さよならパンダ
くさぶえ 舞子
さよならパンダ
急遽、あれほど執着していたパンダのぬいぐるみとお別れすることになった。(「紫のタヌキを背負って」をご参照ください。)三年前、UFOキャッチャーでとった60センチのパンダのぬいぐるみのことだ。
最近、三歳の息子のくしゃみが酷かった。連続で続けてでて、たら~んと床に付いたりしていた。風邪だと思って夜間病院に連れていくと、お医者さんに
「風邪じゃなくて、アレルギーの可能性があります。」
と、伝えられて驚いた。卵アレルギーとアトピーはあったのだけど、えっ?何の?と思った。
次の夫の休みの日にいつも通っているアレルギーの病院に予約を入れた。(人気の病院なので朝六時に予約開始で十五分後には約五十人がネットで埋まる所だ)アレルギー専門の病院でも同じことを言われた。お医者さんが
「今日は、採血をしましょうかね。結果は後日の診察でお伝えします。」
と、しばらく待って息子だけを別室に連れていき採血をした。帰ってきたときは泣きじゃくった後の顔だった。この時、何故親が見えない所で採血をするのかというと、親がみているのに自分を助けてくれない!という気持ちに子供がなるからだそうだ。
一週間たったので採血の結果を聞きにまた、アレルギーの病院へ行った。結果は
「スギと、ダニと、ハウスダストですね。」
と、グラフを見ながらお医者さんは伝えた。
「二年前の検査の十倍です。このままじゃ、花粉症になりますよ。」
と、言われた。花粉症は可哀想過ぎる!ので、まず、寝室に置いていたぬいぐるみ(パンダ)と泣く泣くお別れすることになった。このパンダは、随分、役にたってくれた。はじめは息子よりちょっと、大きかったけれど、60センチのパンダはみるみる追い越されていった。息子のいい格闘相手だった。最近では、手の部分の縫い目が裂けて、息子が心配そうに
「血が出とる、治してあげて」
と、自分以外のことも気にしてあげられる優しい子供に育ったなぁ~と、感心していた所だった。
しかし、ダニ!と、ハウスダスト!これはもう感謝してお別れするしかなかった。洗ってどうにかしようかとも思ったが、パンダの足の底は紙で出来ていたので洗うことは諦めた。
「十分元は取ったよ」
と、夫はいってくれた。この先、花粉症になる方がよっぽど苦痛だ。
今度は本物のパンダをいつか見に行きたいなと、今はひそかに旅行を夢みることにした。
さよならパンダ くさぶえ 舞子 @naru3hakuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます