俺はクズだが悪事は許さない!~呪いの勇者は世界を破壊し、世界を救う~
行記(yuki)
#001 プロローグ 意地と代償
鳴り響くクラクション。目の前の高級車の運転席では、俺よりも若く、それでいて見るからにバカそうな男が怒り狂っている。
「おい聞こえてんのかそ、この原付! ドケってんだよ!!」
ここは一方通行で、相手は悪びれる事もなく堂々と逆走している。道を譲るのは簡単だが、それではこの悪を見過ごす事になる。
「見えないのか? ここは一方通行だ」
「はぁ!? おっさんバカなの? そういう問題じゃねぇんだよ! 貧乏人の原付がイキってないで、早くどけっ!!」
俺はたしかにフリーターだが、そこまで歳はとっていないし、まず間違いなく学歴も俺の方が上だろう。
自慢じゃないが俺は優秀で、何をするにも人並み以上に出来た。大学も一流と呼べるところに行ったし、大手企業にも就職した。したのだが…………結局職場の人間関係が噛み合わずに辞めてしまった。思い返せば学生時代もそうだった。俺は目つきが悪く人付き合いが苦手で、おまけに融通もきかない。だからこういう時は無駄に張り合ってしまい、空気を悪くしてしまう。
「通報してもいいんだぞ?」
「はぁ? 何様だよオマエ。正義の味方にでもなったつもりか!?」
正義の味方? 悪いが俺はそんな綺麗なものでは無い。ボランティアとか皆のためにってのは真っ平御免。バイト先の挨拶ですら苦虫を噛み潰しながら渋々発している。
しかしそれと同時に、不正を野放しにするのは許せない。悪いヤツが裁かれればスッキリするし…………いや、司法の裁きもアテにはならない。こういう害虫は殺してしまうのが1番。大きな罪は犯していないというのなら、最低でも性器を切り落として子孫を残せない様にしておくべきだろう。
「チッ。(バイトの)時間か……。この(録画)データは、後で警察に届けるからな」
「はぁ!? ザッケンナこらぁ!!」
バイトさえなければ警察が来るまで張り合ったのだが、残念ながら今は時給で働くしがない非正規労働者。いくら大義名分があっても出勤しなくては給料はもらえない。
「今は規制が厳しくなって、現行犯じゃなくても証拠があれば裁けるんだ。まぁ、せいぜい震えて眠ってくれ」
不完全燃焼ではあるが、俺は車の脇を……。
「調子乗りやがって、このクソがッ!!」
コイツ、完全にブツけに来やがった。ビビッて必死に避けると思ったのだろうが…………原付と高級車、そして過失割合を考えれば確実にわりにあわない、実に短絡的な考えだ。
それならいっそ!
「上等だッ」
俺は回避行動を放棄して、真っすぐブツかって…………死んだ
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