第22話 謎の男

元夫が逮捕されて、困ったことが二男をお風呂に入れることだった。


私が二男をお風呂に入れて長男が受け取ってくれ、タオルで拭いておむつをし、服を着せてくれた。

ミルクをあげたり、おむつを替えたり

買い物にいく間、見ていてくれたり、たまにはお風呂も入れてくれた。

長男には、本当に助けられた。


元夫は、覚せい剤だけではなくカードの窃盗の容疑もあって、長くなるかもしれないと言われていた。

長男に「お父さん、3年くらいかかるらしい」

と伝えると

「3年なんて、すぐじゃん」

と、あっさり言われた。

私は拍子抜けした。

長男にとっては、どんなお父さんでも尊敬する父なのだ…


前回の人生では、待てるかどうか不安だったから、マジで長男の言葉に救われた…

でも、今回は迷っている場合ではない。

何年だろうが、待つしかないのだ。


元夫が逮捕されて何かあったら、あの捜査員の人に連絡するように言われていたので連絡をした。

それから、変化があったら私から連絡をしたり、向こうからも、時々連絡をくれるようになった。

これがきっかけで、これから先も彼は心の支えとなってくれる。


元夫の接見禁止がとけて面会に行くようになった時、元夫から弁護士を頼みたいから知り合いに会って、お金を貸してと頼んで欲しいと言われた。

その知り合いは私も会ったことがある人だった。


帰ってすぐ連絡をすると翌日には家に来てくれた。

元夫が言った通りにお金を貸して欲しいと伝えると

「何の見返りもなく出来ない。元夫に内緒で自分の女になれ。

自分なら綺麗に着飾らせ大事にする。考えてみてくれ」

と言われた。

その人には病気の奥さんもいる。

奥さんとは会ったこともあるし…

よくして貰った…

そんなことできるわけない。

私はそんなに安い女に見えるのか…

と怒りさえ感じていた。

いくら元夫のためとはいえ、好きでもない人の女になるなんて私は無理…


翌日、面会に行って

泣きながら言われたことをすべて話した。

元夫は

「そんなことはしなくてもいい。弁護士は国選弁護人にしよう」

と言ってくれたから、すぐ連絡して、断った。

でも、思ったよりあっさりと了承した。


弁護士は当番弁護士に頼んだ。

すると、その弁護士はなりたてで、しかも刑事事件は初めてという人だった。

すごく不安だったけれど、初めてながら

色々調べて、カードの弁済の話をつけてくれたり、頑張ってやってくれた。


裁判は、二男も連れて行った。

情状証人としても出廷した。

それを見た裁判官が、ひどく同情して声をかけてくれた。

カードの被害弁償の話もついていたし…

求刑は思ったより重くなく2年半だった。


その裁判に、女になれと言った知り合いが傍聴しに来ていた。

何で来るの?

何をしでかすか分からない…

私は不安でしょうがなかった。

しかし、私はこの男が

私にしてくることを知っているから大丈夫…


判決は2年だった。

これから、また待つ生活が始まる。

やりきるしかない。

不安はいっぱいだったが

着々と「あの人」に会える日は近づいている。


そんな風に強く誓っていた私に

親友が連絡して来た…

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