第16話 ドラ〇もんのひみつ道具

 それから更に廊下を進んで行き、ようやく目当ての部屋へと辿り着いたようだ。


 パメラが開けたくれた扉から中に入ると、落ち着いた雰囲気の家具が揃えてあった。


 部屋の中央にはソファーセットが据えられており、天蓋付きのベッドやドレッサー、本棚が置いてある。


 他にも扉が付いているので、トイレやってシャワールームもあるのかもしれない。


 アラスター王太子とソファーに向かい合って腰を下ろすと、エイダがお茶の準備をしてくれる。


 温かいお茶を口にしてホッと息をついた。


「キャサリン嬢、僕はあなたに謝らなければいけません」


 いきなり改まった口調で謝罪を口にしたアラスター王太子に少々面食らった。


「どうされたのですか?」


「さっきあったブリジット様の事です。セドリック王太子と婚約解消が嬉しかったのと、あの国には置いておけないたと思い、勢いで連れてきてしまったけれど…」


 その先は言われなくても大体わかる。


 このコールリッジ王国でもあの王妃がいるため、安息の地ではないと言いたいのだろう。


「謝らないでください。あの家を追い出されて行く宛もない私を拾ってくださったんですから感謝しています」


 あのまま街を彷徨っていたら、どうなっていたかわからない。


 何しろクシャミをしたら人間の姿に戻って、しかも裸の状態なのだ。


 街中でそんな姿を晒す形にならなくて本当に良かったと思っている。


「ブリジット様はこちらには近寄って来ないとは思うが、万が一来たとしてもこの部屋の扉は登録した人物しか開けられないようにしておくよ」


 アラスター王太子はウォーレンが持ってきた魔石を私とエイダ、ウォーレンに握らせて魔力が登録した。


 最後にアラスター王太子が握って魔力を登録した魔石をウォーレンが扉に設置しに行った。


「これでこの部屋は僕達しか開けられないようになったからね。それとキャサリン嬢が猫に変身してしまう事はしばらく誰にも秘密にしたいと思うんだが、いいかな?」


 吹聴してまわるような事ではないので、アラスター王太子の提案を有り難く受けておく。


 それにあのブリジットに知られたら何をされるかわからないのが怖い。


 先程の私を睨みつけてきた目を思い出して、ブルリと身体を震わせる。


「ありがとうございます。そうしていただけると嬉しいです」


 お礼を述べた私にアラスター王太子は少し言いにくそうに口を開く。


「秘密にする、と言っておきながらなんだけど、キャサリン嬢が猫に変身する事を教えたい人物がいるんだけど、良いかな?」


 今、言った事と真逆の話が出てきたのは一体どういう理由なんだろう?


「えっと… どういう事ですか?」 


 アラスター王太子の顔が少し赤くなったように見えるのは気の所為かしら?


「いや、その…。キャサリン嬢は猫から人間に戻ると裸の状態だろう? それに猫になったら人間の言葉を喋れないから、ちょっと困るよね。それで、猫から人間に戻った時に服を着ている状態に出来れば良いと思ったんだ。それに猫になっても人間の言葉を喋れた方が良いだろう?」 


 顔を赤くしてたのは、私の裸を思い出したからかしら?


 恥ずかしいのはアラスター王太子より私の方なんだけど…。


 言葉はともかく、猫から人間に戻った時に裸なのは確かに回避したいわね。


 だけど、どうしたらそんな事が出来るのかしら?


 猫のまま、人間の服を着て、引きずって歩くわけにはいかないわよね。


「猫から人間に戻った時に服を着ている状態に出来たら嬉しいですが、そんな事が出来るんですか?」


 半信半疑の私にアラスター王太子は力強く頷く。


「出来ると思う。魔道具を作ってもらうんだよ」


 魔道具でそんな事が出来るの?


 まるで『ドラ○もんのひみつ道具』ね。

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