展開 01
昼時からは少しずれた昼下がりの時間の店内は空席もある。店内の他の客は栞理嬢の微かな奇行には気が付かずに談笑している。
「中学校の頃からずっと、では、つい癖になっていたのかもしれませんね」
「ええ、そうなんです」
栞理嬢は康平の言葉にほっとしたように笑顔を見せた。
「梨緒はずっとあんな感じで、高校の時も、大学の時も、手伝ってきました」
「岡部さんには堀さんの他に仲の良い方は?」
「いるわけありません、誰かの秘密を嗅ぎつけては脅かして、梨緒は楽しんでるみたいでした」
「竹内さんはそれについて知っていた?」
「竹内は……」
栞理嬢は言葉を切り、考え込んでしまった。
「ところで、
栞理嬢の顔から笑顔が消えた。
「いえ、知りません。ごめんなさい、もう、行かないと。失礼しますっ」
栞理嬢はコーヒーカップをひっくり返しそうな勢いで立ち上がると、喫茶店を出て行った。事故死した中学生と同時期だったはずだ。知らないはずがないと思うが、なにかあったんだろうか?
疑問には思ったが、康平も追いかけてまで聞くことはないと思ったのか、俺を連れて喫茶店を出た。リュックごと、自転車の籠に乗せられる。それにしても、都心というのは自動車が多い。康平と一緒にもっと自然豊かでのんびりしたところで生活したいものだ。
天王洲アイル付近の歩行者用の橋まで来たところだった。康平のスマホが着信を知らせた。康平が自転車を橋の手前で停め、端に寄る。
「はい、小林です」
――小林さん、MISの山本です。お世話になっております。
竹内氏はまだ帰国していないのだろうか。まぁ個人的な雑用も山本氏が請け負っているのかもしれない。
――それでですね、栞理さんがもう心配いらないから、と強く言っておられまして、竹内もそれならもう大丈夫だろう、ということなので、お支払いとしてお約束の金額を振込致しましたので、ご確認いただきたい、と。
「そうですか、わかりました。確認しておきます」
ようやく新宿に戻ってきた。バーの脇に自転車を停めて、康平が俺をリュックごと抱えた。
以前にペットショップ「ファーフレンズ」前で出会った高橋
「小林さん、あの、高橋 七星です。ペットショップの件でお話があってきました」
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