第41話 女神の謝罪。
コーヒーを飲み終わった時、店の奥から声が聞こえてきた。
「はぁ!?なんで私なの!?じゃあ苦しんでなさい!」
なんか不穏な気がする中、カウンターの男の声がなぜか聞こえる。
「ああ、激おこじゃなかった。激おこムカ着火ファイヤーだった…」
なにそれ?
俺たちは考えを続けることは出来なかった。
「久しぶりね。赤城巡さん」
そう言って奥から女が現れた。
巡は奥から現れた女を見て目を丸くした。
それは俺はまだ巡のアイコンで知っていたが、カミサマ4アプリの女神だった。
「女神様!?」
「ええ」
女神は俺達にも挨拶をすると、少しため息をついて、店主っぽい男に珈琲を淹れさせる。
「まったく、やられたわ」
女神はそう漏らすと、珈琲をひと口飲んで「夏休みの宿題」と言った。
「は?」
思わず聞き返す俺の脳内に、イケイケの姿をした男神、カミサマ2アプリのエロ女神とよく知らない女神が頭を押さえて、どこかの草原の上で正座した姿が現れる。
「コイツら、私に隠れて宿題なんて出したのよ」
「え?リアル?」
「ええ、今も神の世界でお説教中」
映像が引きになると、そこには目の前にいる女神がいる。
「別に神の世界にいて、地上現界に降り立つなんて朝飯前よ」
その横にはカミサマ3アプリの芸術的なセクシー女神もいる。
「彼女もお仕置き対象だけど、今戦っても拮抗してて、余波で地球が滅びるからやれないのよ」
「え?じゃあ男神達は弱いからお仕置きされてんの?弱いものイジメ?」
俺のツッコミに女神の目つきが怖くなり、俺は思わず「さーせん」と謝って目を逸らした。
「女神様?宿題ってなんの話ですか?また新しい指令ですか?」
巡が心配そうに聞くと、女神は首を横に振り、神の世界の姿は消えていた。
「私の宿題よ。赤城巡さん」
女神はそう言って、俺達をもう一度見た。
「元々は、あの男神が別の神と力を合わせ、赤城巡さんと高城験さんの願いが本当なのか、再び巡り会えたらずっと一緒にいる約束を守れるのか、確かめる為にあの6月29日から、この地球の時間を戻してしまった」
女神は宮城光と白城さんを見てから話を続ける。
「宮城光さん。白城蛍さん。あなた達は高城験さんとの相性が良かった事、他の人より人生経験が豊富な事で男神に選ばれてしまった」
「私は感謝してます!」
「私もです!」
宮城光と白城さんは2人で女神に言うが、女神は首を横に振る。
「神でも、不遜な態度を取っていない人間を弄んではダメなのよ」
それ、不遜な人間には弄ぶって言ってるよな。
怖っ。
俺がそんな事を思っていると、女神は3つの光る玉?ホログラムみたいなものを目の前に出した。
「これは地球。あなた達風にいえば並行世界。無数にある地球のなかの3つよ」
なんでそんなものをと思った時、女神は説明をした。
「これはカミサマアプリになっていない、先ほど正座させた女神が持っている地球。ここには宮城光さん。あなたと高城験さんがいる」
は?
意味不明なのは俺だけではなく宮城光も指差された地球を見て、「ここに験と私?」も声に出ている。
「この地球はカミサマ2アプリの女神の地球。ここに赤城巡さんと高城験さんがいる」
そして最後の地球には白城さんと俺がいると言われた。
・・・
全ては女神の自己満足だった。
男神をシメて、宮城光と白城さんにも可能性のある世界を提示して、カミサマ2アプリを授けて終わらせるはずが、俺はいずれ1人を選ぶ。
女神は濁したが、俺は巡を選ぶ。
それは揺るがない。
それが心苦しかった女神は、自己満足で3つの世界に俺達を用意してしまっていた。
「全員、何も知らない。高城験さんは来年の6月29日に死ぬ記憶を持ち、今と同じ高校一年の春を迎えて、小さな背中の違和感で病院を受診する。学校生活のスタートが遅れる。それをこの地球では赤城巡さんが助ける。こっちの地球では宮城光さんが補習で出会う。こっちは学校生活ではなくアルバイトで白城蛍さんに出会う」
俺の過ごしたあの一年を、それぞれの人物と過ごし、バレンタインデーに告白をしてもらい付き合っているのと言われた。
俺と巡が謝られたのは、その地球には俺と巡、高城一族と赤城一族が紛れただけだから、友達は誰もいない事。だが似た人間、同じ立ち位置の人はいる。
「高柳とか星野みたいな奴はいるの?」
「ええ、今と同じ暮らしは保証するわ」
女神の答えに、白城さんは一瞬首を傾げた後で顔を輝かせる。
「うわぁ。それでも付き合えたって、私と験くんはお似合いなんだね。違う世界なら、田所事件も起きてないもんね」
だが、違っていた。
女神は白城さんのいる地球を見て説明をした。
「田所覚ね。この地球にはいるわ。別に全ての歴史が違うとは限らないのよ。あなた達の通う高校名は、宮城光さんのいる地球では同じ東の都高校でも、他の地球では違う。でも過去からの紡がれる歴史。その中で白城蛍さんと高城験さんが結ばれる地球に田所覚はいたわ。それもあって、あなた達をこの地球に送ったのよ」
なんとまあ、あの田所がまた別の世界にもいるとは驚きだった。
「え?あんなのっているの?」
「うわ、ヤバ」
思わず声が出てしまう俺たちは色々聞きたくて女神に聞いてみた。
だが、それの答え合わせをしたくても、女神は答えてくれなかった。
田所覚の姿や、田所が付き合った彼女の名前、事件の全貌も教えてくれなかった。
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