第22話 ホームルーム

「龍田母さん……って凄い苗字だね」

「そうなのゴツいというか野暮ったいの、よければ春姫と呼んでくれるかしら?」


「スタイルいいね何してるの?」

「適度な睡眠と運動ね。まあハーフだからというのもあると思うわ」

「趣味とかある?」


「ファッションとか、スポーツ、あとゲームとか」

「ディスコでモン狩りとたか森やってたよね好きなの?」

「結構好きかな。私体動かすの好きだからアクション系とまったり系両方好きなんだよね」


「総代ってことは入試トップだったんだよね? 塾どこいってたの?」

「予備校かな。解放感で春休みは勉強ロクにしてなかった」


 教室でイケイケな男女の笑い声がさざめいた。

 この場の空気を掌握しているのは、僕の義姉 龍田母春姫だった。


 LIMEやディスコでの繋がりがあったとは言えど、入学一日目にしてクラスカーストの頂点に登り詰めるその手腕には舌を巻く。


 容姿、知名度、コミュ力の三拍子が揃った女の子が人気にならない訳はない。

 きっと春姫の転職はアイドルかキャバ嬢、配信者当たりだろう。


 そしてあの勉強量で「春休みは勉強ロクにしてなかった」と謙遜なしで言えるのなら、凄いと思う。

 受験後直ぐじゃなかったら耐えられなかった。


「……岩野いわのであってるよな?」


 自信なさげに話しかけて来たのは、いかにも高校デビューをかましました。と言わんばかりに漂白された色素の薄い頭髪をした軽薄そうな男子だった。


 不慣れなのか金髪に近い程脱色してしまっている。 

 何と言うか素材は悪くないのに、調理と調味で素材の良さを殺してると表現したくなる。


(春休み期間中に、練習で脱色を試さなかったのだろうか?)


「合ってる。それで俺に何か用かな? ……えーっと……」


 まだ顔と名前が一致するほど、時間が経過してはいなかった。


(さてどう乗り切るか……)


 と思案していると……


「オレは友崎ともざき友崎友也ともざきトモヤ。顔と名前が一致してないよな……LIMEで顔晒してるやつも加工アプリやらで盛りまくりで、誰が誰か元の顔知らないと分かんねーもんな」


 と笑みを浮かべフォローしてくれる。


(いい奴だな……)


友崎ともざきかトモヤでいいぜ」


 嫌味の笑顔で僕に握手を求めてくる。


(距離の詰め方エグイんだけど……コレが本物の陽キャか……勉強が出来てオマケに陽キャとか強すぎる。しかもいきなり下の名前で呼べとかハードル高すぎるだろ……ハードルが高すぎてリンボーダンスすることもなく余裕で素通り出来そうだよ……)


「僕は岩野勇気、好きに呼んでくれ取り敢えず友崎ともざきって呼ばせてもらうよ」


 僕は友崎ともざきの手を握り返す。


 少し硬い言い方をしてしまったと内心後悔していたが友崎ともざき、は気にも留めていないようでカラカラと眩しい笑顔を浮かべている。


(流石リア充……オタクの僕とはまるで別の生き物みたいだ……)


「オッケーオレは勇気ってよばせてもらうわ。いやー有名人と友達になれてオレは嬉しいぜ」


「有名人?」


「そりゃそうだろ、あの竜蛇母たつだもさんがLIMEに招待し男なんだからな。みんな気になってるのさ」


「ああ……」


 つい吐息のように言葉が漏れたが、「やっぱりそれだったんだ……」と言う言葉だけは飲み込んだ。

 

「それに便利なSNSまで作って管理してくれさ、学年全員が感謝してるんだ」


「なんだか恥ずかしいな……」


「で、竜蛇母たつだもさんとはどんな関係なんだ? 中学校とか?」


 少し喋っただけの直観に過ぎないが、友崎ともざきは悪いやつじゃないと思う。それに僕達が義理の姉弟であることを初めから隠すつもりはなかった。


「義理の姉弟なんだよ」


 隠すことでもないし、聞き耳を立てて居いれば聞こえるだろうぐらいの声で話す。

 元々、家族で話し合っていたので想定の範囲内だ。


「なるほど……黙っておいた方がいいか?」


「それに学校への登録は龍田母じゃなくて岩野だし……」


「そうみたいだな……」


 向こうからも誤解を解くためか、「姉弟」とか「再婚」とかそういう言葉が漏れ聞こえてくる。


(面倒ごとが増えないといいけど……まあ無理だろうな……春姫さん美人で目立つからなぁ)


「僕としては友崎ともざきぐらいグイグイ来てくれると正直助かるよ」


 僕は照れ笑いしながらそういった。

 この言葉に嘘、偽りはない。

 元々積極的に話に行くような社交的な性格ではないので、こういう風にグイグイ引っ張ってくれるような奴といると気楽でいい。


「オレもそう言ってもらえると助かる」


 僕達の様子を窺っていた数人の男女が僕の机の周囲に集まりだす。

 

「俺も自己紹介いいかな?」


「あ、ずるい私も、私も!」


 身動きが出来なくるほどに俺の周囲を人が囲む。

 その様子はさながら、人の石垣のようだ。

 だけどこの現状は僕の人気ではない。


 全ては春妃ハルヒメさんの御威光によるものなんだ。と自分に強く言い聞かせる。

 そうでもしないとイタい勘違い野郎になってしまいそうだから。


 僕は春姫さんが手招きしているのが見えた。

 それに応じて歩みを進める。


「うちのクラスの子達に義弟を紹介しておこうと思ってね……」


 僕は理解した。

 これは春姫さんの作戦であると、大方僕をクラスの輪に入れつつ知名度を上昇させてリア充グループ入りをしやすくしてくれているのだろう。


 そんな僕達姉弟をクラスの女子はキャーキャーと喚き、男子達からは羨ましそうなそれでいて哀れみの籠った視線を向けられた。


 これはどうやってもボッチルートは回避できそうだ。と確信した。

 登校二日目にして、早くも僕のクラスでの立ち位置が決まった瞬間だった。


 そんなことんなもあって一応クラスには打ち解けることが出来た。







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