第五話
世界が、
星を救うことなど不可能な、何の力も持たない者達が。
ただこの星の女王を批難し、憎み、蔑み、祈ることしかできない
★★★★★
ダーク・ジェイル、女王の玉座の間。
前女王であるリオン達が城を出ていってから数日がたつ。現女王ルキアとなってから新体制ではあるが、城の人事などは女王とナイトが代わっただけだった。
「秋斗、本当にナイトなんてやるの?」
ルキアは女王の間にナイトの2人を呼び出していた。
本当に彼らはこんな私に仕えてくれるのだろうか?自信の無いルキアは直接彼らの意見が聞きたかった。
だが、そんな気持ちとは裏腹に、ルキアの顔は薄く気味の悪い笑みが張り付いていることに本人は気付いていない。
「ルキア?いったい、どうしましたか?」
秋斗は心配そうにルキアの顔を覗き込む。果たして、目の前にいるルキアはわたしが今まで側にいて守ってきた“わたしのルキア”だろうか…そう思わずにはいられない程に、秋斗の心は違和感を感じていた。
ーーー《我を受け入れる気になったのか?》
ここは
ーーーうるさいっ!
ルキアは星の意思を強く否定し続けている。
「おい秋斗、ルキアの様子がおかしいけど…まさか
「どうなのでしょう、ただ…」
不気味な笑みを浮かべたまま反応の返ってこないルキアに2人は顔を見合わせていた。
この状況は、ナイトの任の説明を受けた時に前女王リオンから聞いていた状況ということなのだろうか。
『ルキアさんの心はすでに壊れ始めています。そこに憑け込まれて、早いうちに星の意思のものになるでしょう』
そう、前女王リオンは悲しそうに告げていた。
『女王なんだから当たり前だと思っておけ』
『ナイトが側にいたとは言え、城外に長い間いたからなぁ…』
そう言ったのはリオンのナイトだった魁人とユウガだった。
彼らの言っていた状況を目の前にし、ライキと秋斗はどうしていいか分からずに戸惑うばかりだ。
「ねえ、答えてよ。
反応の無かったルキアが再び声を発する。その問いに、どう答えたらいいのかも秋斗もライキも分からず少しの間沈黙が流れた。
その沈黙に耐えきれずにライキはルキアの問いに同じ問いで返した。
「お前こそ、女王になるのか?」
言った後で、ライキは自分がバカなことを言ったと思う。すでにルキアは女王就任の儀をしているし、星の意思に選ばれる女王と違ってナイトは前女王に候補で選ばれるが、やるかやらないかは本人の意志次第だ。
「ん?私?…
「どういう意味です?ルキア…」
ルキアの言っている意味が長年一緒にいた秋斗にさえ理解できなかった。もちろん、そんな問いをしたライキにも分からない。
「そういう“運命”だから」
そう言ってルキアは寂しそうに笑った。
その後、ルキアは何時に無く真剣な顔をして秋斗とライキを見詰めた。
「今の
ーーー《お前が受け入れずとも我は
最後まで言葉を紡ぐことができたのか、できなかったのか…ルキアは突然、苦しそうに息を飲んで涙を溢れさせたかと思うとぐらりと揺れて膝から崩れ落ちた。
強い意志の宿ったルキアの朱色の瞳から目が離せなかった秋斗だったが、慌ててルキアを助けるために床とルキアの間に姿勢を低くして滑り込んで抱き止めた。
「そんなルキアはほっとけませんよ」
わたしが傍にいます、と秋斗は何かに震えるルキアを抱き締めた。そんな2人に割り込むようにライキも近付いてくるとルキアの手を取って、まるでナイトが女王に忠誠を誓うように跪く。
「俺もナイトやるって誓いを立てたからな!」
そんなことを言う秋斗とライキに一瞬だけ驚いたルキアだったが…何かを悟ったように、哀しそうに微笑んみながら子供みたいに声をあげて泣いてしまった。
そして、ルキアはこの日以降は女王の執務室にも寝室にも何処にも行かずにずっと女王の間の最高位の場所にある玉座に座り続けるようになる。
「次の、
容赦の無い星の意思に、ルキアは心を喰われ続ける。もう何処にも、逃げる場所なんて無い。
だんだんと“ルキアの心”が無くなっていく。
女王は
ダーク・ジェイルから羽ばたいていった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます