《コラボ企画》保健室登校の俺になぜか学園の三大美女が惚れています。でも俺の本命は保健室の先生です
野々宮 可憐
第1話 朝の事故
俺の名前は
この通勤ラッシュにかこつけて後ろのおっさんが俺の体をやたらめたらに触ってくる。なんだこいつ。
今朝は英単語で頭の中をいっぱいにしようと思ってたのに、どう叫んでやろうかで頭がいっぱいだ。
今すぐ叫んでこのおっさんに白い耳目を集めようかな。いや、なんかこのおっさん哀れになってきたな。揉んでるの俺の尻だもん。でも野放しにする気は無いから、駅の近くになったら捕まえてあげよう。つか野郎の尻だぞ固いだろ気づけよ。
さぁそろそろ叫ぼうか、と思っていたのに、タイミング悪くおっさんが俺の尻から手を離してしまった。それと同時に、隣の女子高生が急に俯く。思わずおっさんの手の行方を探った。予想通り、気色悪くも女子高生の腰あたりにそれはあった。
これはだめだろ。
哀れでもなんでもない。こいつはクズだ。でもこの女子高生もあまり大事にされたくないかもしれない。
でも大丈夫。幸か不幸か、俺には取っておきの事実がある。それは
「すいませーん、この人痴漢でーす! 俺の尻めっちゃ揉まれましたあー」
触りたくもないおっさんの汚い手を強く掴んで高々と掲げる。おっさんは驚き焦った様子で無様にあたふたとしていた。ざまあない。
「……っは!? 冤罪だ! 違う!!」
おっさんは抵抗する。ツルピカの頭からは汗が滝のように流れ、安っぽいスーツを濡らしている。気色悪ぃ。
「俺のケツ5分も揉んどいて何が冤罪だ!」
しかし困ったな……告発したはいいものの証拠が……。
「あ、あたし! 見ました! このおっさんがこの人のケツ揉んでるの見た!」
俯いていた女子高生が大声で叫んでくれた。よしよし助かった。
女子高生が叫んだ途端に周りの目の色がガラッと変わったのがわかった。取り逃がさないように周りのおじさま達が協力しておっさんを抑える。
駅に着いた途端にそのまま駅員の所へ俺と女子高生と共に連れていかれた。
「ふむ、災難だったね。君たちあそこの生徒でしょ? 連絡先だけ教えて。もう行っていいよ」
初老の駅員が対応してくれて、20分位で解散となった。俺は早めに家を出るタイプだから、今から歩いても十分に間に合う。さぁ、いこう。
「あの! 助けていただきありがとうございました。あたしのために、嘘のでっち上げまでして……」
さっきの痴漢にあっていた女子生徒が俺の袖をつまんで深く礼をした。
女子生徒の顔を見て、俺は言葉を失った。だって俺の袖をつまんでいるのは校内で有名な
「あたし、
〝陸上の花〟千歩百合香。俺が最も関わりたくない第七学園三大美女が一人だ。
後日お礼? とんでもない。これ以上目すら合わせたくないのに。
そうだ。俺が人生で1回は言ってみたかったあのセリフを使おう。
「いや! 名乗る程の者じゃないんで! さよなら!!」
俺は捨て台詞を吐いて走り出す。気張れよ俺のミジンコ体力!
こうして俺は千歩さんから逃げ出した。
「いやいや待ってくださいよ! せめて! せめて名前だけ! ね!?」
逃げ出せる訳が無かった。千歩さんはポニーテールを揺らして全速力で俺を追ってきた。〝陸上の花〟に勝ち目なんてある訳が無かったんだ。
「いや本当にそういうのいいんで! まじで!」
「いーじゃないですか! 教えてくださいって!」
「プライバシー!! プライバシー!!」
俺らは叫びながら走る、走る。周りからどう思われてんだろ。目立ちたくないのに。
あーだこーだ言いながら走っていたらもう学園の門が目と鼻の先の位置にあった。学園の中では絶対に千歩さんの隣を歩きたくない。
「あっ……! おとしちゃった〜!」
道端で小学生らしき少年が、手提げバックを落として中身をぶちまけた。千歩さんは慌てて拾いに行く。しめた。少年には悪いが今のうちに逃げさせてもらうぞ。
「あ〜! ひきょうもの〜!!」
千歩さんの叫びが聞こえる気がするが聞こえないふりだ。俺は一人で第七学園の門をくぐることができた。
しかし、俺はここしばらくこの時間帯に登校していなかった。なぜなら人が多すぎる。俺を知っている人に会いたくなんざなかった。
頼むから誰にも見つかるなよ……特にあいつだけには……!
「え? 健也?」
あいつの声が聞こえた。今日はなんてついていないんだ。聞こえないふりなんてできるわけがない。聞こえないふりをしてバレた日には何が起こるかわからない。
「お、おはよう……牡丹……」
嫌々ながらも、振り返って俺の幼なじみ──学園三大美女が一人〝氷上の花〟
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