一騎討ち

 上杉政虎は動き出した。

「我に続け!」

「御実城様、一騎討ちを!?」

「無論だ。お前が申していただろう、この巨大ザメは史上最強の咬合力を誇ると」

「この巨大ザメには弱点もあります!武田信玄があなたの腹に噛み付いたら終わりです!サメは防御力に自信がないのです」

「ならばこそ、一咬みで勝負を決めてしまおうではないか!覚悟して参るぞ!」

 上杉の船は動き出した。

「どうしよう!上杉軍が近付いてくる!斥候の知らせでは、長尾政虎は巨大ザメに変貌したとか聞く!そもそもこのクジラは、リヴァイアサン・メルビレイという名前なんだ。リヴァイアサン・メルビレイには宿敵がいた。その名はメガロドンという」

「そのメガロドンとやらに、政虎は変貌したということだな?」

 信次は頷いた。

「その上、メガロドンは噛む力が史上最強だと言われている。お館様、いや、リヴァイアサン・メルビレイだとしても、メガロドンに噛まれてしまってはただではすまない!」

 春日虎綱と馬場信房が乗っている別働隊の船は大騒ぎであった。

「聞いてください!お館様が巨大クジラに変貌したと」

「そんなのであったら、政虎はもっと恐ろしい怪物に変貌したに違いない」

 政虎は泳いでいた。

「信玄、今度こそお前を倒す。今に見ていろ」

 柿崎景家は、船から飛び降りた。直江実綱が叫んだ。

「おーい、そんなことをせずとも、船で行けばいいじゃないか」

「景満が言っている巨大ザメとやらを、この目で見たいんだよ」

「そうか…食われることだけはやめてくれよ!」

「どうして御実城様が柿崎殿を殺しましょうか」

 柿崎は、武田軍の船に飛び乗った。武田信繁と山本勘助がその船には乗っていた。柿崎は、襲いかかってくる敵をなぎ倒していった。信繁と勘助だけが生き残った。

「お覚悟!」

 信繁と勘助は討たれてしまった。

「これぐらい、リヴァイアサン・メルビレイに比べればもろいものよ」

 政虎は、ついに巨大クジラを見つけた。そして、巨大クジラに思いきり噛み付いた。辺りは血の海になり、そこに柿崎がやってきた。

「御実城様!」

 信次が船の上から叫んだ。

「お館様!」

「そなたは船の上にいろ。こいつは、わしがなんとかする」

「そいつは長尾政虎です!お館様の命を狙っているのです!」

「そなたが海に飛び込めば、犠牲が増えるだけだ。わしに任せておけ」

 信次は耐えられなくなって、槍を持って飛び込んだ。政虎に槍を突き刺そうとするが、政虎は逃げてしまった。信玄の横腹にできた傷は深かった。

「噛まれたのが人間ではなくて良かった。わしが人間だったら、死んでいた」

 信玄の体にはメガロドンの歯がいくつも刺さっている。信次はそれらを抜いた。工藤祐長が言った。

「これが史上最大のサメの歯か」

「化石ではない本物だ!」

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