曇らせはいいぞぉ!!(歓喜)

@isorisiru

掛け合いセリフ「手元に残ったプレゼント」

登場人物

男 かなりやつれた、体調の悪そうな男。(途中タバコを吸う描写があります)

女 男の彼女だった女。訳あって男との待ち合わせをしている。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

男「…おはよう、久しぶりだね。」


女「えぇ、本当に久しぶり。…もう、また痩せたんじゃないの?」


男「…やっぱり、君には分かるのかな。ずっと一緒にいた時から、君はそう言うのによく気づいていたから。」


女「当然よ、あなたのことが大好きだったんだから。体調は大丈夫なの?」


男「嗚呼、心配しないでほしい。これでもしっかり働いてはいる。…まだ少し、引き

摺ってはいるけどね」


女「…もう。そういう女々しい所は、変わってないのね。

あ、こら。タバコまだやめてないの?」


男「っふぅ。ん、これか。結局これも君がいなくなってからまた始まっちゃったんだ。」


女「アレだけ頑張って禁煙してやめたのに、本当にバカみたい」


男「それだけ君に全てを預けてたって訳さ、僕がこうなったのも君の責任さ。」


女「…」


男「正直言って疑わなかったさ、君の愛は永遠だって。君はずっと僕の横にいてくれて、僕を優しく包み込んでくれると思ってた。」


女「私だって感じてた!あなたからの鬱陶しいくらいに愛らしい情熱を。家路に着くあなたを出迎えて温かい夕食を出す、そんな平凡で幸福な世界があると思ってた!」


男「でもそれも期限のある愛だった、お互い一方的に注ぐ愛だった、お互いの心を通わせて、今を生きるエネルギーを作るだけだったんだ」


女「違う!アレは正真正銘、未来を築くための愛情だった!」


男「っふぅ…現に君は笑うだろうが、君にやってあげられなかった事が、浮かんでは消えていく。先のことなんて見てなかった証拠なんだ、これが。」


女「違うの!あなたは後悔があるかもしれない、でも私はあの頃が一番生きてて楽しかった!あの過去に後悔はないの…」


男「君にあげた贈り物でさえ、滲んでは脳を掻き乱す。君に渡したかったもの、君に受け取って欲しかったもの、君と共に作り上げたかったもの…全部なくなったんだ。」


女「…」


男「君も僕の見えないどこかで、こんな哀れな僕を嘲っているんだろう?」


女「違う!そんな訳」


男「…聞いてもしょうがないか。君はもう答えられないんだから。

君はもう土の下なんだから、喋れないよな」


女「…」


男「君にあげるはずだった苗字も、君と一緒に育てていく予定だった未来の僕たちの子供も、あの雨の日のトラックに轢き潰されたんだ。」


男「願わくば、君の顔がもう一度見たいよ。あの慰安室でみた死相じゃなくて、僕に笑いかけてくれる笑顔を」


女「ごめんね。本当に…ごめんね…」


男「多分こんな独り言を聞いたら、君は謝るだろう?

大丈夫、君のせいじゃない。僕の八つ当たりなんだ…」


女「ごめんなさい…私がもっと…もっと早く…」


男「僕らが後悔したってもう遅いんだよ、きっと。…そろそろ時間だ。」


女「うん、わかった………あなたが来たいときに来て。あなたの笑顔を私はいつでも待ってるから。」


男「多分君は、健気に待ってくれるんだろう。また来るよ。」

男(でも僕はこの時間が嫌いだ。君の前で涙を流して線香を添えるのが惨めで仕方がないから。)

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