起きているのか?
判らない。
それが……俺が家族から見放された原因だった。
スーパーカーと盲目の運転手の組合せ。
それが、この呪術者の家系の中での「俺」だった。
小さい頃は、父も祖父も、俺を一族の希望と見做してくれた。
だが、いつしか、父や祖父や……「沼田のおじさん」を除いた叔父達が俺を見る目に……失望の色が濃くなっていった。
一族の歴史上、類を見ないほどの霊力と……ほぼゼロの霊感を合わせ持った者。
それが俺だった。
判るのは、妹が何かとんでもない力を持っているらしい事と……その力がどの程度で、その力の正体が何なのか、俺には多分一生理解出来ない事。
「何て事だ。どうする……?」
父は、叔父達と祖父に問う。
「神や仏が本当に居るのなら……」
祖父の口から出たのは、子供心にも呪術者の家系とは思えぬ言葉だった。
「我が一族への嫌がらせが、余程、お好きらしいな……」
冗談めかした台詞だったが、口調は絶望的だった。
「女は一族の当主には成れん。それが掟だ」
「だが……どうする。これだけの力、ちゃんと修行させねば……」
後になって知った事だが、呪術者・魔法使い・心霊能力者……呼び名は何でもいいが、その手のモノのなれる素質の持ち主の中でも、更に天才的な才能を下手に持ってしまった者は、何もしなければ自滅してしまう事が多いらしい。
異界の魔物や悪霊に魅入られてしまうか……力を暴走させてしまうか……ともかく、力を制御出来るようにするか、さもなくば、力を封じねば、そいつ1人が死ぬだけならまだマシで、そいつの自滅的な死に伴なって、辺り一帯が俗に言う「心霊スポット」「魔法汚染地帯」と化してしまうらしい。
それも、そこそこ以上の腕の術者が何人も協力して何日もかけて、ようやく「浄化」出来るような
だが、俺がそれを知ったのは、ずっと後の事だった。
多分、その事を誰かが教えてくれていれば……。
いや、多分、この時が俺の人生を決定的に悪い方に変えてしまった瞬間だった。
いつ折れてもおかしくなかった俺の心に、最後の一撃が加えられたのだ。
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