#003 能力測定とオーラ

「それではコチラの宝玉に手をかざしてください。大まかな魔力特性や職業適性がわかります」

「…………」


 占いの水晶玉? 異世界版DNA検査みたいなものか??


「おっ、なんか面白そうだな!」

「ハハッ! 測定不能で爆発させてやるぜ!!」


 いい気なものだ。俺からすれば不審極まりないのだが…………ここで下手に抗って(実在するかは知らないが)爆弾付きの首輪でもかけられたら堪ったものじゃない。しばらくは従順なフリをしてやり過ごし、充分な情報が集まったら改めて身の振りを考えよう。


「ではコチラに」

「あ、あぁ」

「「…………」」

「なるほど、わかりました。もう大丈夫ですよ」

「……そう、ですか」


 結果は見せてもらえないようだ。とはいえ、何となくだがこの水晶のカラクリは理解できている。これが魔力なのかは知らないが…………例えるならオーラだろうか? この世界にきて様々なものから発せられる色や強さ、あとは方向性などが知覚できるようになった。この水晶はオーラを可視化する道具で、その結果をもって魔力特性や職業適性を推測するのだろう。


「え? もう終わり??」

「ねぇ、結果はどうだったの?」

「それは、詳しい分析が終わってから改めて」

「それでは勇者たちよ! 宴の準備をさせているので、まずは部屋で……。……」


 結果を言わないのは危険因子を穏便に排除するためでもあるのだろう。ギフトとやらが有益で制御できるものとは限らない。たとえば無差別に禍を振りまくものや、(魔物ではなく)対人特化の能力。権力者としては人心を掌握するなどの能力者も嫌うかもしれない。


 そういった相手はギフトを使いこなす前に、それこそ酒に酔わせて今夜にでも排除しておきたいはずだ。


「ねぇ、私は春日 百代かすが ももよ、モモでいいよ。名前、聞いてもいい?」

「え? あ、あぁ、神楽 公平かぐら こうへいだ。神楽で頼む、"春日さん"」


 兵士のオーラを見比べていたら、いかにもバカそうな召喚勇者が絡んできた。コイツ、この危機的状況を理解していないのか、あるいは寄生する有力者を見極めようとしているのか。


「あぁ、1つ言い忘れていた。名前にかんしてだが……。……」


 極めて不愉快だが、この国で家名を名乗れるのは貴族だけらしく、それ以外にもこの国流の名前でないと何かと不都合らしく、呼び名は名前固定、しかも発音も違うものに変更されてしまった。


「エヘヘ~。よろしくね、コウヘー君!」

「…………」




 あるいは頭の中までピンクな、ただのビッチなのか。

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