引き出しの霊

天川裕司

引き出しの霊

タイトル:引き出しの霊


僕の部屋には勉強デスクがある。

でも勉強はしない。

毎日ゲームばかりで、机に向かうことがほとんどなかった。

だからそのデスクの引き出しにも何にも入れてない。

そんなある日、奇妙なことが起き始めたのだ。


「ん?また動いてる…?」


その引き出しが折りに触れて、カタカタ動き出すのだ。

上下左右に細かく揺れて、なんだか開きそうなイメージ。

でもそれ以上何かしてくるわけでもなかったから

とりあえず放っておき、僕は自分の生活に邁進していた。


そして1人でゲームしていた時。

「あたっ!」

ちょうど背後に机が来るような角度で、

後頭部をヤツに見せていた時、

その後頭部めがけて引き出し(ヤツ)が飛んできたのだ。


「痛っツ〜〜、ンだよお前」


引き出しは引き抜かれた形になって床に落ちても、

ずっとガタガタガタガタ動いてた。

何がそんなに不満なのか?

ガタガタ震えなきゃならないのか?


そんなことを考えていたとき、

もしかして…と思い、思ったことをある日から実行してやった。


引き出しを机の中に戻し、その思ったことを

実行するとヤツは何も言わなくなった。


動かず、シーンとしながら他の家具同様、

家具らしいフォルムに落ち着いている。

ちょっと気取ってるようにも見えたが…

なんて少しかわいい様子にも見え始め、

その状態をキープしてやろうと思った。


引き出しの中に、いっぱい物を入れてやったのだ。

「使ってなかったからすねていた」

そう思った俺は、使ってやることで

こいつの存在価値が再び浮上し、

他の家具同様、家具として肩身の狭い思いをさせずに済む…

そう思ったら案の定だったのだ。


そしていつしか、そいつの表面には

文字が浮き出るようになった。

まぁ浮き出ると言ってもすぐに消える文字だが、

最初に出たのは、

「栄えてる」という言葉。

引き出し(こいつ)は今、栄えてるらしい。


次に出た言葉は、

「物と物とが遊んでる」


どうやらたくさん物を入れてやったので、

物と物とがこすれあったりぶつかりあったりし

それがまるで遊んでるように見えたようで、

その様子を見ているとこちらも和んでくる…

というような事を言ってたみたいだ。

こいつは今、栄えて和んでるんだ。


これからも家の中の物で、

使える物はどんどん使っていこうと思った。


またコイツみたいにすねて膨れて、

とばっちりを受ける形で

八つ当たりでもされちゃかなわんから。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=k9Rtin4OSJs

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引き出しの霊 天川裕司 @tenkawayuji

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