真夏のアフロディーテ~秘め事は休日の戯れに~

七兎参ゆき

秘め事は休日の戯れに 1/9

 刺激的な晄に包まれ無限の彼方へ惹き込まれて征く。

 視界は真っ白になり晄の渦に呑み込まれて征く。

 薄っすらと映る朧げな影だけが動いている。

 あたしを手招くような何かにいざなわれて――



 眼も眩むような強烈な陽射しを浴びて、露出も顕わに焦げる様な錯覚に捉われる肌を、焦がれる想いを知ってか知らずか弄ぶ。

 あたしは手の平で太陽を遮り視界を確保すると、片手を口元に翳し敢えて少し焦れた様に大きな声で呼び掛ける。



「ねぇ、璃央っ。準備は出来たの?」


「おぉ。もう直ぐだ――良しっ! ホース持って来てくれないか?」


「はい。二人でこれを璃央に持って行ってくれるかな?」


「いいよぉ」


「やよゆちゃん リオにぃ もってけば いいにょね」


「そうよ。紫音に綾音、早く持って行けば早く遊べるわよぉ。行っけぇぇ!」



 あたしはホースをリールから引き出しながら、ジェットノズルの付いた先端を双子ちゃんに手渡し、煽る様に誘導して急がせる。

 継いだ水道の蛇口を全開にすると視る間に水圧でホースは膨れ上がり、それはまるで期待に胸を膨らませるあたしを物語ってるみたいだわ。


 今日はお店の定休日。

 これと云って予定の無い璃央を誘って、お店のウッドデッキテラスで子供用のプールを置いて水遊びをするの。

 同じ敷地で営業するバイク屋さんのオーナーでも在る璃央は、コンプレッサーの圧縮エアを使ってプールに空気を充填したり、水を張ったりする担当で謂わば雑用を任せている。


 事の顛末はこんな感じ。

 一昨日お家から車で一時間位のショッピングモールへ買い物の為に、璃央と久し振りに訪れた時の事。



『毎日暑いわねぇ。プールで泳ぎたいけど近くに在ったかしら?』


『田舎だから商業施設のプールは無いな。在るのは中学校だけで、小学校と共用で使ってるくらいだし』


『それだと部外者のあたしが、泳がせてってお願い出来る立場じゃないわね』


『だと思うよ。このモールの近くならフィットネスとかにプールも在るかも知れないぞ? 探してみるか?』


『折角で悪いけど今日は時間的に無理よぉ。それに水着も持って来てないし』


『水着ならモールのショップで買えば良く無いか? 何なら俺がプレゼントしても良いけど』


『えっち……あたしの水着姿が視たいだけでしょ?』


『まてまて。水着姿がえっちになるなら、海水浴場なんて猥褻物陳列場みたいなもんだろ? 片っ端から逮捕されるぞ』


『云うに事欠いて猥褻物なんちゃらって、どれだけ沸いてるのよっ!』


『酷でぇなぁ。俺は沸いてないって』


『素直にあたしの水着が視たいって云った方が良かったわよ。璃央がお願いするなら視せてあげなくもないんだから……』


『マジで? 良いの? いまから訂正しても良い?』


『クエスチョンマーク多過ぎ……お願いするなら――考えなくもないわよ?』


『じゃぁ改めて。弥生の水着姿が視たい。これで良いか?』


『璃央っ!? 声が大きいわよっ。周りの人達が何事かって視てるじゃないっ』


『悪い。ちょっとテンション上がった』


『ちょっと耳を貸して』


『ん? これで良いか?』


『一度しか云わないから良く聴いてね』


『うん……』


『い・や・よ。残念でした』


『なんだよぉ。期待して損した!』


『ふふふ。いい気味だわ』


『云ってろよ。まぁ良いや。それで他に寄りたい店って在るのか?』


『荷物持ちに飽きちゃった? あたしはこれと云ってな――ぁぁあっ在る!』


『無いのか在るのか、どっちだよ』


『在るのっ。水着。水着を買いに行きましょうよ!』


『おっ! 良いねぇ。さっきのはネタだったのか。騙さたよ』


『何を仰っているのかしら? そんなにあたしの水着が視たいの?』


『視たいな』


『スケベ!』


『待てって。えっちより酷くなってるぞ?』


『男はみんなスケベでしょ? 異論は認めないから』


『それで気が済むならそれで良いよ。で? どうする?』


『水着を買いに行くから付き合って。紫音と綾音のだけど』


『それが落ちかぁ。オーケー付き合うよ』




―――――――――――――――――――――――――――

 ご覧戴きましてありがとう御座います。

 この作品は拙作「十彩の音を聴いて」シリーズのスピンオフで、約一万六千文字の単話を分割して全九ページで掲載致します。

 どうぞ最終ページまでお読み下さいます様お願い申し上げます。


 文字数やスピンオフ作品と云う位置付け上、本編の様な詳細な個々のキャラクター描写は行って居りません。

 ご興味をお持ち戴けましたなら「十彩の音を聴いて」本編も是非ご愛読下さい。

 出来るだけ沢山の読者様のお眼に触れて貰えます様、作品フォローや評価を戴けると望外の慶びですので宜しくお願い致します。

 コメントやご感想等をお気軽にお寄せ下さいますと嬉しいです!

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