第35話 別れたかった人
私は、別れに向かうために少しずつ彼に冷たい態度をとった。
でも、彼は何だかんだ言いながら家にやってきた。
やっぱり、その時が来ないと別れられないのか…
私の記憶では、私が会社の飲み会に行った日に
今から来ると連絡をして来て、その日に別れた気がする。
その日を待つしかなかった…
それから、会社の取引先の人との飲み会を同僚の人がセッティングした。
前もって分かっていたから、二男は兄嫁に頼んだ。
その頃、賃貸の家に引っ越していた兄嫁は、何かと私を誘って来ていた。
「家に泊まりにおいで」とよく言ってくれていたし
泊まって一緒に夜中までホラー映画を見たり私に何かあると、二男を泊まらせてくれていた。
その飲み会も早くから分かっていたから、頼んでみたら快く引き受けてくれた。
その頃、兄の借金問題があったからか…
私が元夫と別れたからなのか…兄嫁は優しくなっていた。
それから暫くして…
ついに、その日はやってきた…
二男は学校が終わってから、兄嫁が迎えに来て連れて行ってくれていたので安心だった。
兄嫁は
「飲み会が終わったら連絡して、迎えに行くよ」
と言ってくれたが…
「いや、今日彼が来るかもしれないから明日行くよ」
と言った。
本当は来るとも言われてなかったけれど…
私の記憶では、この日なのだ…
私は飲み会でも気が気ではなかったけれど
とにかく…彼からの連絡を待つしかなかった。
私はいつも飲み会に行っても、楽しめなくなるからメールしたり
メールに返事をすることはないのだが…
その日は、メールを気にしてしまった…
同僚が「どうしたの?何かあるの?」
と気にするくらいに…
私は願った…
「今日でありますように…」
それから、酔いも回って来てだんだんどうでもよくなって来た頃…
彼から「今から家に行くよ」とメールが来た。
「迎えに来てくれる?」
と返事をしたが
「いや、今日は行けない」
と返事が来た。
1回目の人生の時は、なんで迎えに来てくれないんだろうと思った。
やっぱり今日だ…
ま、急いで帰らなくてもいいか…
そう思い、楽しんでから帰ることにした。
飲み会がお開きになってから、私はタクシーで帰った。
彼には合い鍵を渡していたから、家に帰ると彼は、私を待っていた。
「別れたい」
と言って来たから
私は、待ってました…と思いながらも
「なんで?」と言った。
「やりたいことが出来たから、もうあまり来れなくなると思うし」
「やりたいことって?」
「ドラム」
「来てほしいと誘われたから」
彼は小さい頃からドラムをやっていてバンドを組んでいたこともあったけど
解散したらしく、入れる場所を探していた。
「そうなんだ、良かったね。私も、このまま付き合ってもよくないと思っていたから…いいよ」
と言った後
「でも、そのスポーツバッグは返して」と言った。
彼は、荷物をまとめていたのはいいが
勝手に、長男のスポーツバッグに詰めていたのだ…
「そのスポーツバッグは長男の物だから」
と言うと…
彼は慌てて詰めた物を出して、どうしよう?という顔をしていたので
私は、「これに入れたら」と紙袋を出した。
マジでクズな男…
彼が紙袋に詰め替えた後
「じゃ、元気で」
「うん、そっちもね」
と言葉を交わして彼は出て行った。
私は…
これからも運転気を付けてね…と心でつぶやいた。
やっと、別れられた…
もう少し、あともう少し…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます