第2章

プロローグ

幼児化してしまった

「目を覚まして!」


 永遠に等しい無の中で、その声に意識を呼び起こされた。


「しっかりして」


 声が聞こえる。聞いたことのある声だ。

 だれだろう?

 そろそろ目を覚まさないと。


「大丈夫?」


 目が開くと、金色の髪をした女の子がこちらを見つめていた。


「んー」


 言葉を発しようとしたが、くちびるが動かない。

 身体に力が入らない。

 まだぼーっとしているが、だんだんと視界はクリアになり、頭も回るようになってきた。


 「よかった。意識が戻ったみたいね」


 色々と思い出してきた。

 オレを見つめているこの子がリースであることも。

 オレはダンジョンに入って、ナッシュたちとはぐれて……

 気づいたらこうして寝かされていた。


「ぼく、名前は?」

「え?」


 何を言っているんだ? オレはローランドだ。まさか、オレのことを忘れてしまったのか?


「ほー、ほー」


 うまく舌が回らず、名前を発することすらできない。


「もしかして記憶がないのかしら?」


 記憶ははっきりしているが何かがおかしい。

 さっきからリースはオレを子供を相手にするような話し方をしている。

 それに、気のせいかリースがいつもより大きく見える。


「大丈夫よ、お姉さんがついてるわ」


 リースがオレの手をやさしく握る。

 温かいリースの手が、オレの手をすっぽりと包み込む。

 いや、おかしい。

 リースの手がこんなに大きなわけがない。

 立ち上がり、部屋を見回す。

 化粧台を見つけ、すぐに駆け寄る。

 椅子によじ登り、鏡を覗き込む。


「は!?」


 そこに映ったのは子供の顔だった。


「まだ起き上がっちゃ駄目よ」


 リースに軽々と持ち上げられ、ベットに戻される。

 いつの間にか、オレの体は縮んでしまったようだ。


 こんなことになってしまったのには深い理由がある。


――――――――――――――――


 第2章開幕しました!

 今回はプロローグなので短めです。

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