ゴミ捨て場事件の攻略

ぜろ

第1話

「ああ、まーたゴミあったー」


 はあっと溜息を吐いて朝の食事を終えてからゴミ捨てに行った母が言うのに、ダイニングテーブルでスピードをやっていたあたしと慧天えでんはきょとんっとした。母と一緒に仕事と学校に出るあたし達は、よく母の不在時にこうやってトランプをしている。よく負けるけれど別に嫌じゃない、ランドセルを二人背負ってお母さんのバッグも持って玄関に向かうと、ありがとーっとむんぎゅり抱き締められた。おかーさん、化粧が剥げるよ。


「毎度資源ごみを燃えるゴミの所に捨てる人がいるのよねぇ……町内会入ってないとゴミ捨て場は使っちゃいけないことになってるんだけど、それにしても普通のごみをこっそり捨てるだけにして欲しいわー。資源ごみは分別して欲しい……洗ってなくて出せないのもあるし」

「そんなにしょっちゅうなんですか? 静紅しずくママ」

「火金の燃えるゴミの日は結構な確率であるわね。ご近所の係の人がいつも片付けにぼやいてるの。ペットボトルも瓶もしっちゃかめっちゃかだから」

「それは良くないですね……」

「今日の会議で議題に出さないと」

「あの、それって僕達も行って良いやつですか?」

「ん?」


 達って何だ慧天。と問うまでもない、握られた手である。小学校も三年生、まだあたしと慧天に身長差はさほどない。やっと早生まれが追い付いてきたところだ。

 じーっと慧天を見るお母さんは、にひっと笑ってサムズアップして見せる。


「良いわよ、ただしお母さんと一緒に来てね。今月の資源ごみ係は慧天ママだから、他人事じゃないだろうし」

「お母さんはすぐ慧天の言うこと聞いちゃうー。まあ良いや、慧天、お母さん、そろそろ行こ。遅刻しちゃうよ」

「わっほんと! じゃあ一緒に行きましょうか、二人とも!」


 ばたばた走る母に手を引かれ、あたしは慧天の手を掴んだ。

 何企んでるんだ、まったく。

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