第14話
次の日、2人でサブクエをクリアするためにギルドに入った。
スレイアと話をして1日1サブクエをクリアする事にしている。
一気にクリアするよりも毎日クリアした方が悪い評判を変えられる、そう思ったのだ。
……冒険者に見られている気がする。
周りを見回すと目を逸らされた。
やっぱりみられている。
受付嬢が笑顔で挨拶をしてその近くにはおばあちゃんがいた。
今回の依頼主はこのおばあちゃんだ。
サブクエのストーリーでおばあちゃんの境遇は知っている。
貧乏な人に定期的にパンを配り、子供にはクッキーや飴を与えている。
ある日錬金術師のおばあちゃんが愛用している錬金釜が壊れた。
錬金釜は魔法陣が施してあり高価だ。
おばあちゃんは調合は出来るけど鍛冶系の錬金術は出来ない為錬金釜を鍛冶師から借りている。
もしおばあちゃんが一切寄付をせずお金を貯めていればおばあちゃんが困る事は無かっただろう。
おばあちゃんが新しい錬金釜を買う為に薬草を銅貨1枚で売る事で間接的におばあちゃんを助ける。
そういうサブクエだ。
ちなみにゲームでは3回おばあちゃんのサブクエが発生しすべて薬草を銅貨1枚で売り、サブクエの回数を重ねると薬草の納品数が増えていく。
「薬草は集まりましたか?」
「はい、どうぞ」
薬草を出した。
おばあちゃんが薬草を見て俺に握手をした。
「ありがとねえ、後できっとお礼をするから、ありがとね、本当にありがとう」
「いえいえ」
受付嬢が感動して涙ぐんだ。
周りで見ていた冒険者が声をあげた。
「くそ! 賭けに負けたか! んだよ! 絶対にやらないと思っていたのによお!!」
「くっそ、やったのか! ノワールが奉仕依頼を受けやがったか!」
「ノワールは変わったんだ。人をよく見た方がいいよ」
女冒険者のテーブルにみんなが金貨1枚(1万円)を置いていく。
「まいどー、ノワールが依頼をやらないに賭けたのが18人、やる方に賭けたのは私を含めて3人、1人金貨6枚の儲けね」
「ノワールが依頼を受けなければ3人が銀貨1枚(1000円)払うだけのオッズだからなあ。大穴に賭けとくんだったぜ」
「くっそ! 酒がまずくなる」
うわあ、流石中世ヨーロッパのような世界だ。
俺が賭けの対象になっている。
でも待てよ、これって俺が注目されてるって事だよな?
サブクエを進めれば俺の善行が広まるんじゃね?
「おばあちゃん、もし良かったら明日も薬草の依頼を出して欲しい」
「でも、これ以上助けてもらうのは……」
おばあちゃんが受付嬢を見た。
「銅貨1枚の依頼を作りますね」
「お願いします。また明日の朝来ます」
「はい、明日もよろしくお願いします。それとモンスターの納品をお願いします。魔石は売らずに貰うパターンで毎回お願いします」
2人でモンスターを少しだけ納品した。
たくさんのモンスターを倒してはいるけど、強さを見せる気はない。
嫌われている今目立つと悪評の方が広まりやすいだろう。
食事を食べて森に向かった。
昨日のように森にで闇のオーブを使っていると冒険者が遠くで見ていた。
俺は手を抜いて実力を見せないようにモンスターを倒していく。
【次の日】
ギルドに行くとまたおばあちゃんがいた。
掲示板を見ておばあちゃんのサブクエを受付嬢のいるカウンターに置いた。
そしてストレージから薬草を出した。
俺を見ていた冒険者が声をあげる。
「バカな! あらかじめ集めておいたのかよ!」
「くそ! まじでかああああああああ!!」
「まいど~、21人がノワールが依頼を達成しないに賭けて、7人が依頼を達成するに賭けたから1人金貨3枚の儲け」
「ノワールが依頼を達成しない方のオッズが上がってるから儲けられると思ったんだけどなあ」
「昨日依頼を達成してるから今日もやるにかけた方がいいでしょ」
「酒がまずくなった」
「こんなに早く持って来てくれてありがとうね、パンがあるから貰って頂戴」
おばあちゃんは依頼の達成を待つんじゃなくてパンを渡したかったんだろうな。
「ありがとう。ダンジョンで食べさせてもらます」
「ありがとう」
受付嬢が笑顔で俺に握手をした。
「感動しました」
「お、おう」
ヤンキーが猫を助けたみたいな感じだろう。
「それで、明日も依頼を出しますか?」
「でもそれは」
「出しましょう!」
冒険者の声が聞こえた。
「なあ、何で俺がノワールが依頼を達成するに賭けたか教えてやろう。昨日森でノワールを見たんだよ。でな、ノワールはスレイアの盾になるように前に出ていた。それでピーンと来たわけよ」
「それのどこがピーンと来るんだ? 訳が分からん」
「分からないか、だから俺が勝てた」
「で? 理由は?」
「聞きたいか、いいだろう、教えるぜ。前のノワールならアレクを前に出してモンスターの盾にしていた、そういう行動の1つ1つを見てその時は思ったね、こいつはクズだってな。でも昨日見て思った。今のノワールはクズじゃないってな。更に理由もあるわけだが、まあ今回は1つだけで十分だろう」
「そこまで言うなら言ってくれよ」
「そうか、ぷはあ、酒がうまい。残った理由は鬼教官の態度だ。ノワールとストラクタが話をする時にストラクタが笑顔だ、俺はそれを見逃さなかったね。つまりだ、ストラクタはノワールを認めている」
「お前言うなよ! もう賭けが出来なくなるだろ!」
「何で言うのよ! もう一回儲けられたのに!」
「はははははは! 勝ち過ぎは良くない、恨まれるからな。それに金貨なら1日ダンジョンに行けば余裕で稼げる」
「出たよ、鉄等級だからそんな事が言えるんだ」
「早く木等級から鉄等級になれるように頑張るんだな。鬼教官の特別指導を受ければすぐ等級を上げられる」
「誰が行くかよ、ありゃ地獄だぜ」
俺に聞かれている事を気にしていないようだ。
俺は前より安全だと思われているんだろう。
街のみんなには嫌われてはいる。
それでもギルドと冒険者の評判はサブクエ2日目で変わりつつあった。
俺はサブクエを始めてから1週間同じ生活を続けた。
おばあちゃんのサブクエが終わると今度は違う錬金術師のサブクエを始める。
最初は打算があった。
でもおばあちゃんが喜んでくれるのを見て嬉しくなってしまう。
やる気が出てくる。
サーバントはダンジョンに連れて行かず24時間毎日訓練を続けさせた。
それだけで俺はレベルが上がっていった。
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