ボクはキミ想ふ

一ノ瀬

第1話『出会いの一歩』

 高校1年生の羽立翔斗はたてしょうとは、朝の光が差し込む校門をくぐり、学校へ向かう足取りはどこか軽やかだった。彼はおっとりとした性格で、いつも穏やかに過ごしていたが、その心の奥にはバレーボールに対する情熱が燃えていた。今日もまた、午後の練習に向けて学校の一日をしっかりと過ごそうと決めていた。


 翔斗が教室に入ると、すでに同級生たちが賑やかに話している。彼は静かに自分の席に着き、カバンからノートを取り出した。授業が始まると、彼は集中してノートを取りながら、時折、周囲の会話に耳を傾けた。今日は特に目立つこともなく、平穏無事に過ぎていった。


 翔斗は休み時間にクラスメイトの海輝かいきたちと軽くおしゃべりをしながら、文化祭の準備が進んでいる教室に向かった。そこで彼を待っていたのは、いつものように明るく元気な白鳥咲良しらとりさらだった。咲良は文化祭の準備に一生懸命で、何かと忙しそうだった。


「翔斗くん!今日もよろしくね。」咲良は笑顔で声をかけてきた。


「咲良。準備、頑張ってるな。」翔斗は彼女の姿を見て微笑みながら答えた。


 教室での準備が始まると、翔斗は咲良と一緒に作業を進めた。彼は咲良の手際の良さに感心しながらも、バレーボールのことが頭から離れない。咲良もまた、翔斗がバレーボールに情熱を注ぐ姿を尊敬しており、彼のことを意識しつつ作業を進めた。


「翔斗くん、これを手伝ってくれる?」咲良が作業を頼んできた。


「うん、いいよ。」翔斗は頷きながら、手伝うべき場所に移動した。二人は協力し合いながら、文化祭の準備を進めていった。


 昼休みになると、翔斗は友人たちとバレーボールの話題で盛り上がっていた。咲良は翔斗の話が気になってちらちらと彼の方を見ていた。


「翔斗くん、今日の練習、頑張ってね。」咲良が話しかける。


「ありがとう。咲良。お昼は何を食べるの?」翔斗は優しく質問し、咲良の話を聞く姿勢を見せた。


「今日はお弁当だよ。おばあちゃんが作ってくれたんだ。」咲良は嬉しそうに答えた。


「そうなんだ。美味しそうだね。」翔斗は微笑みながら言った。


 放課後、翔斗はバレーボール部の練習に向かうために、荷物を持って体育館へと急いだ。練習では、汗をかきながら必死にプレーする仲間たちと共に、全力を尽くしてバレーボールに打ち込んでいた。翔斗のプレーは力強く、コートの中での存在感は際立っていた。


 練習が終わる頃、翔斗は汗だくになりながらも充実感を感じていた。帰り道、彼はふと咲良のことを思い出す。彼女が文化祭の準備を手伝ってくれていたこと、昼休みに見せた笑顔などが心に残っていた。


 その夜、翔斗は祖父と夕食を取っていた。焼き魚と味噌汁の温かい香りが部屋に広がり、穏やかな時間が流れていた。祖父が「翔斗様、今日はどうでしたか?」と尋ねると、翔斗は少し考えながら答えた。


「今日は文化祭の準備を手伝ったり、練習をしたりして、一日があっという間だったよ。」翔斗は疲れた様子を見せながらも、どこか満足そうな顔をしていた。


「咲良ちゃんとはどうだった?」じいが優しく問いかける。


「うん、彼女はすごく頑張ってた。文化祭の準備も手伝ってくれて…」翔斗は少し照れながら答えた。


「翔斗様も忙しい中で、良い時間を過ごしているようで、バレーの熱心さも大事ですが心の余裕も大事ですよ。」じいの言葉に、翔斗は軽く頷いた。


 その夜、翔斗はベッドに横たわりながら、咲良の笑顔や文化祭の準備のことを思い出していた。バレーボールに夢中になるあまり、恋愛には興味がなかったが、咲良の存在が少しずつ心に影響を与えていることを感じ始めていた。

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