彼女に裏切られた俺は、彼女の妹とキスをする
棺あいこ
彼女に裏切られた俺は、彼女の妹とキスをする Ⅰ
1 浮気と出会い
時は12月24日、クリスマスのイブ。
俺……、
知らない男と手を繋いで仲良さそうに笑っているうみが———目の前であの男とハグをしていた。
「…………」
ショックを受けた俺は持っていた荷物を地面に落としてしまう。
信じられないその状況に、どうすればいいのか分からなかった。
そういうのは初めてだったから、そのまま家に帰るしかなかったと思う。すると、彼女から一つのメッセージが来た。「今日も私忙しいかも! ごめんね」と。彼女は考える時間すらくれなかった。
浮気、どう見ても……浮気だな。
そうやって……、俺たちの一年が消えてしまった。
なぜか、そんな気がした。
でもさ、少なくとも……忙しい理由くらい教えてくれてもいいんじゃないのか? 俺たち、幼馴染だろ? 幼い頃からずっと仲がいい幼馴染だろ……? どうして、どうして……俺との約束をそう簡単に破るのか分からなかった。
そばにいるあの男……誰なのか分からない。
なぜ、あんなところで……知らない男とくっついてるんだ……? うみ。
ぼとぼと……、玄関でずっと涙を流していたのに、俺は気づいていなかった。
どうして、そうなってしまったんだろう。
俺には分からないから……、どれだけ考えても分からないから……。誰か、俺に説明してほしい。
「うっ……」
クリスマスのイブ、あの日の夜は地獄だった。
ずっと好きだった彼女が、知らない男とデートをしていたから———。
……
そして、25日……クリスマス当日。
「冬休みが26日からだなんて……、マジかぁ。起きたくなかった。今日は丸一日部屋から、布団の中から、出たくなかったぁ……」
「朝からどうしたの? その顔……、ちょっどやばそうに見えるけど」
「
「な、何……? 何かあったの? そういえば、うみちゃんは?」
そっか……。だよな……、しょっちゅう俺とくっついていたからぁ。
いつも……ここにいたのに、今日はいないからぁ。
「ちょっといいか? 如月」
「うん? いいよ」
彼女の名前は
それがきっかけになって、今はいろいろ俺にアドバイスをしてくれるようになった。うみも他の女の子はダメだけど、如月なら信頼できるって言うから俺たちは仲がいい。そして、女の子が苦手だった俺にどうすればいいのかを教えてくれたのもここにいる如月だ。
幼馴染だとしても、女の子はずっと苦手だったからさ。
でも、如月といる時は楽だった。
やっぱり、陽キャは格が違うな。
「それで?」
「あ、今までいろいろありがと……。如月」
「何? 宮内くん明日死ぬの?」
「いや……、なんでそうなるんだ?」
「あははっ、冗談よ。朝から元気なさそうに見えたし、そしてさっきのことで分かった。喧嘩したんでしょ? うみと」
「せ……、正解です」
ダメだ。
いくら如月だとしても、うみの友達だからそれは言えない。
「じゃあ、今日は私とカラオケでも行く?」
「ありがとう……。でも、いいよ……。今日は帰る……。あ、ジュースは俺が奢るから……」
「うん。それより、ちょっと喧嘩しただけで泣き顔するなよ〜。男でしょ?」
「はい…………」
今更だけど……、如月が俺の話を聞いてくれなかったらずっとクラスの隅っこで落ち込んでいたかもしれないな。
いい友達がいて本当によかった。
「気にしないで、私は一年生の時から宮内くんを見てきたからね。今はつらいかもしれないけど、すぐ仲直りできるはずだから……!」
「ありがと、如月…………」
「ふふっ」
そして、教室に入ろうとした時、向こうからうみが歩いて来た。
そう、うっかりしていたけど……、俺たち同じクラスだったよな。どんな顔をすればいいのか悩む暇もなく、うみの方から先に挨拶をしてくれた。一応……、二人にはバレてないから……。だとしても今の状況はすごく悲しかった。
いつもの笑顔で挨拶をしてくれたけど、俺は見てしまったからさ。
俺は悪いこと何もしてないのに、なぜ……知らない男と一緒に…………。
あいにく、まだ心の準備ができていなかった。
「ほら、うみちゃんの方から先に挨拶したんでしょ? 宮内くん。元気出して!」
そう言いながら俺の背中を叩く如月。
俺は……うみの後ろ姿を見て、どうすればいいのか分からなかった。
……
「ねえ、うみちゃんのことだけど。宮内くんが声をかけたら、きっと仲直りできると思う……! さっき少しだけ話してみたけど、そんなに怒ってないからね」
「そうかな……?」
「元気出して! 何かあったら私に連絡してもいいよ」
「ありがと、如月」
「うん」
終業式が終わった後、すぐ如月と校門前で別れた。
特に予定はないけど、年に一度しかないクリスマスだからさ。俺なんかと一緒に過ごすより好きな人や友達と過ごした方がいいと思って、彼女とのカラオケは断った。そして、まだ……心が痛い。俺は忘れようとした……、何度もそれを忘れようとしたけど、自分が見たあの状況をそう簡単に忘れるのは無理だった…………。
俺にはな。
今日は家に帰って、昨日買ってきたケーキを食べながら……冬休みが終わるまで漫画でも読もう。
それしかない、俺にできるのは何もないからさ。
「あっ……!」
そして、道端である女の子とぶつかってしまう。
どこ見てるんだよ、俺……。
「す、すみません…………」
「ああ……、痛い……」
「だ、大丈夫ですか?」
尻もちをついた女の子がじっと俺を見ていた。
てか、この人……俺どっかで会ったことありそうな気がするけど……、気のせいかな? そんなことより、俺……なんで女の子の顔をジロジロ見てるんだろう。でも、すごく可愛い女の子だった。
ふと、うみのことを思い出してしまうほど……可愛い女の子だったと思う。
「は、はい……! スマホばかり見てて……前をちゃんと見なかった私のせいです」
「いいえ、俺も……。た、立てますか?」
「はい……!」
そして、彼女の手を握った時、冷えているその手に俺はビクッとした。
まるで……氷を握ってるような感じだったからさ。
「あっ、もしよかったら……。これ! 使ってください!」
「えっ? カイロ……。あ、ありがとう……ございます!」
「今年の冬は寒いですね……。じゃあ、俺は帰りますから。さっきは本当にすみませんでした」
「え、えっと……!」
別にあの人が嫌いってわけじゃないけど、なんか……そこにいたら嫌なことを思い出しそうで逃げるようにその場を立ち去った。
うみの浮気を……、そしてあの時のことを……、また……。
これは……多分冬休みが終わるまで続きそう。
「私のこと……、忘れたのかな…………? 奏多……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます