第26話 変わっていく元夫

元夫は、毎晩遅くまでフラフラしていた。

それはいつもと変わらないのだが…

刑務所で知り合った友達と、その彼女が

一緒に遊びに来たり、そんな日もあった。

その彼女は、隣の県の子で…

慕って来たので、その彼女とは、たまにメールしたり電話したりしていた。

ちょっと変わった子だったから

正直、軽くあしらっている感じだった。


ある日、その彼女から電話があった。

「お姉ちゃん。私ね、お姉ちゃんに言わないとけないことがある」

ためらいながら、彼女は話し始めた。

「実はお兄ちゃん(元夫)が話があると言って会いに来た。それで、ホテルに連れて行かれて薬を打たれた。それで関係を持ってしまった。お姉ちゃん、本当にごめんね」

衝撃的だった…

元夫は、前の事件の時は友達の奥さんの家に行っていたし

怪しかったけど…

それまでは、女遊びをしたことが無かった。

クズだけど、マメだし覚せい剤をしても

女に狂うことは無かった…


元夫に彼女から電話があったことを話すと

「あの娘はおかしいし、構って欲しいから嘘を言ってるんだろ。本気で聞かなくていいよ」

と言った。

1回目の人生の時は、

確かにおかしい娘だったので…

その言葉を信じてしまった。


でも、おそらく本当のことだったんだろう…

その後は、二人の関係が続いている感じは無かった。


それから元夫は、朝になっても帰って来ていないということが増えて行った。

元夫は朝帰りをすることはなく、夜中に帰って来ることが多かった。

私は、疲れて先に寝てしまうのだが

夜中に目が覚めて、元夫がいなかったら

そこから眠れなくなってしまう。

赤い目をして会社に行くことも…

次の日、会社から帰っても元夫は帰っていなかったことも…


この頃、私は捜査員の人に元夫が帰って来ないと、電話をして相談したりしていた。

元夫が出所してから連絡は取りあっていたようなので

「自分からも連絡をしてみる」

と言ってくれ、色々と話を聞いてくれた。


元夫が帰って来た時に問い詰めてみると

「知り合いに頼まれて友達の母子家庭の妹家族の面倒を見ている。変な関係ではない」と私に話した。

そんな話はデタラメなのは知ってるよ…

と思いながら話を聞いて信じた振りをしていた。

1度目の人生は、本当に信じていたのかもしれない…


それから、ある夜

知り合いの奥さんから電話があって

「元夫が誰かと揉めて警察署に連れて行かれたけど、飲んでいて暴れそうだから、従業員に運転させて家に帰すね」

そう言ってくれた。

尿検査はされなかったようだった。

とりあえず、マンションの下に車を停めて貰った。

元夫は、酔っ払っていて睡眠薬も一緒に飲んでいるようだった。

話もできる状態ではない。

そのまま、寝かせた。


翌朝、奥さんにお礼の電話を入れると

「あれは、覚せい剤やってるね。匂いがすごかったよ」

と言われた。

分かってます。と思いながら…

知らない振りをした。


マンションの下に停めて貰ったけれど、邪魔になるので、車を動かすのに

元夫の友達に来て貰って、駐車場まで動かして貰ったが、その時の彼の様子があまりにもいつもと違っていた。

覚せい剤を効かせていたのだろう。

元夫には、そんな型がなく分かりにくい。

でもウロウロするのが、元夫の型なんだろうと捜査員の人が言っていたのを思い出した。


元夫は、何も知らず眠っていた…

でも、目を覚ましてから起こることを

私は知っている…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る