page.13 白崎渚②
昔の僕は言っちゃえばクソガキだった。
不良とまではいかないまでも問題児と呼ばれるくらい荒れていた。
学校の先生すら手が付けられないほどには不良らしきことをやっていた。
というのも僕は周りの人よりも早い段階で小学校3年生の時には反抗期を迎えていた。
生意気な連中を一人でボコボコにしては勝手後ろに付いてこられるくらいには強かった。
でも、小6の頃に自分は弱いことに気づいた。その理由になったのが怜だった。
「なんで勝てないんだよ……っ!」
「雑魚を殴りまくってたお前が俺に勝てるわけないだろ」
「はぁ? じゃあお前は雑魚よりも強いやつ戦ってたからってことか?」
「んなわけねえだろ。てか喧嘩とかくそダサいしやるだけ無駄」
その時の僕はひどくイラついていたのを覚えている。
先に喧嘩を売ってきた同級生を逆に教室のど真ん中でたこ殴りにしたら担任の先生に事情を聴かれる前に説教を食らいそのまま学校を飛び出そうとしたときに怜に出会った。
エナジードリンクを片手に四時限目から投稿してくるとか僕よりも不良なのではないかと思うくらいに印象は強かった。
けどその時の僕にはどうでもよかった。素知らぬ顔で歩いてきて、まるで僕を空気としか認知していないかのように肩がぶつかっても無視して歩いていくこいつに僕はさらに怒りが込み上げてきた。
「おいお前」
「……誰?」
振り返った怜はあたかも僕が今、目の前にいきなり姿を現した程度の態度。
さらにムカついた。
「肩当てておいて無視とかしてんじゃねえよ」
「あーわりぃエナドリ飲んでて気づいてなかった」
「は? お前、目玉付いてんのか?」
「いや付いてなきゃ前見て歩けないしエナドリ口まで持ってけんだろ」
「正論かよキモ」
「よく言われるな正論キモイって」
話しながらエナドリを飲み干す舐め腐ったこいつに一泡吹かせたいと思った僕は拳を軽く握って、怜が油断してる隙をつこうとした。
のだが――
「……え?」
気づいた時には僕は空を見上げていて、少し遅れてからカランカランと空き缶のような物が落ちる音がした。
「大丈夫か? 少し吹っ飛ばし過ぎたな」
吹っ飛ばした?
この僕が?
どうやって?
彼の言っている意味がわからなかった。
ただ、一つ言えるのは彼が言い表せないような雰囲気をしていること。
僕には絶対に敵わない人だということも、そのたたずまいを見ただけで判断できた。
「お前、いや、君名前は?」
「夜狼怜。六年三組」
「普通学年言ってから名前言うしない?」
「そうか? よく分かんねえ」
「まぁいいや。僕は六年二組白崎渚。その、喧嘩みたいなことした後で悪いんだけど、友達になってくれないかな?」
「いいよ。俺もお前のこと気に入った」
「ありがとう」
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「――って感じかな。怜との馴れ初めは」
「そうなんだ……白崎君が不良ってあんまイメージないんだけど」
「だろうね。今ではさわやか王子みたいな感じだし、成績もそれなりに上位だし」
「それなりにって、学年二位じゃん」
「そんなだけどさ。今は優秀生徒として生活してるけど、たまに昔みたいに口悪くなる時だってあるよ? 怜の前とかで愚痴言うときはね」
「名残あるんだ」
「なかなか抜けなくてね。その反面怜は昔から変わってないよ。大人びてて、周りからは変わってるとも言われるけど、僕はそうは思わない」
「なんかわかる気がする」
一足先に教室に戻った怜は自分の机でスマホをいじっているが、その姿はもはや高校生徒は思えないほどに大人びている。周りが怜を変わっていると思うのは、周りの在り方が年相応だからだろう。
「怜は今のままでいてほしいわけですよ、親友としてはね」
「そうだね。ボクも今の夜狼くんでいてくれたら助かる」
二人で苦笑してから教室に入り、怜の愚痴をたくさん聞くことにした。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【あとがき】
すみません過去回を入れました。
五分かけて語ったと全開書きましたが、五分でどれだけ話せるのかわからん状態だったので、怜と渚の馴れ初めを書いてみました。
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