低い宇宙

天川裕司

低い宇宙

タイトル:低い宇宙


俺はある時、急に哲学に呑み込まれた。

もともとそういう思想があったのか。


中学生の頃まではずっと周りに

流され流されして生きてきた。

でも高校に入ってからすぐ自覚の年を迎え、

それまで信じてきたもの・植え付けられてきた

ものをいちど、全部、覆すように疑い出した。


自分で物事を考えるようにでもなったのか。

それまでも確かに自分でいろんな事を

考えてきたつもりだが、何か違う。

思春期が遅めにやってきた?

笑いながら日々を過ごして行くうち、

物書きをし始め、その時々で思うことを

とにかく書き写していった。


するとある夜のこと。

枕元に急に老人が立っており、それが俺に向かって

「お前の正体を教えてやろうか?これだ」

と言い、俺に見た事も無い空間を見せてきた。


「うわっ!?は、なにこれ?!」


眠気眼だったから夢の延長かとも思ったが

今体感しているこの風、この感覚、はっきりとした意識、

すべてを思う上、俺は今起きている。


「これは…宇宙…?」


老人「そう、宇宙だ。驚いたかね?こんなに低い位置に宇宙があるなど。しかしそこでお前は、自分の正体に気づくはず。その体感している今の感覚で」


一瞬にして様々な事を思う。

まず体が宙にふわふわ浮いていること。

だから足元には土台が無いこと。

体を支える棒や壁や手すりも無いこと。


ただ風だけが向こうから吹いて俺の体をすり抜け、

どこへ行くのかわからない後ろの方へ流れている。

後ろを振り向いてもあまり振り向いた感覚がない。


実に不思議な空間。


それにさっきからずっと気になってるが、

星が物凄いスピードで前方から後方へと流れていく。

まるでタイムマシンにでも乗ったような…


かと思えば周りに星が固定され止まっている。

恒星。太陽、月、惑星、銀河系、アンドロメダ、何々座、天の川…

いったいこれらはいつどこで出来て、

なんで人に今こうして見られているのか?


ブラックホール。ホワイトホールもある?

ブラックホールに吸い込まれたら光は脱出できないと言う。

時間さえもその暗黒空間の中では無いのか?


風が物凄い速さで前から後ろへ流れていくので、

それがてっきり時間の感覚に思えてきた。

時間。物凄いスピードで流れている?


俺は一体誰なのか?

他の人たちも一体誰なのか?

アイデンティティ?考えられない。


俺はいつ生まれてこの世に落ちて、

どうしてこんな生態を持って生まれてきたのか。

みんなも。

今、地上で見ているものは何か。見せつけられているものは何か。

体感させられている事は何なのか。

運命とは何…?


生活がある。ここにも空間がある。

人と人との間に空間がある。生活がある。

喜怒哀楽の感情があり主義主観があり、

趣味があり正義があり悪義があり、

何の土台も自分で持てない人間なのに。


老人「わかったか。これがまず、お前なのだ」


どこかから大喝のように老人の声が聞こえた後、

その現象はフッとやんだ。

俺はベッドの上にお姉さん座りしており、

ぼーっとしながら、ただ空中を見つめている。

よくあるいつもの光景。


あくびをして、日常の感覚が何となく取り戻せた気がした。


「夢だったんか」

…さらに助長してそう思い、

その勢いで本当の夢を見たあと、

日常生活へと返っていった。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=7p_jCxjXg90

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

低い宇宙 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ