実力バレしたらSS級美少女たちから惚れられた件

夜空 星龍

天内瑠美が惚れた日

第1話 

 今日は俺の好きな漫画のヒロインのフィギュアがUFOキャッチャーの景品として登場する日だった。

 だから、俺は開店直後のゲームセンターにやって来ていた。

 今日は土曜日なので開店直後じゃないとなくなってしまう可能性があるからだ。

 俺が今日取ろうとしているフィギュアはそれくらい人気のキャラクターだった。

 お金を二千円分だけ両替して俺は目的のフィギュアが設置されているUFOキャッチャーを探した。


「お、あった。あった」


 さすがに開店直後なので、まだ一つも取られていなかった。

 

「それにしてもエロいな」


 フィギュアは原作の服装を忠実に再現していた。

 胸元は谷間を見せつけるように大胆に開いているし、スカートの長さも太ももが見えるほど短いのも原作そのままだった。

 原作ではこのヒロインは主人公を誘惑するエロギャルだった。

 

「さて、取りますか」


 目標は五百円以内。

 久しぶりのゲームセンターでUFOキャッチャーだからもう少しかかるかもしれないけど、そう思いながら俺は百円目を投入した。

 中学生の時に何百個と景品を取ったので取り方は覚えている。

 ただ、久しぶりなので感覚を取り戻さないといけないかもしれない。

 そう思っていたけど、案外、体は覚えているもので狙い通りに箱を動かすことができた。

 

「この感じなら五百円以内に取れそうだな」


 その後も狙い通りに箱を動かすことができて、俺はフィギュアを五百円以内に取ることに成功した。


「よし。今日の目的は達成だな」


 俺はフィギュアをトートバックの中に入れた。

 今日の目的を達成したのでもうゲームセンターには用はなかった。

 中学生の頃は放課後や休日に格ゲーをやったり、音ゲーをやったり、いろんなゲームをして一日を潰していたが、今はゲームセンターにあまり来なくなった。 

 来なくなった理由は簡単。

 飽きてしまったからだ。

 いろんなゲームを極めてしまって、数々の記録を残した俺はゲームそのものに飽きてしまった。

 だから、ゲームセンターに足を運ばなくなった。

 

「さて、帰るか」


 他に欲しい景品も特にないし、早く家に帰ってフィギュアを棚に飾りたかった。

 そう思ってゲームセンターから帰ろうとした時だった。

 とあるUFOキャッチャーの前で大学生らしき男三人に見覚えのある女子が囲まれている場面に遭遇したのは。

 

「なぁ、そのぬいぐるみを取ってやるから、俺たちと遊ぼうぜ」

「・・・・・・」

「何も言わないってことはOKってことでいいんだよな?」

「・・・・・・」


 大学生らしき男三人に囲まれた見覚えのある女子の名前は天内瑠美あまないるみ

 天内は俺のクラスメイトで学年一の美少女と呼ばれるほど可愛い容姿をしている。

 ザ・優等生という言葉がよく似合うほど優等生でゲームセンターに来るようなやつではないと思っていたから少しだけ驚いしていた。


(まさか天内がゲームセンターにいるとはな)


 そして、天内の私服姿は初めてみた。

 これまた、ザ・清楚という言葉がよく似合うほど清楚な服を天内は着ていた。

 天内が着ていたのは夏らしい真っ白なワンピースだった。


(さて、どうすっかな?)


 このラブコメみたいな展開をどうしようかと俺は考えていた。

 学校での俺のキャラは、ぼっちな陰キャだ。

 そんなやつがいきなり助けたらどう思われるだろうか。

 俺の学校でのキャラが崩壊してしまうだろうか。


(まぁ、そんなことはどうでもいいか)


 目の前で困っているクラスメイトがいるのに無視できるほど俺は非情な人間ではない。

 

「よ〜し! じゃあ、カッコいいところを見せちゃおうかな!」 

 

 三人のうち茶髪の男がそう言ってUFOキャッチャーにお金を入れようとしたところで、俺は天内に声をかけた。


「瑠美。お待たせ。この人たち誰?」

「えっ・・・・・・」

 

 当然、天内は困惑していた。

 突然、彼氏のふりをした知らない男が乱入してきたら困惑するに決まっている。

 俺だって、いきなり知らない女性がそんなことを言って現れたら困惑する。

 しかも、今の俺は学校での陰キャモードの俺ではなくオフモードの俺だから、きっと俺が神崎海斗かんざきかいとだってことに気がついていないはずだ。


「とりあえず、俺に話を合わせて」


 俺は天内の耳元でそう言った。

 天内は困惑した表情を浮かべながらもコクっと頷いた。

 

「あんたたち誰? 俺の彼女に何か用?」


 そう言って俺は天内の肩を抱き寄せた。


「お前こそ誰だよ!? 急に現れて彼氏面なんてすんじゃねぇよ!」

「彼氏面って、俺は彼女の彼氏ですけど? 彼氏なんだから彼氏面したっていいですよね?」

「ちっ! だったら証拠を見せろよ! お前らが付き合ってるって証拠を!」

  

 茶髪の男が舌打ちをしてそう言った。


「無茶苦茶だな」


 付き合っている証拠を見せろと言われても、当たり前だが付き合っていることを証明するのは難しい。

 キスをすればいいのか? 

 手を繋げばいいのか? 

 おっぱいを揉めばいいのか?

 何をすれば付き合っている証拠なる?

 そもそも俺と天内は付き合っているわけではないから、そのどれもできないわけだけど。

  

「本当にお前らが付き合ってるなら、今ここでキスをしろよ! そうしたら、お前らが付き合ってるって認めてやるよ!」

「別にお前らに認めてもらわなくてもいいんだけどな。俺と瑠美が付き合ってるのは事実なんだから」

「うっせぇ! キスするまで認めねぇからな!?」


 茶髪の男はどうしても俺たちが付き合っているということを認めたくはないらしい。

 俺は天内のことを見た。


(キスなんてできるわけねぇよな)


 俺なんかが学年一の美少女の唇を奪っていいわけがない。

 とりあえず、何とか話を変えてこの場から立ち去るか。


「するわけねぇだろ。お前らに可愛い瑠美のキス顔を見せるわけねぇよ。じゃあな。俺たちは行くわ」


 俺は天内の手を掴んでこの場から立ち去ろうとした。


「おい! 待てよ! 何勝手に立ち去ろうとしてんだよ!」


 正面に茶髪の男、右に金髪の男、左にロン毛の男と囲まれてしまった。

 

「ほら、早くキスしろよ! お前らカップルなんだろ!」

「だから……んっ!?」

 

 やるわけないって言おうとしたら俺の口は塞がれた。 

 柔らかくて、ぷるぷるとした天内の唇によって。


☆☆☆

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