あの子を好きな君に恋をしてしまった。
@himenoaki
第1話 最終話と第1話
………………………………………………
☆ 2019年 秋 (南波あき 高3)
――河川敷――――
「好きだったなぁ」
「まだ好き でしょ?」
「だね あなたもでしょ」
「そうだね」
あの日々を思い出しているのだろうか。
隣に座る女の子のくちがゆっくりと動く。
「忘れたくないなぁ」
「忘れるなんてできないよ」
「ごめん」
「それはずるいかな」
「ごめん」
「大丈夫、僕も悪人さ」
「一緒だね」
「一緒だよ」
――教室――――
「大丈夫 がんばったよ」
「うん。頑張ったもん」
「みんな、頑張ったんだよ……」
女の子の背中をさする。
「苦しいね」
「苦しい、痛い、しんどいよ。 でも楽しかった……」
女の子の大きな泣き声だけが世界に響くただ一つの音にさえ聞こえた。
――体育館――――
「いいの? 引き止めたらあなたのものになったかもしれないのに」
「大丈夫ですよ」
きれいな髪を揺らしながらその女の子は笑顔で振り向く。
笑顔で、そして泣きながら。
「強いね」
「女の子はつらいときほど笑うんですよ?」
――屋上――――
いつもなら響き渡っている部活生の声も今日だけは聞こえない。
この世界に取り残されたような気さえする。
私と君の二人。
ガチャ
屋上の扉が開く音がする。
「はぁ……はぁ……」
息切れをした君は大きな深呼吸をして私を見つめた。
「おまたせ」
………………………………………………
☆ 2018年 4月 (南波あき 高2)
8時35分
「初日から全力疾走かよ」
俺、南波あきは高2初日から寝坊した。
5分と言って30分二度寝した自分を恨みながら駐輪場を全速力で駆け抜ける。
体育教師が後何分と言っているがそんなもの聞く余裕はない。
8時37分
ちらっと時計を確認しながら上履きに履き替える。
さすがに今いる生徒は高2高3だけっぽい。まあ高1の初日からはさすがに遅れないか。
一段飛ばしで3階まで上がり家出るときに確認した自分のクラスに入る。
8時39分30秒
「間に合ったぁぁぁ」
俺は朝の全力疾走から解放されたよろこびで倒れこむ。
「いや、ぎりぎりすぎ」
倒れこむ俺に呆れながらつっこんできたやつは俺の親友、三木良太。
「また寝坊したんでしょ。聞かなくてもしってる」
冷静で落ち着いた声でやはり呆れているのはいつめんの、水瀬紗耶香。
「あきおっはよー!!」
「あきくんおはよ」
元気な声の持ち主は清水唯、俺をあきくんと呼んだのは寺下太一。
おれはおはよと返しながら黒板前に貼ってある座席表を見て座る。
キーンコーンカーンコーン
時計的には8時41分だが8時40分になるはずの朝礼のチャイムが鳴った。
この時計1分早いな?
くっそ、階段歩けたやん……。
「今歩けたと思ったでしょ?」
「となり紗耶香かよ」
「かよ、って失礼」
「俺の地元でのうれしさ表現」
「地元同じなんですけど初耳」
「あ、やべ」
「ほんとに……あきは……」
うん、高2になっても紗耶香とはいつも通りかな。
良太、紗耶香、唯、太一
いつメンとはクラスが離れなくて一応安心。
まあ、うちの学校成績順だから唯以外同じクラスなの大体わかってたけど唯が残れてよかった。
ガラガラ
新しい担任が教室の扉を開けて入ってきた。
「それでじゃ1年てきとーによろ」
随分適当な担任の挨拶とともに一生忘れられない高校2年目が幕を開けた。
――――――――――――
「先輩、やっと追いつけました……。どこにいるんですか、先輩」
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