84 触れたい②
今日……、私は奏多とあれをする。
だから、風呂の中にいる時、心の準備をしていた。
幼い頃からずっと好きだったからね。あの時の私は、今よりもっと大きくなったらきっと奏多と付き合えるよねとそう思っていた。でも、まさか「付き合って」じゃなくて、すぐ「結婚して」が出てくるとは思わなかったよ。
すごく嬉しい。
そして奏多がなぜそう言ったのか分かりそうな気がする。
付き合うなんて、意味ないよね。少なくとも私たちの間では———。
風呂から上がった後、奏多は当たり前のように私の体を拭いてくれた。
そのまま洗面所の前で私の髪の毛を乾かしてくれた……。そして鏡に私たちの姿が映っている……。電気、消した方がいいかもしれない。でも、そうしたら何も見えなくなるから髪の毛を乾かすのも無理だよね。
私、奏多に全部見られている。
そして奏多も全部———。
「…………」
すごく恥ずかしい。
奏多の顔が真っ赤になっていて、私の顔もいつの間にか真っ赤になっていた。
これから何が起こるのかちゃんと知っているのに、それでも落ち着かない。
今、私の後ろに奏多がいる。あの時より背が伸びて、手も体も大きくなって、今の私じゃ奏多に絶対勝てないよね。襲われたら、何もできなくなるかも……。どうしよう、落ち着かない。
ドキドキしすぎて、心臓が爆発しそう。
そして奏多一人だけ冷静になっているのが気に入らないから……、振り向いて奏多と目を合わせた。
「…………ちょっと、なんでこっち見るんだ?」
「どう?」
「ど……って?」
「私……、ちゃんと……その……、成長したでしょ!? 子供の頃と全然違って、綺麗になったでしょ!?」
「…………」
背はあまり伸びてないけど、ちゃんと成長したから……。その目で成長した私を見るのよ!
でも、それは奏多も一緒だった。
「ひなは幼い頃から可愛かったからさ。でも、今はもっと可愛くなった。可愛いよ、ひな」
「う、うん……。なんか、暑いね!」
「そうだね……」
「このままお姫様抱っこして部屋に連れて行ってくれない? 奏多」
「服は……?」
「着る必要あるの……?」
「そ、そうだね……。じゃあ、タオル———」
「もいらない……」
「はい……」
そのまま私にお姫様抱っこをしてくれる奏多、やっぱり……これはいい。
すごく恥ずかしいけど、奏多なら大丈夫。そんな気がした。
でも、なぜかだんだん勇気がなくなってしまう。どうしてだろう……、今までずっとこうなりたくていろいろ頑張ってきたのに、実際……やろうとしたらすごく緊張している。
初めては……、こんな感じかな?
やったことないから全然分からない。
「下ろすから……」
「うん……」
今更だけど……、私の部屋どうしてこんなに明るいんだろうと……、全部見えてきて全部見られてしまうからね。でも、そんなことよりここからどうすればいいのかよく分からない。恥ずかしくて奏多から目を逸らしていた。
そしてなぜか震えている自分に気づく。
ずっと私の方から襲って、そうやって奏多を食べちゃおう!と思っていたけど、そういうの……できるわけないよね。今片手で私の腰を触っているだけなのに、緊張しすぎて声が出てこない。
それに少し怖いのもある。
「ひな、電気消すから……」
「えっ?」
「ひな……初めてじゃん、俺もそうだから……恥ずかしいからさ」
「…………じゃあ、電気消して……」
それは嘘だよね、奏多さっきまで私の腰を触っていたから……。
そしてずっと私の体を見ていたから———。
「何も見えない……。だから……、緊張しないで。ひな」
「べ、別に……! 緊張とかしてないよ……! い、言っておくけどね! 私が奏多を襲うのよ! 分かった?!」
「そうだね……。ひなに食べられるのも悪くないかもしれない……」
「そ、そんな感じ……」
と言っても……、すでに私の体に乗っかってるし…………。恥ずかしい。
そして引き出しの中からゴムを取り出した。その音がはっきりと聞こえてくるからすごく恥ずかしい……! 始まるの? 私たち、あれ……やるの? 今から———。
「ひな……。俺さ……、ひなのことすごく好きだった。ひながいてくれるだけで、毎日が幸せだったよ。実は付き合ってくださいと言いたかったけど、俺はそんなことより……ひなが欲しかったんだ。言葉だけの関係じゃなくて、ちゃんとはんこを押したくてさ……」
「う、う、うん……」
「本当に好きだよ、そして初めてだ。何かがこんなに欲しかったのは…………」
「…………」
何も見えない……。
でも、首筋から胸元まで……奏多の感触が感じられる。そして息ができない。
これは私がずっと奏多にやっていたことなのに……、今度は私がやられている。それに恥ずかしい声が出ちゃいそうで……、精一杯我慢していたけど……。結局、奏多を抱きしめたままその恥ずかしい声をたくさん出してしまった。
もう我慢できない。
「痛かった……? ひな」
「知らない……。そんなこと聞く暇あるなら……、キスしてよ。このバカァ!!!」
「うん……」
怖くて、ずっと奏多の左手を握っていた。
すごく怖いけど、すごく気持ちよくて、それは言葉で上手く表現できないそんな感覚だった。そして奏多も初めてなのに……、なぜ私の弱いところをちゃんと知っているんだろう。どうして? どうして弱いところばかり攻めてくるのか分からない。
奏多は……、バカ。
本当にバカだよ。
「もういい……! 奏多……、もういい…………。私……」
「いいの?」
「…………」
言葉が出てこなかったから、こくりと頷く。
真っ暗で何も見えない部屋、その中で私たちはくっついている。
そして———。
「ひな……」
「う、うん……」
「好きだよ……」
「わ、私も……奏多のこと好き…………!」
「ひ、ひな……」
あ。こういう……感じなんだ。
「……っ」
うわぁ……、一瞬頭の中が真っ白になるような気がした。
なんって言えばいいのか分からない。
好きという言葉しか出てこないほど、気持ちよかった……。そしていつかネットで検索したことがある。好きな人との初体験はすごく気持ちいいってそう書かれていたけど、すごくじゃなくて気持ちよすぎておかしくなっちゃいそうだった……。
好きが溢れて、溢れて、それに嬉しすぎて涙が出てしまう。
私も好きってもっともっと奏多に話したいけど、ぎゅっと抱きしめられたままキスをされているからね。とはいえ、キスをされなくても声は出てこなかったかもしれない。奏多……すごく気持ちいい。
私、奏多を探しにきて……よかった。
本当によかった。
「はあ……、奏多。好き♡ ずっと一緒にいようね」
「うん……」
幸せだ。
これが私が欲しがっていた幸せ、本当に好きだよ……。奏多。
「…………もっともっともっともっとキスして、奏多……」
「うん……」
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