蓋をした想いを十年越しに好きだった人に伝えてみたが…君は既に違う人と幸せに過ごしている。何の因果か帰り道で出会った訳あり女性と同棲することになるなんて…誰が想像しただろうか

ALC

第1話まだ始まってすらいない恋愛物語

「ごめんね。結婚しているんだ。

素敵な旦那がいて今は幸せなの。

久遠くおんくんの想いには答えられない。じゃあね…」


高校を卒業して十年の月日が経過していた。

同窓会が開かれて僕は蓋をしてきた想いを十年越しに好きだった女性に告白をして…

あえなく振られたところだ。

心情的に同級生たちとお酒を飲む余裕もなくなった僕は二次会には参加せずに帰路に就くことを決める。


電車に乗って最寄り駅まで向かい自宅マンションまで歩いて帰っているところだった。

マンション入口近くのベンチで寝そべっている女性の姿が確認できた僕はその光景と自らを疑っていた。


「飲みすぎたか…それとも振られたショックで幻覚…?」


そんなどうでもいいことを脳内で適当に思考して頭を振る。


「そんなわけ無いな…信じられないかもしれないが…

本当に女性が夜中のベンチで寝転んでいるんだ…」


現実を直視した僕ははぁと嘆息を一つして彼女の傍まで向かう。

仰向けに寝転んでいる女性の顔面を確認して僕は言葉を失っていた。

この世のものとは思えないあまりの美貌を確認して僕は言葉を失っていた。

つい先程好きだった女性に告白して振られたばかりの男性の思考とは考えにくいが…

僕は振られた事実も好きだった女性への想いすらも一瞬にして忘れてしまいそうだった。

ひとえにそれは眼の前の女性が魂までも奪い取ってしまうほどの美貌の持ち主だからだろう。

人とは思えないあまりの美しさを携えている女性を前にして僕の脳は完全にフリーズしていた。

しかしながらはたと思考が停止している自分に気づいた僕は深く息を吸い込んだ。

現在自分の身に何が起こっているのか一つ一つ整理しながら…

僕はついにその女性の肩を軽くゆすり声をかけることを決めたのであった。




「お姉さん。こんなところで寝ていたら体調崩しますよ。いくら今が七月と言えど…

こんなところで寝ていたら危ないですし…何に巻き込まれるかわかりませんよ…

それに寝汗をかきすぎて脱水症状にもなるかもしれませんし…」


などと幾つもの言葉を投げかけてみるのだが…

彼女は一向に起きる気配を見せずにいた。

諦めそうになっている僕の心をそれでも突き動かすのは…

やはり彼女の美しさが原因だろう。

何度と無くトライを重ねて彼女の肩を揺すっていると…


「ん…んー…うるさいな…久しぶりの…で眠いんだよ…誰だか知らないけど…

もう少し寝かせて…」


やっと目を覚ましかけて口を開いた彼女だったが再び眠りにつこうとしている。

それを目にした僕は慌てた様子で再び彼女の肩を揺すっていた。


「ですから。こんな場所で寝ていたら…」


「ん…じゃあ君の家で寝かせて…おんぶして連れて行って…」


「は…?え…?」


「そんな言うなら責任持って連れて行って…」


理屈の通用しない相手の言葉に僕は軽く嘆息しながら…

けれど美女をおんぶできる喜びに浸りながら彼女を自宅まで連れて行くのであった。






玄関を開けた僕は彼女を自室に連れて行く。

彼女をベッドに寝転ばせると僕はリビングに向かうためにドアの方へと歩いていく。


「ありがとね…ここ…気に入ったから…今日から住むね…じゃあおやすみ…」


唐突に決定事項のように口を開く彼女に僕は反論の言葉を口にしようとしたが…


「いいや…美女と同棲出来るなら…良いのか…?」


そんなどうしようもない思考に苛まれながら…

僕はリビングのソファで一夜を明かすことを決めるのであった。






今日から僕と謎の美女の同棲生活はスタート?するのであった。


僕と人とは思えないあまりの美貌の持ち主である彼女との恋愛物語はまだ始まってすらいない。


これはいつか結ばれるかもしれない二人の恋愛物語である。

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